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『黒蜥蜴』で挑む名探偵・明智小五郎役(井上芳雄)

第13回

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NIKKEI STYLE

井上芳雄です。今年もよろしくお願いします。1月9日から『黒蜥蜴』(くろとかげ)という舞台に立ちます。江戸川乱歩の探偵小説を三島由紀夫が戯曲化した作品で、女盗賊の黒蜥蜴と名探偵の明智小五郎が繰り広げる耽美(たんび)と闇の世界を描いています。黒蜥蜴を中谷美紀さんが演じ、明智を僕が演じます。演出は英国人のデヴィッド・ルヴォーで、以前『ルドルフ ザ・ラスト・キス』で一緒に仕事をして大きな感銘を受けました。今回もたくさんの刺激を受けています。

ルヴォーが言うには、『黒蜥蜴』は完璧な美を求める話です。ただ、そんなものはない。なかったときに人間がどうするか、どうなるかという話だと言います。僕がこれまであまりやったことがないタイプの世界観の作品なので、すごく興味深いです。

僕が演じる明智は、ぱっと見は一番まともですけど、中身は犯罪に取りつかれたオタクみたいな人間。盗賊の黒蜥蜴のように犯罪をする方に傾いているか、探偵の明智のように犯罪を解き明かす方に傾いているか。それだけの違いなので、2人は強く引かれ合うし、でも決して結ばれることはない。ルヴォーは「ブラック『ロミオ&ジュリエット』だ」と言います。そういう特異な愛の話でもあります。

あまりにも純粋だったり、あまりにも優しい心を持っていると、人は犯罪に走る、という明智のセリフがあります。一般的には、何か悪いたくらみがあったり、ゆがんだりしているから犯罪をすると思いがちです。ところが三島さんはそう考えずに、一番優しい心の持ち主が一番犯罪者の資格を持っている、と書いてるんですね。その考え方は、今まで僕の中になかったものだから新鮮でしたし、役を演じながらそれを掘り下げているところです。

ルヴォーは三島さんや彼の作品が大好きで、『黒蜥蜴』もずっと演出をしたかったそうです。独特の美意識を持っていて、三島さんに相通じるものがあるのでしょう。特異な形の美ですが、だからこそ人を引きつけてやまないものがあります。

ルヴォーの演出ですてきなのは、演劇の魅力をよく知っていて、セットにしてもそのまま描かないことです。例えば、ホテルの部屋が2つあると書いてあれば、普通なら2つの部屋のセットが出てくると思うのですが、そうはしない。真ん中に扉だけがあって、床が回ることでこっちの部屋になったり、あっちの部屋になったりします。そうやって、お客さんの想像力をかき立てることで、情景を描くのがとても上手です。

忘れられない言葉をくれる演出家

役者からすると、忘れられない言葉をくれる演出家でもあります。舞台の上の役者がみんな正面を見て、夕日を見ながら「ああ、いいピアノの音だね」と言う場面を稽古していたときのことです。全員の視線をあわさないといけないので、「どのくらいの角度で見たらいいですか」という質問がありました。普通の演出家なら、「あのライトのところ」とか「45度」とか言うと思います。ところが、ルヴォーは「太陽の沈む方を見てくれ」と言いました。そう言われると、役者は「ああ、自分は沈む太陽を見てるんだ」と思って、演じるたびに、その言葉を思い出します。そういう演出がルヴォーのすごいところだし、そこに役者はみんなほれてしまうんです。

ルヴォーはいつも、すごく情熱を持って生きている人を描きたいと思っているようです。彼は、よくこんなふうに言います。「舞台に出てきて、相手に向かって何かをしゃべるのは、相手を変えようとか、影響を及ぼそうと思っているから。何の理由もなくしゃべる人はいないし、何の理由もなくそこに来る人もいない。だから、舞台に出てくる以上は、絶対に理由がある。それを表現するんだ。それにはエネルギーが必要だ」

そう言われて、芝居をしていると、たしかに自分がどんどん情熱的になって、テンションが上がっていきます。生きている、という実感が湧いてきます。

今回演じる明智も、そういう情熱に動かされて生きる人間です。それをどこまで表現できるか、僕にとっても新たな挑戦です。

井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP社)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第14回は1月20日(土)の予定です。

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