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Men's Fashion
DANDY & RHAPSODY

2018/5/16

DANDY & RHAPSODY

同じように茶箱や茶かごは、茶道具をダウンサイジングすることで、空間を自由にコントロールし、亭主と客の心の距離感までも縮めることができる。愛玩というフェティシズムを超えて、深い精神世界を見いだすあたり、茶箱は究極のダンディズムの道具だとも思う。

■小さな道具に覚悟と深い愛情を込める

そんな茶人の魂ともいえる茶かごを燃やした心境について宗慶氏は「私の履歴書」でこう告白している。「捕虜になったら、この茶かごはどうなるのか。もし、誰かの手に渡って粗末に扱われでもしたら耐えられない。燃えてゆく茶かごに合掌し、お茶との世界の唯一の絆を自ら断ち切った不幸を思い、いかに自分がお茶に心寄せていたか思い知った」

私も、茶人のはしくれとして自分なりの茶箱を組んでいるけれど、果たしてこれほどの覚悟と深い愛情を込められているのであろうか。物が好きで物を集めているが、そのよこしまな物欲までも小さな箱に収めるのは、なかなかどうして難しい。それでも、苦労して集めた道具を一つ一つ取り出して誰かと一服を分かち合うのは、時空を超えた楽しい瞬間である。

小さい道具でお茶をたてるのははた目以上に難しいが、大の男が小さな箱に奮闘する姿はどことなくユーモラスに映るから、場が自然と和むのがいい。見立てでいいから自前の茶箱を一つあつらえてみてはどうだろう。きっと優れたコミュニケーション・ツールになるはずだから。建前よりお点前で、さりげなく一服お立てすれば、万のプレゼンや世辞よりも、自分を伝えることができるにちがいない。  =おわり

なかむら・たかのり
 コラムニスト。ファッションからカルチャー、旅や食をテーマに、雑誌やテレビで活躍中。近著に広見護との共著「ザ・シガーライフ」(ヒロミエンタープライズ)など。

[日経回廊 10 2016年11月発行号の記事を再構成]

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