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自転車にアラフィフの星 転倒で大けが、パラに転向 野口佳子さん、初出場の世界選手権で優勝 一躍メダル候補に

2018/1/13 日本経済新聞 夕刊

野口さんは高次脳機能障害により、身体の右側の力が弱く動き出す時の動作も鈍い(C)JPCF/Yuji Hoshino

 パラサイクリング(自転車)に「アラフィフの星」がいる。2017年11月にチームブリヂストンに入った野口佳子さん(47)だ。16年4月、実業団のロードレースで転倒し障害を負った。だがパラに転向して1年もたたない17年9月、初出場の世界選手権(南アフリカ)ロードタイムトライアルで優勝。東京パラリンピックのメダル候補に躍り出た。

 南アのレース後はメダルを逃したと思い、帰り支度をしていた。「タイムだけ見に行こう」とスタッフに連れられ表彰式へ。チャンピオンは誰でもなく、自分だった。スタッフからのサプライズ演出に「メークをする暇もなく表彰台に上がって。恨んでます」と笑う。

本業は薬剤師。2人の子どもの母親でもある(C)JPCF/Yuji Hoshino

 市民ランナーとして20代でマラソンを完走、38歳でトライアスロンの大会に出始めた。自転車が得意なため、地元の東京・多摩市周辺で活動する実業団チームから誘われ、本格的な練習を始めた矢先のケガだった。

 頭蓋骨、鎖骨、肩甲骨と肋骨が折れ、脳挫傷、くも膜下出血も。「その日がヤマ」と言われた容体を乗り切ったが、高次脳機能障害が残った。体の右側の力が弱く、動き出す時の動作も鈍い。

 だが16年11月に関係者に誘われてから1年弱で、リオデジャネイロ・パラリンピックの金銀メダリストを抑えての戴冠。「勝てたのはバイクやメカニックの力」と謙遜するが、地力がなければなしえない。

 ただし起伏の多いコースが身長156センチと体の小さい野口さん向きだった面はある。「トラックではパワーがある選手が有利。そこで戦っていくには上を見ないとメダルに届かない」と20年への覚悟を示す。

 本業は薬剤師。2人の子どもの母親で、長男も実業団で自転車競技をする。夫も全力で応援してくれているという。東京パラは49歳で迎えるが「脳に障害があるので、実年齢もすぐ忘れるのが強みです」。体力面への不安も冗談交じりに吹き飛ばす、「世界一のおばさん」(権丈泰巳日本パラサイクリング連盟理事長)だ。

(摂待卓)

[日本経済新聞夕刊2017年12月26日付を再構成]

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