今買うべき4Kテレビはこれ 有機ELでは東芝が優秀
「液晶テレビでは出せない、漆黒の闇を表現できる」。そんなうたい文句を武器に、有機ELテレビが市場を席巻している。一方で、液晶も4K対応のハイエンド機を中心に着実に進化を遂げ、特に画質面の向上は著しい。有機ELか液晶か──今買うべきはどちらなのか。
結論から言うと、使う用途やシーンにより「ベスト」は異なる。そもそも有機ELは、画素そのものが発光する自発光パネル。14年まで国内で販売されていたプラズマテレビと同じく、画素単位で輝度を調節できるのが最大の利点だ。その真価が発揮されるのが黒の表現。画素ごとに消灯でき、沈み込むような漆黒が表現できる。対する液晶は、パネル裏側に配したバックライトで画面を照らすため、微細な光の調節が難しく、光が漏れて黒を沈ませにくいのが特徴だ。
そんな有機ELのメリットが如実に現れるのが、暗い部屋での映像鑑賞。特に、緻密に作り込まれた映画は黒の繊細な表現力がものをいう。有機ELは色表現も豊かで、臨場感は抜群だ。
逆に、輝度の面では、液晶に一日の長がある。回路への負荷や電流量の関係で画面全体の輝度を高めにくい有機ELに対し、液晶は強力なLEDバックライトを組み合わせれば比較的容易に「明るいテレビ」が作れるからだ。特に最近は、輝度のレンジを拡張してコントラスト感のある映像が楽しめる「ハイダイナミックレンジ(HDR)」への対応がハイエンド機のトレンド。暗闇からまぶしいほどの明るさまで自在に表現できるかどうかが重要になる。
今狙うべき4K液晶
上位機譲りの「高コスパ」モデル
画面輝度が必要になるのは、明るい部屋でテレビを見る場合だ。特に、外光が差し込むようなときには高輝度が欠かせない。映画より日中のテレビ視聴が多い人は、上位機種譲りの画質エンジンを備えたミドルクラスの液晶モデルがコストパフォーマンスに優れるので狙い目だ。
ただ、最新の有機ELパネルもピーク輝度がアップし、「一般的な明るさの部屋で見るぶんには輝度不足を感じることはほぼない」(AV評論家の折原一也氏)。今後より市場が広がるのが確実な次世代画質のテレビを、先んじて買ってもいい時期が来ている。
最新有機EL、3社の実力は?
有機ELテレビ選びで最も肝要なのは、当然ながら画質だ。動画配信サービスなどで対応が進む4K映像を、有機ELのメリットを生かしてどれだけ緻密に再現できるか。さらに、意外に見落としがちなのが、地上デジタル放送などの2K映像の画質だ。4Kの実用放送は18年12月にようやくBS/110度CSで始まるものの、今後数年から10年程度は地デジが引き続き放送の中心になるとみられる。「ブルーレイディスクを含め、身の回りのコンテンツはいまだ2Kが多い」(ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba)。
2K映像を4Kテレビに映し出すには、本来持っていない情報を補い、4K相当の解像度で映像を出力する「アップコンバート」の技術が求められる。ここでカギになるのが、映像処理エンジン。現在売っている有機ELテレビはすべてLG製のパネルを使っているが、映像処理エンジンは各社が独自開発している。ここがメーカーの腕の見せどころになる。
実は日本のデジタル放送は、世界的には古い世代の圧縮規格が用いられている。規格によってノイズの出方は異なり、日本市場を熟知してノウハウをため込んできた日本メーカーはその高画質化でしのぎを削ってきた。今回は、出そろった国内3社の売れ筋有機EL55型テレビを徹底比較。4Kの映画と地デジ番組をそれぞれAV評論家の折原氏と視聴して画質や音質をチェックした。高級機で標準搭載になっている録画機能の使い勝手も併せて見た。
総合力で東芝「REGZA X910」
実勢価格38万2800円(税込み)
4K画質:○/地デジ画質:◎/音質:△/録画機能:◎
総合力に秀でていたのが、東芝映像ソリューションの「REGZA X910」だ。地デジをアップコンバートした画質で他モデルを圧倒。テロップなどに発生しやすいノイズを目立たなく処理しながらも、「4Kコンテンツのようなくっきりとした精細感のある絵を再現できていた」(折原氏)。4K映画の画質はソニーやパナソニックに譲ったものの、「有機ELらしい黒表現は十分に堪能できる」(折原氏)。
他モデルとほぼ同価格帯ながら、最大6チャンネルを同時録画できる「全録レコーダー機能」を搭載するコスパの高さも魅力。隙のない一台といえるだろう。同社は、中国ハイセンスグループの傘下に入るが、社名の変更はなくテレビの開発や修理などは継続する。
4Kコンテンツの画質に優れるソニー「BRAVIA A1」
実勢価格45万3470円(税込み)
4K画質:◎/地デジ画質:○/音質:○/録画機能:△
4Kコンテンツの画質を重視するなら、ベストはソニーの「BRAVIA A1」に変わる。地デジの画質では東芝に及ばなかったものの、4K映画の画質は「色を忠実に再現し、黒の階調表現も秀逸で完成度が非常に高い」と、折原氏も太鼓判を押す高評価。有機ELの良さを存分に堪能できる一台だ。
ソニーは音質面でも他にはない特徴がある。他2モデルが薄型テレビとして標準的な音質に留まるのに対し、画面そのものを振動させて音を出す斬新な新機構を採用し、「人物の近くからせりふが聞こえてくるような感覚があるなど、映像との一体感が高い」(折原氏)という。ただ、チューナーを2つしか備えておらず、2番組の同時録画には対応しないなど、録画機能には割り切りが必要だ。
4K映画の画質も録画も充実したパナソニック
実勢価格37万4770円(税込み)
4K画質:◎/地デジ画質:○/音質:△/録画機能:○
パナソニックの「VIERA EZ950」は、4K映画の画質でソニーに迫る非常に高い評価。「絵作りの傾向は少し違うが、ソニーに近い自然な色合いで黒の表現にも優れる」と折原氏は語る。全録のような"飛び道具"はないが、3チューナーで2番組同時録画をしながら放送を視聴できるなど録画機能も充実し、映画画質と機能を両立する一台だ。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2018年1月号の記事を再構成]
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