ライターは、紳士の火付け役。by Takanori Nakamura Volume 6

エス・テー・デュポンは、1872年創業のフランスを代表するラグジュアリー・ブランド。中でも1952年に発表したガスライターは、炎を調整できる画期的な機能で特許をとり、紳士の象徴として世界的にヒット、ロングセラーとして愛され続けている

「ちょっと火を貸してくれないか?」

たばこを吸える場所の制約が増えた日本では少なくなったが、海外では見知らぬ男たちから、頻繁に声をかけられる。特に開発途上の国においては、ライターはまだまだ貴重品なのだ。男たちにとって火を貸す行為は、挨拶みたいな場合も多いから、喜んで応じることにしている。だから、僕は海外へ行く場合は、必ず愛用のエス・テー・デュポンのライターをポケットに忍ばせている。

文=中村孝則 写真=藤田一浩 スタイリング=石川英治

(7)カメラの温故知新。>>
<<(5)結んで、飛来て、蝶ネクタイ。

「キーン」という独特の開閉音と同時に、シュパッとハンドルを回す。使い慣れたライターだから、間髪をいれずに火をつけるなんてわけないが、大抵の男たちは、一瞬表情を変える。ワザに虚をつかれる者、ライターに関心を示す者など反応はさまざまだが、おしなべてうまそうに一服する男たちの表情を眺めるのは、旅の中のかけがえのない出会いの瞬間だ。

グラスによってワインの味わいが変わるように、火元の違いでたばこの味わいも変化するのかもしれない。人間の五感とは、イメージの影響を受けやすいものなのだ。着火に恩を着せるわけではないが、ちゃっかり現地の最新の情報や、彼らの生活の様子を聞き出すきっかけづくりにも活用している。

■日常を非日常な瞬間に

ライターは、今も昔も世の男たちが憧れる数少ないアクセサリーのひとつだが、さしずめエス・テー・デュポンはその最高級だろう。もちろん出費は覚悟の上だが、点火という日常の行為を非日常な瞬間としてシェアできる点においてプライスレスな存在である。

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