男の鉱物、女のジュエル。by Takanori Nakamura Volume 9

門外漢には全くピンとこないだろうが、このメシャムは放熱性が良く加工しやすいことから、高級パイプの材料として珍重され、今も昔もパイプ愛好家の垂ぜんの的である。良質なメシャムは主にトルコで産出されて、有名なトルコ人作家のものは、コレクターズアイテムになっている。

面白いことに、メシャムのパイプは使い込むと煙が染み込んで、べっ甲のようなトロリとしたあめ色に変化する。欧州の貴族たちは、まるで唐津のぐい飲みを愛玩するように、メシャムの味だしを競ったという。

これもパイプ愛好家にしか分かち合えない特権だが、メシャムのパイプで吸う煙は、ひんやりとして何とも言えずうまいのである。ある意味で、男にとって最もフェティッシュな石が、メシャムではないだろうか。

■紳士が持つべき象徴、万年筆

最後に、男の定番的なアイテムにダイヤモンドが飾られたストーリーで締めくくろう。1924年生まれのモンブラン「マイスターシュテュック」といえば、万年筆という機能を超えて、紳士が持つべき象徴として愛され続けている。キャップトップのホワイトスターが、差したポケットからも、すぐに分かるのが特徴だ。

万年筆のキャップトップにダイヤモンドを飾った「マイスターシュテュック モンブラン ダイヤモンド」は、モンブラン社が創業100周年を迎えた2010年に、8年の開発期間を経てリリースされた。特許を取得した43面体のダイヤモンドは、色気とインテリジェンスを象徴する男の持物として、新たな価値を生み出している。〈左〉ル・グラン¥129,000、〈右〉クラシック¥115,000、〈中〉モーツァルト¥108,000 すべて税抜き価格。モンブランの万年筆(モンブラン コンタクト センター Tel 0120-39-4810 montblanc.com)

ポケモン探しなんて言ったら、ファンに叱られるかもしれないが、実際にポケットのモンブラン探しが歴史的なエピソードになったことがある。1963年、ドイツのケルン市で、ゴールデンブック(芳名録)に、時のドイツ首相アデナウアーが署名する際、自分の万年筆が見つからないという珍事が起こった。その時、同席したジョン・F・ケネディがポケットからさりげなく「マイスターシュテュック」を差し出したという。

2010年、そのモンブランのキャップトップにダイヤモンドを飾った「マイスターシュテュック モンブランダイヤモンド」が登場した。43面体のホワイトスターにカットされたダイヤモンドは、未来のダンディーたちに、どんな物語を綴っていくのであろうか。

なかむら・たかのり
コラムニスト。ファッションからカルチャー、旅や食をテーマに、雑誌やテレビで活躍中。近著に広見護との共著「ザ・シガーライフ」(ヒロミエンタープライズ)など。

[日経回廊 9 2016年9月発行号の記事を再構成]

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