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「選手村」マンションは陸の孤島? バス運行に黄信号 豊洲市場の移転遅れで、地下トンネルの開通間に合わず

2018/1/29 日本経済新聞 朝刊

晴海の五輪選手村は大会後に5600戸の巨大マンション群に生まれ変わる(画像はイメージ)

築地市場の豊洲市場への移転が迷走した代償が東京の臨海部の街づくりに現れている。五輪準備には間に合ったものの、築地を通る幹線道路の計画を変更したため、臨海部を結ぶバス高速輸送システム(BRT)の本格運行はメドが立たない。臨海部の五輪選手村は大会後、マンションにして1万人規模の街にする計画だが、都心への足は心もとない状況だ。

「BRTがなければ選手村は『陸の孤島』。マンションが売れない」。臨海部の晴海地区で五輪選手村のマンション開発に参画する大手不動産会社の幹部はこう不安を募らせる。

五輪で各国代表が宿泊する選手村は大会後、一般向けのマンションに改修する。東京ドームほぼ4個分に相当する18ヘクタールの敷地に24棟、計5600戸のマンションが建つ巨大プロジェクトだ。

開発は三井不動産レジデンシャルや三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産など大手11社が分担する。1万人超が新たな住民となり、晴海地区の人口は今の1万2千人から10年後には2万9千人を見込む。

課題は交通の便だ。選手村から最寄りの都営地下鉄大江戸線・勝どき駅まで徒歩25分かかる。駅に着いても最近のマンション林立でラッシュ時は駅ホームや地下鉄入り口に長蛇の列が待つ。1日平均の乗降者数は2016年度に10万人と10年間で4割増えた。

東京都は当初、五輪までに築地市場の跡地に幹線道路の環状2号を通し、虎ノ門から新橋、築地、晴海を通って豊洲を結ぶ片側2~3車線の大動脈をつくる計画だった。虎ノ門―築地間は地下のトンネルにして混雑を緩和する構想だ。

ここにBRTを走らせる。BRTはバスと路面電車を組み合わせたような新型の交通システムで、都が計画するのは専用レーンは設けないものの、複数の車両を連結するなどして通常のバスより大量に輸送できるようにするのが特徴だ。

BRTなら晴海からトンネルを通って新橋駅まで約10分。信号の少ないトンネル中心のルートのため定時運行しやすい。通勤時は3分間隔で走らせ、1時間に2000人、将来は同5000人を運べるという。選手村のマンション開発はこのBRTとセットで計画していた。

しかし豊洲移転の遅れでトンネル開通は五輪までに間に合わなくなった。五輪時にできているのは片側1車線の地上部道路だけになる。地上の道路は信号が多いため「時間通りに着くのが売り物のBRTはまともに運行できない」(都幹部)という。

五輪後も地下トンネルの完成時期は不透明だ。「五輪期間中とその前後は工事を休止せざるを得ないかもしれない」と都の担当者は話す。マンション5600戸のうち、分譲は4000戸超。不動産各社は大規模分譲の販売時期を分散させるため、五輪前から分譲を始めたい考えだ。しかしマンションが引き渡される22年秋ごろまでにBRTが本格運行できるかは見通せない。

1980年代以降、都は臨海部をオフィス主体の副都心として開発しようとした。だが開発の起爆剤とした世界都市博覧会の中止もあって副都心構想は頓挫。その後、タワーマンションの建設が相次ぎ、臨海部の位置づけはオフィス街から都心回帰の流れに乗った居住地域に様変わりした。

急激なマンション開発で臨海部の交通網はパンク状態にある。将来、東京駅付近から地下鉄を新設する構想はあるが、五輪に合わせてすぐできる対策として計画したのがBRTだった。そのBRTもメドが立たなければ、居住地域としての開発にもブレーキがかかりかねない。

ロンドンは12年、64年ぶりに開催した五輪を契機に荒廃していた東部地区の再開発に成功した。16年五輪のリオデジャネイロは選手村マンションが売れ残り、施設は負の遺産となっている。

56年ぶりの五輪で臨海部再生をめざす東京の五輪後の姿はロンドンか、リオか。その行方に豊洲移転の遅れが影を落としている。

(安部大至)

[日本経済新聞朝刊2018年1月5日付]

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