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食を旅する

餅をいつでもおいしく食べる知恵 岩手・一関の食文化

2017/12/29

「糸を引く」納豆餅は不祝儀には適さない

重箱の餅に戻ろう。右上段は納豆餅。地元ではポピュラーな食べ方。ネギを薬味にしょうゆで味付けした納豆を餅にからめて食べる。ただし「糸を引く」ため、不祝儀には食べない。右中段は、くるみ餅。三陸沿岸部では、お雑煮の餅をいったん取り出してくるみのたれで食べるのは知られている。鬼ぐるみをすり、砂糖や塩で味を調えて餅にかける。右下段はじゅうね餅。じゅうねはシソ科のエゴマの実。ゴマ同様、すりつぶして砂糖と塩を加える。味もゴマに近いが、ゴマに比べ粒が小さく、実は調理に手間がかかる。そう、手間をかけることは「おもてなし」なのだ。

そして最後は雑煮。最初のあんこ餅と同様、最後の雑煮も決められた作法だ。和風だしで鶏肉を煮て雑煮にする。味わい的には関東の雑煮に近いが、そこは餅食文化の一関、のし餅を切った角餅ではなく、つきたての餅がちぎって入れられている。

最後は雑煮でしめる

これほどぜいたくな餅料理を月に2回も食べていたとは、いくらお殿様の命令とはいえ、さぞかし一関の農民は豊かだったのだろうと思われるかもしれない。しかし、ここまで豪華になったのは、餅料理が観光の目玉に据えられてからのことだ。

農民にとってはコメは「売り物」。貴重な「食いぶち」を食べてしまうことはなく、くず米など、売り物には適さないコメを餅にして食べていたという。落ち穂や青米、くず米などを練り合わせ、雑穀を混ぜてついた「しいなもち」と呼ばれる餅を、本来は食べていたそうだ。もちろん味も劣る。

つきたての餅はよくのびる

そんな「しいなもち」をよりおいしく食べるための工夫がこうした餅料理の数々を生んだという。戦後、昭和30年代になって以降、庶民も白い餅を食べるようになったことで、餅料理のおいしさが格段にグレードアップしたことは想像に難くない。

一関のように1年中餅を食べる地域でなくても、これからしばらくの間は、飽きるほどに餅を食べることだろう。一関の餅料理を参考に、少しずつ変化を加えて「餅の日々」すごしてみるのもいいだろう。

(渡辺智哉)

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