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オトナのスキルアップ入門

英語よりも役に立つ 「決算」を読めるようになるべし

日経ウーマンオンライン

2018/1/10

決算が読めると、できるようになることは大きく分けて6つあります (PIXTA)
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 決算と聞いて、「自分には関係ない」と思っては、もったいない! 決算を読めるようになることは、実はキャリアアップにも役立つ、一生もののビジネススキルなんです。「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」の著者であるシバタナオキさんに、決算を読むメリットを教えてもらいました。

■過去を理解して、近い未来を読み解こう

 「決算」には難しいというイメージがあり、財務や会計の仕事をしている人以外には、なじみがないものかもしれません。しかし仕事に対して意欲のある女性には、「決算を読む」ことのメリットを知ってほしいと思っています。なぜなら決算を読むことは、業種や職種を問わず、あらゆるビジネスパーソンのキャリアアップに役立つ習慣であり、貴重なビジネススキルになるからです。

 そもそも決算は、「会社版の家計簿」と言い換えることができます。普段の生活に当てはめて考えてみると、自分にはいくら収入があり、どういうお金の使い方をしているのか。貯蓄額がいくらで、去年と比べてどれくらい増えているのか。これらを家計簿でチェックしている人は多いと思います。同じように、企業の経営状態を知りたいと思ったときに読むのが、会社版の家計簿である「決算」です。

 誤解のないように言っておくと、決算を読んでも、会社の将来を「確実に」知ることはできません。家計簿に未来の情報が書かれていないのと同じで、決算にも、未来のことは記されていないからです。決算に書かれているのは、あくまでも「過去」の数字。しかし「過去」を正確に理解することで、遠い将来ではなく、近い未来のことを読み取れるようになるのです。

 例えば、自分の人事評価が過去5年間ずっと「A」だったとしたら、「来年リストラされることはないだろう」と予測することは可能ですよね。これと同じで、自分の勤める会社が、去年も今年も利益を出し続けていたら、「来年倒産することはないだろう」と予測することができます。このように、「過去」の情報を読み続けることで、経営や各事業の行く末を、自分なりに解釈できるようになるのです。

 ではどのようにして、決算を読む習慣をキャリアアップに役立てればいいのか。具体例を見ていきましょう。

■決算が読めるとできるようになることは、コレ!

1.会社の成長率が分かり、転職の参考になる

 あなたが今、転職を考えているとするなら、転職を希望する会社の売り上げや営業利益をチェックしてみましょう。前年の数字と比べたり、競合他社の数字と比較したりすることで、その会社の成長率が見えてきます。対前年の成長率が二桁以上になっている会社と、業績は安定しているけれど一桁成長の会社とでは、社内の雰囲気や労働環境も大きく異なります。決算からそれらを読み取れるようになれば、入社後のミスマッチをできる限り少なくすることができるでしょう。

2.自分の会社だけでなく、家族や恋人の会社の経営状態もチェックできる

 家族や恋人が勤めている会社の経営状態が気になるなら、具体的な数字を見て、自分なりに読み解いてみましょう。もし、会社が毎年ある程度の利益を出し続けていたら、今すぐに倒産する可能性は低いと考えられます。心配だけど直接は聞きづらい場合など、こっそりと決算を読んでみるという手もありますよ。

3.クライアントの伸び悩んでいる分野などが分かり、具体的な提案ができるようになる

 あなたが営業や企画職など、クライアントに何かしらの提案をする仕事に就いているなら、提案先の決算を読み込み、好調な事業とそうでない事業の違いを分析してみましょう。また同業他社の決算とも比較をして、「○○社に比べてこの数字が芳しくないようですので、こういう戦略で数値を改善しましょう」と具体的な提案をすれば、プレゼンやコンペでの説得力が増すはずです。

4.あなたが若手社員でも、「数字」と共に提案すれば、聞き入れてもらいやすくなる

 上で紹介したやり方は、勤め先の上司や経営層に企画を提案するときにも使えます。若手のうちは、社内で自分の提案が通りづらいと感じることがあると思います。そんなときは、提案の根拠となる数字を、決算から拾ってみましょう。キャリアや実績の浅い社員でも、数字と一緒に提案をすれば、上司に受け入れてもらえる可能性がアップするはずです。感覚ではなく、数字で攻める。私がnoteで連載している「決算が読めるようになるノート」や、書籍を購入してくれた読者の中には、このために決算を読んでいる方もいらっしゃいます。

5.各社の経営状態や業界の動向など、大きな視点でビジネスを見ることができる

 日ごろから取引先や同業他社の決算を読んでいれば、各社の経営状態や業界の動向にも敏感になります。すると、これまでとは違った大きな視点で物事を捉えることができ、他部署の人ともコミュニケーションが取りやすくなるはずです。自分の業務以外のことにも理解があり、プラスアルファの提案や行動ができると評価されれば、将来的にはキャリアアップにもつながっていくと思います。

6.異業種の人とも話題ができて、盛り上がる

 仕事やプライベートでは、異業種の方と交流する機会があると思います。そんなとき、日ごろからさまざまな業界の決算を読んでいると、話題に困ることが少なくなるでしょう。「御社の成長率はすごいですね」「今はこの事業に力を入れていますよね」などと話をすれば、相手に自分を印象づけることもできると思います。異業種交流会で役立つテクニックになるかもしれません。

■英語は必要? 「決算を読む習慣」のほうが大切

 決算を活用する方法の一部を紹介しましたが、業種や職種、目的によって、決算をどう役立てるのかは違ってきます。しかし決算を読み、そこから企業の戦略を読み取る力は、どんな職業やどんな業務にも生かせる、一生もののビジネススキルだと思います。

 現代のような国際化社会では、「英語」を話せないとダメだという意見も多くあります。ただ個人的には、決算を読む習慣は、英語を習得するよりも実利があると思います。なぜなら、日本で働いている方の場合、日々の仕事で英語がどうしても必要なシチュエーションは、それほど多くないと思うからです。一方、「数字」は万国共通。あらゆるビジネスで使われるものなので、業種や職種の違いを超えて、すぐに実務で使えるスキルだといえます。

 そして、これは私の感覚値ですが、もともと日本人は数字に強いはずなのに、「数字を知識に変換するスキル」を持つ人が、非常に少ないと感じます。だからこそ一歩踏み出して、既に持っている数字を読む力に、少しだけコツをプラスしてみませんか? 「数字を知識に変換するスキル」を身に付ければ、仕事での新たな可能性が開けてくると思います。

 もちろん、決算を「作る」ことは専門知識がないとできません。しかし決算を「読む」ことは、コツさえ学べば誰でもできるようになります。家計簿を読むような軽い気持ちで、決算を読んでみましょう。

シバタナオキさん
 元・楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、スタンフォード大学客員研究員。東京大学工学系研究科博士課程修了(工学博士、技術経営学専攻)。シリコンバレーでスタートアップを経営する傍ら、noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。経営者やビジネスパーソン、技術者などに向けて決算分析の独自ノウハウを伝授している。2017年7月に書籍「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」を発刊。

(ライター 青野梢)

[nikkei WOMAN Online 2017年12月20日付記事を再構成]

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