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年男年女、年動物… 落語家は思い巡らす

立川吉笑

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NIKKEI STYLE

明けましておめでとうございます。

これまで毎週日曜に更新してきた談笑一門でのまくら投げ企画ですが、師匠と私一番弟子の吉笑とが交互に隔週更新していくことになりました。今年もどうぞよろしくお願い致します!

待ち遠しい2年後

ようやく2018年になり7日がたったところではあるけど、相変わらず僕は20年が待ち遠しくて仕方がない。オリンピックが楽しみなこともさることながら、それよりも僕は年男になるのが楽しみすぎて仕方ないのだ。

20年、1984年生まれの僕は12年ぶり3回目の年男となる。

年男は良いものだ。

なぜなら年男は迷惑メールが送られてくることはないし、ゆで卵の殻がきれいにむける。味方からパスが良く回ってくるし、深爪にならない。汗をかかなくなるし、身長が2ミリ伸びる。猫がなつくし、土踏まずで土を踏めるようになる、と母親が言っていた。

街で「俺は年男だぞ」「私は年女なのよ」と堂々と歩いている「年人間」の皆さんを見かけるたびに「いいなぁ。僕も年男になりたいなぁ」と羨み、また年男だった去りし日の己(おのれ)を思い出し、少しセンチメンタルになったりする。

そんな素晴らしい年男になれるのが12年に1回だけというのもグッとくる。「神様、わかってるなぁ!」と思う。なんとか2年連続で年男になれないものかと努力をしたこともあったけど、やはりダメだった。年男は12年に1回しかなれないからこそ尊いのだ。毎年、年男になった自分を想像したら、年男のありがたみを感じられなくなってしまうだろう。

かの松尾芭蕉は『おくのほそ道』の序文に『月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也』と記した。これは「月日というのは永遠に旅を続ける旅人のようなものであり、来ては去り、去っては来る年もまた同じように旅人である」というような意味であるが、それならば、『年男は百代の過客にして、行かふ年男も又旅人也』ともいえるのではないか。

つまり年男というのは永遠に旅を続ける旅人のようなものであり、来ては去り、去っては来る年男もまた同じように旅人なのだ。(松尾芭蕉は年男ではなかった1689年に江戸をたち、年男ではなかった1691年に江戸に戻ったそうだ。)

印象年齢に肌年齢

僕にとって年男年(としおとこイヤー)である20年を楽しみにしながら、昨年末、地元に帰省した。珍しく年末年始に休みが取れたのだ。

大みそかは兄が住んでいる家へ遊びに行った。3つ上の兄は1981年生まれ。つまり17年、兄は年男だった。

身内に年男がいる誇らしさと、なぜ自分でなく兄が年男なんだという悔しさとが入り交じった複雑な気持ちで兄の家へうかがうと、義理の姉である加奈子さんが出迎えてくれた。

 加奈子さんは兄の3つ年下なので、すなわち僕とは同い年だ。同い年だということや、加奈子さんがとても明るい人柄なこともあって、僕たちは普段から友達同士のように気軽にメールを送りあうなどしている。それこそ「早く年人間になりたいですね」「あと数年の辛抱よ」といった具合で、20年に思いをはせることもある。

そんな加奈子さんは普段から少し大人っぽい格好をされていることが多く、実年齢よりも少し上に見られることが多い。この日もシックな色合いのブラウスに椿(つばき)をモチーフにした小さなブローチをつけておられる姿は品がよく、パーカー姿の僕とはどう見ても同い年には見えず、3歳くらい年上に見えた。だから加奈子さんは年女っぽい女性に見えた。

年人間っぽく見える同い年の「非年人間」を羨ましく感じながらリビングに案内してもらった。テーブルの隅に大きな段ボール箱があったから何なのか聞くと、冬のボーナスで奮発して買った美顔器だという。

加奈子さんいわく「30過ぎたら一気にくるわよ」と会社の先輩に脅されてつい買っちゃったとのこと。大きな機械の中に専用の化粧水を溶かした水を入れてスイッチを入れるとたちまち水蒸気が立ち込めて、それを顔に染み込ませると有効成分が肌の奥に浸透してきめ細かい肌になるらしい。その成果があってか、確かに以前あったときよりも肌ツヤがいいなぁと感じたのは事実だ。

「吉笑さんも表に出る仕事なんだから肌の手入れはした方がいいわよ」といたずらっぽく言われ、流れで僕も美顔器を使うことになった。スイッチを入れて準備している間に付属の器具で肌年齢を測ったら「49歳」と出て、捨ててやろうかと思った。

それを見てゲラゲラ笑う加奈子さんの隙をついて加奈子さんのほっぺに器具を当てると「24歳」と表示されて余計に腹が立った。肌年齢が若いこともさることながら、肌年齢が年女であることの方がダメージが大きかった。

実年齢が年男の兄と、肌年齢が年女の兄嫁に挟まれて、僕だけ年人間じゃないのだ。

こうなったら美顔器で肌年齢を若くしてやると夢中で水蒸気に顔を突っ込んだ。15分ほどして計測すると「47歳」と表示された。若くなったのはうれしかったけど、1歳じゃなく2歳若返ってしまったせいで年男にはなれなかった。

それを見てまたゲラゲラ笑い、からかってくる加奈子さんは大人っぽい見た目とは反対に女子中学生のようだった。「精神年齢、12歳くらいだなぁ」とふと思って数秒後、それがまたしても年女であることに気がついて悔しくなった。

実年齢が同い年で、非年人間の加奈子さんは見た目が年女っぽいことに加えて、肌年齢も精神年齢も年女なのだった。

となると、これはもう年女と言っても過言ではないじゃないか。

そのとき一瞬で誰もが…

いじけた僕は庭に行って、久しぶりに会う柴犬のマルと遊ぶことにした。

1年ぶりに会うのにマルは僕を覚えてくれていたみたいで尻尾を振りながら近寄ってきてくれた。

「マル、お前だけだよ味方は」

と言いながら頭をなでていると、兄が「マルももう2歳だよ。早いだろ?」と言った。確かにもう2歳か、早いなぁと思った数秒後、ちょっと嫌な予感がした。

マルを引き離して携帯で「犬 年齢 人間」と調べると、犬の2歳は人間でいう24歳だと表示された。マルも人間年齢だと「年動物」だったのだ。

年男に事実上の年女、そして年動物。年生物たちに囲まれて、僕は自分だけが年人間でない事実にがくぜんとした。そして早く時計が回り年が変われと願った。年が変ったそのとき、一瞬でここにいる誰もが同じ「非年生物」になるのだから。

立川吉笑
 本名、人羅真樹(ひとら・まさき)。1984年6月27日生まれ、京都市出身。180cm76kg。京都教育大学教育学部数学科教育専攻中退。2010年11月、立川談笑に入門。12年04月、二ツ目に昇進。出囃子(でばやし)は東京節(パイのパイのパイ)。立川談笑一門会やユーロライブ(東京・渋谷)での落語会のほか、『デザインあ』(NHKEテレ)のコーナー「たぬき師匠」でレギュラーを務めたり、水道橋博士のメルマ旬報で「立川吉笑の『現在落語論』」を連載したり、多彩な才能を発揮する。

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