2018年は首都圏の中古マンションの価格差が拡大しそうです。平均値としては17年と同様、横ばいになると予想しますが、駅からの徒歩距離の違いによる格差は拡大傾向に歯止めがかかりそうにありません。成約価格はそれだけに左右されるわけでは決してありませんが、その傾向が強くなり、価格の上昇や横ばい、下落という物件ごとのばらつきも拡大する年になりそうです。
住宅ローン金利の低下で価格が上昇
18年の首都圏の中古マンション市場を予測するのにあたり、ここ数年の市場動向を振り返ってみましょう。中古マンション価格は上昇を続けていますが、その発端となったのは13年で、日銀がこれまでにない異次元金融緩和政策に舵(かじ)を切った時期です。これにより住宅ローン金利が大きく下がり、ローンが組みやすく住まいを購入しやすい環境に拍車がかかりました。同じ返済額であれば金利が下がった分、調達できる金額が増え、新築だけでなく中古マンションの価格も上昇する要因の一つとなっていたのです。
こうした中、13年から14年春ころまでは中古マンション在庫が減少する一方で、月間平均取引件数が2600件から3000件を超える水準にまで増加。価格が上昇するのもうなずけます。その後14年4月の8%への消費税引き上げによる心理的影響から取引件数は一時的に減少しますが、16年に住宅ローン金利がさらに下がり、在庫が増えても価格が上がるという状況になっていました。そして17年は在庫と取引件数が高止まりしている状況で、金利がこれ以上は下がらないという水準に下げ止まり、首都圏の中古マンションの価格は横ばい傾向となりました。
18年の取引件数、大きな増減はなし
さて、今年の首都圏中古マンション市場はどのような動きが予想されるのでしょうか? まず、取引件数について考えてみます。
経済情勢をみると世界的に経済環境は良好ですし、日本の経済も同様だといわれています。北朝鮮や中東リスクといった地政学リスクが問題になる可能性はありますが、こうした突発的事象がない限りは昨年と大きく変わることはなさそうです。住宅市場に影響を及ぼす金利も、すぐに上昇するということはなく、低位安定のままと考えられます。したがって、取引件数が大きく増減することはなさそうです。
在庫は17年と同じか微減
在庫についても、おおむね同じか微減といったところではないかと筆者は考えています。というのは、首都圏で供給される中古マンションの平均築年数は約20年程度となっているので、在庫数は「約20年前に新築マンションとして供給された物件数」の影響を強く受けていると考えられるからです。18年は1998年前後に建てられたマンションが中古市場に流れてくると思われますが、97年当時の供給戸数は18.2万戸で、前年よりやや少ない供給となっています。このため、在庫は昨年と同じか微減する程度と考えています。
以上から、今年の首都圏の中古マンション価格は昨年と同様に横ばいで推移すると予想されます。
駅歩による成約単価の差、年々広がる
しかし、ここまでの話はあくまで平均値です。平均値で見落としがちなのは、ばらつきの大きさです。似たような価格水準で多くの物件が取引されていればよいのですが、そうではない場合、平均値をうのみにはできません。
マンションの価格は駅からの距離と築年数に大きく影響を受けるといわれています。そこで駅と駅との間隔が郊外周辺よりも狭い、すなわち比較的ばらつきが少ないと思われる都心中心部の7区(千代田、中央、港、渋谷、新宿、目黒、品川)で13年1月から17年11月末までに取引された2万2943件の成約事例をもとに、駅からの距離と築年数によって成約単価がどのように決まっているかについて各年毎に調査してみました。
この表は駅からの徒歩距離が1分遠くなるごと、築年数が1年経過するごとにそれぞれの成約単価にどの程度の差が生まれているのかを分析したものです。
築年数による成約単価の差にはさほど変化が見られませんが、駅からの徒歩距離については、1分遠くなるごとの値下がり単価が毎年大きくなっており、13年と17年とではその差はおよそ2倍にも達しています。つまり、駅からの徒歩距離による価格差が年々広がっていることを意味しています。おそらくこの傾向は駅と駅の間隔が離れている郊外のほうが都心以上に顕著になっているのではないかと筆者は考えています。
このように見てくると、18年はやはり「駅から近い物件の価格は下がりにくい」「遠いと下がりやすい」という傾向に拍車がかかり、冒頭で述べたように首都圏の中古マンション価格はばらつきが大きくなるといえそうです。
