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公海に大規模な海洋保護区を 国連が初の国際条約作り

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/1/13

ナショナルジオグラフィック日本版

自然保護論者が望む形で、新しい国際条約が締結されれば、海洋生物は救われるかもしれない。(PHOTOGRAPH BY BRIAN J. SKERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 世界の国々が2年にわたる歴史的な活動に取り組み始めた。公海の生きものを保護する世界で初めての国際条約を締結しようとしている。

 2017年12月24日、10年以上におよぶ議論の末に、ついに本格的な条約交渉を行うための政府間会議を招集する採決が国連でとられた。その結果、これから2年間にわたり、「海の憲法」とも呼ばれる「海洋法に関する国際連合条約」に基づいて、法的拘束力を持つ条約の詳細が協議される予定だ。

 この「海洋版パリ協定」により、公海の広範囲にわたる海洋保護区を設けることが可能になる。これはまさに海洋学者が長い間待ち望んでいたものだ。課題の一つは、たとえば、国際捕鯨委員会や国際海底機構といった既存の組織を阻害せずに公海を保護するにはどうすればよいか、ということである。

 地球の表面の約半分を占める公海は、どの国も管轄権を持たないみんなの水域だ。最も深いところでは、およそ水深11キロメートルにもおよぶ。広くて深い海域は、貴重な魚類からプランクトンに至るまでさまざまな生命で満たされている。公海はまた、私たちに欠かせない酸素の発生源であり、世界の気象も大きく左右している。

 「これは、持続可能な利用および海洋の保全を最優先した海洋統治を手にする数十年に一度の機会です」と、非営利団体ピュー・チャリタブル・トラスト(Pew Charitable Trust)の副理事リズ・カラン氏は語る。「私たちが吸う酸素があるのはみな、海のおかげだとも言われています」

 メキシコ政府とニュージーランド政府、そして140以上の政府支援団体が採決の内容を調整した。この条約は「公海を保護するための強いメッセージ」を送るものになるだろうと公海連盟(HSA) は述べている。

 願わくは、2020年半ばに世界各国が条約に調印できるようになっていること。この条約の実現に、世界各国が注目している、とカラン氏は言う。

フタオビミナミヒメジ(Parupeneus insularis)のような魚が稚魚を育てるには保護区が必要だ、と保全学者はいう。(PHOTOGRAPH BY BRIAN J. SKERRY, NATIONAL GEOGRAPHIC)

■大規模漁業の大きな影響

 公海とは、国の海岸線から200海里までの排他的経済水域(EEZ)の外側を指す。つまり、公海で漁をする船は通常大型船に限られ、その多くが海底を損なう底引き網漁船だ。

 日本や韓国、スペインのような豊かな10カ国の船が、公海における漁獲量の71%を水揚げしている。彼らが自国の港からはるばる遠くまで漁をしにやってくる理由は、推定1億5000万ドル(約170億円)にのぼる助成金で経費が穴埋めされているからにすぎない、とカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学水産経済学研究ユニット所長ラシッド・スマイラ氏は話す。

 世界の年間総漁獲量は、不正な漁業によるものも含めると、2010年には約1億900万トンと推定される。これは、肉用牛約2億2000万頭分に匹敵する。米国の牛肉産業で消費される牛が年間3000万頭であることと比較すれば、その多さがわかるだろう。

 さらに、世界の総漁獲量は1990年代半ばから減少し続けている。1970年代、乱獲された漁場は世界の漁場の10分の1とされていたが、今では全体の3分の1まで広がっていると考えられている。しかし公海の保護が進めば、この傾向を覆せるかもしれない、とスマイラ氏は語る。

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