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「女性は28歳までに人生設計を」 敏腕校長の思い 品川女子学院理事長校長・漆紫穂子さんからのメッセージ

日経ウーマンオンライン

2018/1/9

(写真:稲垣純也)
日経ウーマンオンライン

 経営危機にあった中高一貫校「品川女子学院」を7年間かけて改革、入学希望者を60倍に伸ばすなど同校を都内有数の人気校に変えた校長の漆紫穂子さん。つらいこと、楽しいこと、働き女子の本音が詰まった著書を出版したばかりの漆さんに、働く女性へのメッセージを聞きました。

漆紫穂子(うるし・しほこ)さん 品川女子学院理事長・校長。早稲田大学国語国文学専攻科修了。都内私立中高の国語科教員を経て、28歳のとき、実家が1925年に創立した中高一貫校・品川女子学院に転職。経営危機に陥っていた同校の改革に参画し、偏差値を20ポイント以上アップさせた。2017年から現職。「女の子が幸せになる子育て」(かんき出版)など著書多数。趣味はトライアスロン。世界選手権2012年スペイン大会・2017年カナダ大会 エイジグループ日本代表。IRONMAN Copenhagen 完走。

■恥ずかしい失敗談も「シェアしたい気持ち」で書いた

――働くことは楽しいですが、時にはつらいことや失敗することもあります。著書「働き女子が輝くために28歳までに身につけたいこと」(かんき出版)では、そのあたりのネガティブな現実についても盛り込まれているのが印象的でした。

「想定外の事態に遭遇しても、折れないココロを作ってほしい」

漆さん 現実の社会で働いていたら、足を引っ張られることもあれば、失敗して嫌な思いをすることもあります。「勇気を持ってポジティブにいる」のが理想ですが、いつもそういうわけにはいかないですよね。

 当時副校長をしていた母が48歳でがんを患ったのをきっかけに、私は28歳で実家が経営する学校である品川女子学院に転職しました。母は53歳で亡くなりました。母の闘病生活と学校改革が重なり、今振り返るとたいへんな日々でした。その後も挑戦の連続で、恥ずかしい失敗談やつらかった苦労話などはたくさんありますが、これまではあまり口にしてきませんでした。今、私も50代になり、ネガティブなことも含めて包み隠さず、自分の経験したことを次世代とシェアしたいと思う気持ちが強くなりました。

――ロールモデル的に輝いている先輩女性の失敗談や苦労話を聞くと、「あんなに活躍している人でも悩んだ時期があったんだ」と勇気づけられる気がします。

 働いていると「想定外のこと」は起きます。「想定外のことが起きること」を想定しておくだけでも、何かあったときにポキッと心が折れてしまうのを防げると思います。自分がひたすら働いてきて経験したことをみんなに渡したい気持ちで本を書きました。「28歳までに」とタイトルに入れましたが、20、30、40代の自分より年下のすべての女性に向けてのメッセージです。

■「知らなかったから選べなかった」という後悔はしてほしくない

――品川女子学院では女性の「28歳」をキーワードに、「28プロジェクト」を実施しているそうですね。

 私たちの世代は、残念ながら誰にも教えてもらえなかったのですが、女性は男性と違って、安全に子どもを授かる年齢にリミットがあります。それを知っておくことはとても大事だと考えています。「知らなかったから選べなかった」という後悔だけはしてほしくないから、10代の頃からかかりつけの婦人科を持つことをお勧めしたいです。

 28歳ごろまでに検査などをして自分の体がどういう状態なのか知っておく。そして、子どもを持つ人生を自分が選びたいのかどうか、一度考えておくとよいと思います。

 つまり、女性の28歳は、仕事では経験を積み、プライベートでは結婚や出産という選択肢が生まれる、人生のターニングポイントなのです。そこを目標にして逆算し、それぞれの人生の可能性を広げるライフデザイン教育が「28プロジェクト」です。

――キャリアについてはどうお考えですか?

 男性と女性ではライフイベントが違いますから、女性は「キャリアの前倒し」が必須だと感じています。出産や育児などでブランクが生じる前に、部下を持ったり、海外赴任したり、ある程度のキャリアを積んでいると、職場にも戻りやすいですよね。女性が長く働き続けるためには、早目に力をつけておくことが大切です。最近、卒業生の中でも、早く自分を鍛えられそうな外資やベンチャーをあえて選ぶ生徒が増えてきました。

 また、プライベート面では、パートナー選びも大切だと生徒には伝えています。一時の恋愛感情に加えて、自分の人生のスタンスと合う人かどうかは重要です。例えば、自分が仕事を続けたいと思っているなら、「生活者として自立している人」を選ばないと、子どもが1人増えたような負担になってしまうかもしれませんよね。家事も一緒にしてくれて、出張しても、昇進しても文句を言ったりひがんだりせずに見守ってくれる人を選ぶ。そのためには男性と、その男性の母親との関係を見るのがヒントになるかもしれません。

 「28プロジェクト」で伝えたいのは「女性も絶対に働きましょう」ということではありません。自分の人生設計は自分で選びたいよね、そのためには中高生のうちからアンテナを立てておくことが必要だよ、準備は早めにしておいたほうがよいよね、ということなんです。

「自分の経験を次世代にシェアしたい思いが今、強くなっています」

■何かが違うと感じたら5%だけ変えてみる

――28歳を過ぎ、なんだかモヤモヤしている働き女子も少なくありません。

 「今の仕事が合っていない」「何かが違う」と悩んでいるなら、いったん立ち止まって、自分と会話する時間をつくってみることをおすすめします。自分のこれまでを振り返り、これから何を大切にしていきたいのか考えてみます。引っ越しで部屋を整理するときのように、自分の未来のために「必要なもの」「不要なもの」「保留するもの」を整理する時期が28歳の頃だと思います。

 そして、転職など思い切ったことをする前に、まずは5%だけ何かを変えてみてはいかがしょうか。いつもより早く起きる、違う駅で降りて歩く、など行動パターンを少しだけ変えてみます。例えば私は、いつもお昼をご一緒しない方に声を掛けて食事をするようにしたら、思いがけない発見と新たな人間関係が広がった経験があります。最近は、「兼業OK」という企業も出てきていますし、まずは本業以外のところで得意なことを少しずつ試してみるのも手だと思います。

(ライター 小林浩子、写真 稲垣純也)

[nikkei WOMAN Online 2017年12月12日付記事を再構成]

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