蝶ネクタイは旅先でもメリットを発揮する。普通のタイ一本の平均が、35グラムから45グラムに対して、蝶ネクタイは10グラム以下。軽量でかさばらないし、収納も簡単。かばんにひとつ忍ばせておけば、不意の会食やパーティーでも心強い武器になるはずだ。近ごろは、素材やデザインのバリエーションも豊富だし、あらかじめ蝶結びのものもあるから、機会にとらわれず、もっと気軽に自由に楽しんでほしいと思う。

■絆や縁を結ぶ思いを込めて

ただ個人的には、やっぱり蝶ネクタイは自身で結んでほしいと願う。蝶ネクタイには、「蝶結び」のほかに、「叶結び」や「ねじり結び」「いちご結び」など20ほどの結び方があるから、結び方次第で自在な表現力を与えてくれるはずだ。岩倉だけでなく西欧使節団のメンバーもそれを熟知していてか、使節団の有名な肖像写真の山口尚芳や伊藤博文も、洒脱(しゃだつ)な「尾だれ結び」をしているのである。

そもそも日本において「結ぶ」とは、古来より神道の「むすひ」に通じ、魂や契りを意味している。民俗学者の折口信夫も、むすびは「魂むすび」に通じるというが、その日に出会う人々との友情や絆や縁を結ぶ思いを込めて、蝶ネクタイを結んでみる。もしかしたら思いがけないご縁まで、結ばれるかもしれない。

なかむら・たかのり
コラムニスト。ファッションからカルチャー、旅や食をテーマに、雑誌やテレビで活躍中。近著に広見護との共著「ザ・シガーライフ」(ヒロミエンタープライズ)など。

[日経回廊 5 2015年12月発行号の記事を再構成]

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