首都圏は慶応義塾大学医学部など私立大の医学部は関西などと比べて圧倒的に多い。順天堂大学医学部などが学費を大幅に下げて話題になったが、コスト負担は国公立大学医学部と比べものにならないほど大きい。

東大・京大医学部への進学でトップの灘高校

ラ・サール高校(鹿児島県)や久留米大学付設高校(福岡県)、愛光高校(愛媛県)など九州や中四国の有名進学校も、東大よりも医学部志向だ。愛光の17年の合格者は東大が23人だが、国公立大学医学部医学科は61人。中村道郎校長は「東大への進学実績を増やしたいが、生徒の4割が医学部志望」という。

医学部志向は「西高東低」だったが、開成や筑波大学付属駒場高校、桜蔭高校など首都圏の進学校でも年々強まっている。そこに新たな潮流が押し寄せている。

開成校長は元ハーバードの人気教授

開成では17年、海外大学に22人が合格し、7人が進学する予定だ。ハーバード大学やプリンストン大学、シカゴ大学など世界大学ランキングで東大を上回る名門大がズラリと並ぶ。この流れは、11年に柳沢校長が着任して生まれた。柳沢校長はハーバード大学の公衆衛生大学院で教授などを歴任した化学者。開成から東大に進学、化学工学を専攻した後、ハーバード大大学院でフルタイムで10年間を過ごし、ベストティーチャーにも度々選ばれている。

「東大一直線」から医学部、そして海外大志向が強まる開成高校

「東大よりハーバードに、と生徒から相談を持ちかけられたのがきっかけでしょうか。我々は東大がいいとか、海外の大学の方がいいとかとはね決して言いません。進学先を決めるのはあくまで生徒です。ただ、先輩がハーバードに行ってよかったとなると、後輩が2人、3人と続くようになる」と柳沢校長は話す。

開成出身で東大法学部4年の学生は「本当は米国の大学に進みたかった。東大を卒業して官僚や法曹界に入っても昔のようなうまみはない。ただ、僕の場合、英語力が足りなかったし、家計も許さなかった」という。「東大一直線」の代表銘柄ともされる開成でも、生徒の志向は明らかに変わってきている。

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海外大の学費は東大の10倍