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広がる日本の「#MeToo」 女性管理職にできること

日経BP総研 マーケティング戦略研究所長 麓幸子

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NIKKEI STYLE

「日本の女性たちにとって、これは大きなうねりになるかもしれない」

そう感じたのは、2017年12月17日の「BuzzFeed NEWS」の一本の記事だった。働く女性に人気のブロガーで作家のはあちゅう氏が、電通に勤務していた当時の先輩社員の男性から「セクハラ・パワハラ」を受けたと証言したのだ。男性ははあちゅう氏に謝罪、その翌日の12月18日に、自身が設立した法人の代表取締役を辞任した。はあちゅう氏はその記事の中で「#metooに背中を押されました。必死の訴えで、少しでも世の中が良い方に変わることがあれば」と語っている。

筆者がその記事を読んだのはフェイスブックで誰かがシェアしていたからだ。実業家の椎木里佳氏は、はあちゅう氏の記事が出た当日、ツイッターで「広告業界に限らずセクハラ・性的要求は世の中に蔓延してる。断ったら仕事の話が白紙になったこと何回もあるし。」と投稿。その後も多くの著名女性たちがはあちゅう氏の記事をシェア・コメントし、はあちゅう氏を支持していた。その翌日に「スピークアウトした人たちを1人にさせない」と表明した駒崎弘樹氏(認定NPO法人フローレンス代表理事)のブログにも多くの人が賛同していた。

「声を上げる女性たち」日本にも地殻変動か

性暴力やセクハラの被害を受けた人たちがツイッターなどで「#MeToo(ミー・トゥー=私も)」のハッシュタグ(検索目印)をつけて、「私も被害者」と声を上げる動きが世界中に広がっている。発端は、ハリウッドの大物プロデューサーのハーベイ・ワインスタイン氏が約30年間にわたり、セクハラや暴行を繰り返していたと米ニューヨーク・タイムズが17年10月に報道したこと。女優のアリッサ・ミラノ氏が、被害を受けたことのある女性たちに「#MeToo」と声を上げるようツイッターで呼び掛け、レディー・ガガ氏などがSNS(交流サイト)に「#MeToo」と投稿したことで動きが世界中に広がった。

米国では、訴えられた著名司会者の番組の打ち切り、有力議員の辞任などが相次いでいる。12月6日、米タイム誌が毎年恒例の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に、セクハラ被害を証言する運動に加わった「沈黙を破った人たち」を選び、表紙を飾ったことでもさらに話題になった。

一方、日本ではいち早くタレントの小島慶子氏などが「#MeToo」と投稿していたものの、それほどの盛り上がりをみせていなかった。しかしここにきて変化が起きている。

日本は女性への性暴力やセクハラ被害に冷たい国であるといわれてきた。性別役割分業意識が強く、いまだに男尊女卑的な風潮が根強い中で、性暴力被害を女性が訴えること自体に強い圧力がかかっていた。「それはよくあること」で「いちいち目くじらを立てるほうがおかしい」「女性にも落ち度があったのではないか」と言われ、被害者である女性たちの多くが誰にも言わず封印し、泣き寝入りしてきた。そこに地殻変動が起きているのか。

働く女性の事情に詳しいジャーナリストの福沢恵子氏はこう分析する。

「男女雇用機会均等法から30年たち、均等法の最初の世代は50代になっている。女性たちが社会進出し、点から線へ、線から面になってきた。点であれば告発しても潰される。線であれば潰されはしないかもしれないが『女性に非があったのではないか』と非難される。しかし、女性たちが社会のいろいろなところで居場所を獲得して面となると違ってくる。下手に潰しにかかると加害者側が自分に不利益が生じるのではないかと危機感を覚えるまでに変わってきている」。今回、はあちゅう氏に謝罪した男性が、翌日に代表取締役を辞任したことにもそれが表れている。「セクハラをする人間のいる会社はセクハラを容認している会社ということ。そういう企業はビジネス上やっていけない。従業員や消費者や投資家などさまざまなステークホルダー(利害関係者)から受け入れられなくなるからだ」

性的被害告発のジャーナリストに共感

「#MeToo」は、タラナ・バーク氏が07年に始めた運動だが、今年このように拡散したのは、大衆性にあると福沢氏は指摘する。

「ハリウッドの有名プロデューサーと有名女優だからあれだけ注目されて広がった。これが一般の企業内の話であれば『そんなのはありふれたこと』と認識されてそこまでは広がらなかっただろう。日本においても、はあちゅう氏はオピニオンリーダーとして若い女性たちを中心に強い影響力を持つ、まさにインフルエンサー的な存在。しかも、彼女はいわゆる『運動家』でなく、高い大衆性を持つ人。SNSの力と、『運動』にはさほど関心はない大衆に支持されている人が動いたことが大きい」

また福沢氏は、はあちゅう氏の証言は日本での「#MeToo」のターニングポイントになるが、そこには、元TBS記者の男性によるレイプ被害を訴えたジャーナリストの伊藤詩織氏の影響も見る。

伊藤氏が17年10月に出版した著書「Black Box」には、性的暴力を受けた女性への日本における対策がいかに遅れているかを自らの体験を通して訴え、性暴力に対する社会的、法的システムを変えるため、性的被害についてオープンに話せる社会にしたいと記されている。伊藤氏の訴えを日本の大手メディアは積極的に報じなかったものの、アマゾンのユーザーレビューで「彼女の行動によって救われる人がいる」と投稿されるなど、多くの共感が広がっている。

元厚生労働事務次官の村木厚子氏も11月に、都内での講演で自分の幼少期の性的被害について触れていた。そこにも「声を上げた人に対して、より多くの応援する声を届けたい」(朝日新聞12月22日夕刊)と、伊藤氏への共感があった。日本の「#MeToo」の起点は、実は、17年5月29日に伊藤氏が司法記者クラブで記者会見を開いた日になるのかもしれない。

実名挙げての投稿にはリスク

「#MeTooは、今まで封印されていたことがとても重要なことであると再認識させてくれた。一つのロールモデルとして、こういう行動を取るのがいけないことではないとのメッセージをたくさんの女性が受け取った。いろいろな人たちの訴えを聞いて、あの人たちがやっているのだから、私も我慢する必要がない、声を上げていいんだと女性たちが思い始めた」(福沢氏)

性的被害を訴えた女性たちに対し「あなただけではない、私もそうだ」と共感と連帯を示し、声を上げることで、性暴力やセクハラの黙認をやめ、一人ひとりが生きやすい社会に変えたい、変えることに対して寄与したい女性たちが確実に増えている。

「ただし、当然だが、実名を挙げての投稿にはリスクがあることも押さえておきたい。相手との力関係を客観的に見て判断する必要がある。仕事を失うこともあるし、名誉毀損で訴えられる可能性もある。はあちゅう氏の場合は既に会社から離れており、当の男性とは直接の仕事上の関係はなくなっている。また、単にブログで投稿しただけでなく、本人の訴えを受けた第三者のメディアが取材して報道したことが事態を大きく動かしたことを忘れないでほしい」(福沢氏)

もし、実名を挙げる場合は、可能な限り状況の記録をとる、支援者を求めるなど自らの準備と心構えが必要となろう。

セクハラの被害者にも加害者にもならないために

次に、これを読んでいる働く女性の方たち、特に女性管理職の方が、セクハラの被害者にも、そして加害者にもならないために何をすればよいかを述べたい。

セクハラは、権力のある人が権力のない人に対して起こす行為だ。既に一定の権力を持っている女性管理職は、被害者となることは少ないかもしれないが、あなたの周りでセクハラがあるのであれば見て見ぬふりをしないこと。そのような振る舞いをすれば、あなたはセクハラを容認する立場に立つことになる。

この「#MeToo」ムーブメントで、あなたの部下や後輩が「私もセクハラ被害に遭ったから訴えたい」と相談にやってくるかもしれない。そのときにあなたはどんな態度を取るか。

「従来であれば、声を上げる人がいたら必ず足を引っ張る人もいた。従来は男性に見られることが多かったが、今後は女性管理職がそのようなことをするかもしれない。『ああいう騒ぎ方をしたら本人のためにならないと思うの。あなたは賢いからそんなことはしないわよね』と。そのような態度を取ってはいけないことは明らかだ」(福沢氏)

さらに気を付けたいのが、女性がセクハラの加害者となってしまうこと。セクハラは男性が加害者で女性が被害者という一方的な図式だけでない。権力を持った女性が部下(男性、女性どちらにも)に被害を与えることもあり得る。しかも無意識のうちに。これに対して、福沢氏は「権力を盾にして、放逸に振る舞っても許されると自分が解釈するのがセクハラ。自分が何気なくする行為、発する言葉が相手に対していかに侮蔑的であるかが想像できなくなっている」と指摘する。これは「知らなかった」「そんなつもりではなかった」ではすまされない重要な問題であり、各自の人間性に任せるわけにはいかないため、管理職に対しては適切な研修が必要だ。

さらに福沢氏は「人は、自分が所属するコミュニティーを基準に物事を考えがちで、異なったコミュニティーに属する人に対して想像力を持てない傾向がある。しかし、世の中には多様な人たちがいて多様な価値観があることを知ることが重要。そのためには意識的に自分とは異なるコミュニティーの人たちの話を聞いたり、自分が日常的には所属しないソサエティーと交流を持つことも必要だろう」ともいう。

最後に、筆者にもさまざまな「#MeToo」があったことを記したい。子どもの頃、塾の講師から胸を触られて本当に嫌だった。とても怖かった。でも、どうすることもできなかった。大学生の頃、暗い道で通りすがりの若い男性に暴行を受けそうになった。これは未遂に終わったが、当時筆者は学生新聞の記者だったため、新聞に自分の被害体験とカナダ映画『声なき叫び』のことを書いた。この映画は、レイプ被害者である女性の視点を初めて映像化したといわれる作品で、1979年にカンヌ映画祭で発表され国際的に注目を浴びた。82年に日本で自主上映され、ちょうど話題になっていたときだった。今思えば、これは自分にとっての初「#MeToo」だった。

そして今は……管理職として、福沢氏が指摘したようなことがないかあらためて自戒しつつ、性暴力・セクハラを容認しない社会づくりに貢献したいと思う。

麓幸子
 日経BP社執行役員。筑波大学卒業後、1984年日経BP社入社。2006年日経ウーマン編集長、12年同発行人。16年より現職。2014年、法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。筑波大学非常勤講師。内閣府調査研究企画委員、林野庁有識者委員、経団連21世紀政策研究所研究委員などを歴任。2児の母。著書に『仕事も私生活もなぜかうまくいく女性の習慣』『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(いずれも日経BP社)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。
マーケティング戦略研究所

日経BP総研マーケティング戦略研究所(http://bpmsi.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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