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共働き夫婦の家計管理術 貯蓄目標額決め、互いに分担 内緒と不干渉はNG

2017/12/31

PIXTA

夕食を終えた筧家のダイニング。良男と幸子がお茶を飲みながらくつろいでいます。そこへ会社の同僚と外食をしてきた恵が帰宅しました。椅子に腰掛けると小さなため息をつき、ちょっと暗い表情をしています。幸子が茶を出したところで良男が話しかけました。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中)  筧恵(かけい・めぐみ、25) 

筧良男 どうした? 深刻そうな顔をして。

筧恵 会社の女性の先輩が子どもの小学校入学を機にマイホームの購入を考え始めたんだけど、蓋を開けてみたら自分も夫もほとんど貯蓄がなく、険悪な雰囲気なんだって。

筧幸子 まあ。先輩の家庭は共働きなのね?

 うん。夫が家賃や保険料を負担し、先輩は食費を担当するなど、しっかり分担していたから、お互いに相手が貯蓄していると思っていたそうよ。

幸子 共働きの夫婦にありがちなパターンね。ファイナンシャルプランナー(FP)の深田晶恵さんは「共働き夫婦は収入の担い手がひとりの夫婦に比べてお金がたまりやすいと思われがちだけど、実際に貯蓄できている共働き夫婦は意外に少ない」と話しているわ。クレディセゾンのアンケートでも「夫婦で一緒に貯蓄をしている」との回答は44%。半分以上は相手の貯蓄がわからないようね。

 先輩夫婦はどうしたらいいのかしら。

幸子 やるべきことは2つ。1カ月あたりの生活費を把握して、それぞれの収入に応じて負担する。もう1つは夫婦で貯蓄の目標額を決める。先輩夫婦は「費目別負担型」のようだけど、それだとひと月の生活費が分かりづらいわ。だからまずその金額をつかみ、それぞれの収入に応じて分担するの。例えば生活費が月30万円なら夫20万円、妻10万円、収入が同程度なら15万円ずつを生活費用として銀行など金融機関の口座に入金し、そこでやり繰りするのよ。

良男 貯蓄も一緒の口座にするのかい?

幸子 生活費は分担して一つの口座でやり繰りしつつ、貯蓄はお互いの分担額を決めて、それぞれの口座でためていく「共通財布型」がいいわ。生活費口座でためていく「全額管理型」だと、夫婦のどちらがいくら貯蓄したか分かりづらくなるし、生活費口座にお金が残っていると外食やレジャーで使ってしまうでしょう。共通財布型で別々に貯蓄しつつ、相手が計画通り貯蓄できているか、定期的に「情報公開」する必要があるわ。

良男 最近はスマートフォン(スマホ)の家計簿アプリに口座を登録しておけば、残高が通知されるので、お互いに利用したらいいんじゃないかな。

幸子 パパも詳しいわね。貯蓄する場合は銀行の自動積立定期預金を利用する方法があるわ。生活費口座を夫の給与振込口座とし、その銀行に貯蓄用の口座を別に作って手続きをしておけば、給与が振り込まれた後に銀行が自動的に貯蓄用口座に一定額を移してくれるの。

 比較的金利の高いネット銀行で貯蓄している同僚もいるわ。

幸子 ネット銀の一部では定額自動入金サービスを提供しているところがあるわ。利用者の他の銀行口座から毎月、一定額を自動的に普通預金口座に移すサービスで、手数料は通常かからないの。

良男 ところで家庭の貯蓄の目標額はどう決めるんだい? 子どものいない共働き夫婦は手取りの2割は貯蓄に回すべきだと聞いたことがあるけど。

幸子 それも1つの考えだけど、FPの豊田真弓さんは「まず必要な貯蓄額を書き出してみるといい」と話しているわ。一般に人生で大きなお金が必要になるのは教育費、マイホームの購入資金、老後資金。文部科学省と日本政策金融公庫によると、小学校から大学卒業までにかかる教育費は、すべて公立に進学するケースで約956万円、高校と大学は私立に進学する場合は文系で1342万円、理系は1527万円なの。だから教育費はおよそ1000万円いることになるわ。マイホーム購入の頭金については仮に500万円として、それぞれを今後10年間、5年間でためようと考えると、初めの5年は年間貯蓄額が200万円、その後の5年は同100万円になるの。さらに老後資金もためなきゃ……。

 そんなに無理よ!

幸子 「まずマイホームの頭金をためよう」などと優先順位をつけてもいいの。教育費も子どもが誕生したときに学資保険に加入していたり、老後資金は会社の年金制度があったりして、手を打っているものがあれば差し引いて計算していいわ。夫婦で情報公開して家庭の資産・負債を確認することね。

良男 最近の若い人は奨学金の返済を抱えているケースも少なくないからね。

幸子 注意したいのは貯蓄口座の名義ね。夫名義だけにせず、それぞれの名義で貯蓄するのも一案よ。特に子どものいない夫婦では万一、夫が亡くなると、相続人にその親が登場してくるの。結婚期間中に築いた財産は夫婦共有だけど、夫名義だけになっていると、親が「息子が必死にためたものだ」と主張して相続がこじれるケースもあるそうよ。また、FPの豊田さんは「結婚する前にためていた貯蓄は共有財産に当たらないから、家計に入れずに保有しておくのも手」と話しているわ。今は約3組に1組が離婚する時代なので、自分で作った財産はしっかり守っておくことも必要ね。

■まずは年間目標を設定
ファイナンシャルプランナー 深田晶恵さん
共働きなのにお金がたまらない要因は「内緒」と「不干渉」が原因であることが多いです。結婚生活を始めるとき、お互いの貯蓄額を言わず、年収もオープンにしない夫婦が増えています。そんな夫婦が「これではまずい」と感じ始めるのは、住宅購入の際に貯蓄の少なさに気づいたときか、子どもの誕生で将来の教育費が心配になったときです。
危機感を持ったら、貯蓄できる体質に変わりたいものです。日々仕事や子育てで忙しいでしょうから完璧な家計管理は目指さず、まず年間の貯蓄目標額を決めることを勧めます。毎月の積み立てだけではまとまった額にならないので、ボーナスからも貯蓄します。一方、生活費をかけすぎたり実力以上の貯蓄額を設定したりすると、赤字になります。無理のない貯蓄額を設定することが大切です。
(聞き手は川鍋直彦)

[日本経済新聞夕刊2017年12月27日付]

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