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最速争い、次は世界 桐生選手「記録もっと伸ばせる」目標は平均9秒台、東京五輪の決勝まで全力疾走

2018/1/11

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「0秒01ずつでも更新すれば、それが日本新記録になっていく」と語る桐生選手
「0秒01ずつでも更新すれば、それが日本新記録になっていく」と語る桐生選手

陸上男子100メートルで日本人に立ちはだかってきた「10秒の壁」を破ったのは2017年秋の日本学生対校選手権。19年ぶりに日本記録を更新する9秒98を出した桐生祥秀(22、東洋大)は、最初に9秒台を出すことにこだわってきた。「今後、歴史を振り返っても名前が残る。どうしても1番に出したかった。何段階も成長できたシーズンだった」

18年春に東洋大を卒業した後は、日本生命と所属契約を結び、プロとして一歩を踏み出す

持ち味はピッチの速さ。「僕は足首が硬いから(足裏全体で)一気に(地面を)蹴りたい」。軽くてソールがフラット気味のスパイクが足元から走りを支えてきた。スタート直後の1歩目は必ず地面を擦って飛び出すから、1週間でダメにしてしまうことも珍しくないという。

10秒01で駆け抜けた高校3年から、期待を背負ってきた。日本の陸上界を盛り上げてきたという自負が、厳しい練習へと駆り立てた。「調子に乗っているわけではないが、10秒01を出してから陸上界への注目度が変わったと思う。注目だけさせて消えるわけにはいかなかった」。記録への挑戦は重圧との戦いでもあったが、ケガも不調も乗り越えてきたのは日本の第一人者としての意地だろう。9秒台を出し、真っ先に世界で戦うスタートラインに立った。

未到の領域に足を踏み入れた今、東京五輪をどこまで現実的なものとして捉えているか。「1年ずつという思いはあるが、一瞬でやってくると思う。五輪は格別だし、東京ならなおさら。そこで結果を残したい」。昨夏の世界選手権400メートルリレーで銅メダルを獲得しても、反響の大きさでは2016年のリオデジャネイロ五輪での銀メダルと比較にもならなかった。五輪の影響力の大きさが身にしみた。

22歳、伸びしろもまだ十分だ。「0秒01ずつでも更新すれば、それが日本新記録になっていく。楽しんで走って刻んでいけば9秒8台という次元にもいけるかも」。高速ピッチを生かしつつ一歩のストライドを伸ばしていくという方向性は「間違っていない」と語る。

18年春に大学を卒業。日本生命と所属契約を結び、プロとして一歩を踏み出す。東洋大を拠点とし、練習環境は変えない。今季の青写真は、17年4位だった日本選手権を制し、アジア大会(ジャカルタ)に日本王者として出ること。そして平均タイムを9秒台に引き上げること。「少しの甘えで代表落ちするくらいレベルが上がっている。アベレージで9秒台を出す強さを身につけたい」

すべては東京五輪での決勝進出に通じると信じている。「ファイナリストになれば、何が起こるか分からないですから」。世界最速の争いに桐生がいる――。そんな姿を夢想できるだけのステージに入ってきた。=敬称略

(渡辺岳史)

[日本経済新聞朝刊2018年1月11日付を再構成]

桐生祥秀選手のシューズはアシックスが開発・製造しています。こちら(「9秒台支える『桐生シューズ』 皮膚のような軽さ実現」)もご覧ください。