正月太りを無理なく解消! カロリー制限の小ワザ7選
会食や祝い事が続く年末年始は、いつもより食べ過ぎてしまいがち。休暇が終わり体重計に乗ってみたらビックリ!という人も多いだろう。では、短期間で太ってしまったとき、どうすれば無理なく体重を減らせるのか。大人のダイエット研究所代表で管理栄養士の岸村康代さんに手軽にできて効果的な「カロリーコントロールの小ワザ」を聞いた。
すぐにやせたい!と思っていても、ダイエットに焦りは禁物だ。基本的なことだが、体重を減らしたかったら、食事での摂取エネルギー(カロリー)を減らし、運動量や活動量といった消費エネルギーを増やすのが近道。ただし、早く結果を出そうと欠食などの無理な食事制限をすれば、大事な筋肉や骨量まで減らしてしまうことになり、基礎代謝が低下してリバウンドしやすい体になる。食事を抜くダイエットは、すぐに結果は出るかもしれないが、長い目で見れば逆効果なのだ。
そこで、ダイエットに入る前に、どれくらいのペースで体重を落とすのが無理のない範囲なのかを確認しておこう。岸村さんが教えてくれたポイントは次の通りだ。
●ダイエットの目標値を体重の5%未満にするとリバウンドしにくい
体重60kgの人の場合、1カ月に3kgまでの減量なら許容範囲。ただし、3kg落とそうと思うと(2)でも説明するが、1食につき240kcalずつ減らす必要があってかなりつらい。無理なくダイエットしたいなら1カ月1kg減のペースが岸村さんのお勧めだ。
●脂肪を1kg落とすには、およそ7200kcalの消費が必要
1日の食事での摂取エネルギーが1800kcalの人の場合、7200kcalは約4日間断食した分に相当するが、前述のように無理な食事制限はNG。1カ月で1kg減を目指すなら1日240kcal、1食につき80kcalずつ減らせばいい。1カ月で3kg減を目指すなら、1日に720kcal、毎食240kcal程度を減らしていく計算になる。ちなみに80kcalといえば、ご飯なら小さめの茶わん1/3杯、卵1個、ジャガイモ1個などが相当する。食事だけでなく、運動もプラスすれば消費エネルギーを増やすことができる。
1食当たり80kcal減にせよ240kcal減にせよ、「カロリー制限」というとつらくて長続きしにくいイメージがある。しかし、岸村さんによれば、工夫次第で無理なく実現できるという。
「今回はその具体的な『カロリーコントロール』法についての小ワザを中心に紹介しますが、これを軸に『代謝アップ』や糖の吸収を緩やかにする『吸収抑制』を意識することが、食べ方のカギとなります。また、短期間で太った場合、脂肪が増えただけでなく、むくみによる水分の蓄積が影響している可能性も。水分排出を促すカリウムなどの栄養素をしっかりとることも大切です」(岸村さん)
以上を念頭に、いよいよカロリーコントロールを無理なく実践するための小ワザを紹介する。まずは、できることからやってみよう。
【1】肉や魚は「部位」と「調理法」にこだわる
カロリー制限中であっても、肉や魚などのたんぱく質はしっかりとりたいところ。それでもしっかりカロリーコントロールするには、部位と調理法にこだわるのがポイント。
豚肉や牛肉ならロースではなくヒレ、鶏肉ならモモ肉よりムネ肉を。調理法では「揚げ物」は避け、迷ったら「生」(食材によっては生は食べられないが)か「焼き」「ゆで」「蒸し」料理を選ぼう。具体的には、唐揚げではなく焼き鳥、とんかつよりは赤身肉のステーキのほうがカロリーを抑えることができる。
【2】「野菜を2皿以上食べてから」をルールにする
食事の最初に野菜をたっぷり食べる「ベジタブルファースト」。血糖値の上昇を緩やかにして脂肪の蓄積を防ぐほか、食べ過ぎを防止する効果があるが、外食でも家食でも「野菜を2皿以上食べてから」をルールにするとダイエット効果がさらにアップする。生野菜を1皿、加熱した野菜料理を1皿という組み合わせでもいい。
「カロリーコントロールにつなげるには、食べる野菜の量をしっかり確保することも大切。2皿に分けるのが難しい場合は、1皿でもいいのでトータルで丼1杯くらいの量になるようイメージして、たっぷりの野菜をとりましょう」と岸村さん。
野菜の種類はどんなものでもOKだが、食物繊維が豊富な食材、例えばブロッコリーやゴボウ、納豆、大麦などを併せると、ベジタブルファースト効果がより高まるという。イモ、ニンジン、レンコンなどの根菜類には糖質が含まれるが、避ける必要はない。自然な甘みを感じられる分、満腹感も得られやすい。
・血糖値の上昇を防ぎ脂肪の蓄積を防ぐ
・かさがあるため食べ過ぎを防止する
・カロリーが低い
・カリウムを豊富に含むものが多い
【point】
カリウムが持つ水分排出を促す作用は、むくみや水太り解消に役立つ。カリウムは水に溶ける性質があるので、カリウムを含む野菜をとるときには生のままか汁物にして汁ごと食べると効率よくとれる。
◎試してみよう!「ソイ(大豆)ファースト」
ベジタブルファーストならぬ、「ソイ(大豆)ファースト」を取り入れるのもお勧めだ。食事の前に、豆乳を飲んだり、豆腐を食べるだけ。大豆たんぱくは、臨床試験で脂肪を燃焼する効果が高いという結果が出ており[注1]、ダイエットの強い味方になってくれる。
また、ご飯を控えたいときには、豆腐をご飯代わりにしておかずを食べるのも一案だ。満足感が得られ、かつ摂取エネルギーも抑えられる。糖質オフを実践している人は、肉などのメイン料理を多く食べ、脂質をとり過ぎる傾向にあるが、ソイファーストを行えば肉などの動物性食品の食べ過ぎも抑えられる。ショウガ焼きなどのご飯が進む味の濃いおかずを食べる場合にも、豆腐、もやし、千切りキャベツなどを主食代わりにすると、食べ過ぎも摂取エネルギーも両方を抑えることができて、一石二鳥だ。
【3】おかずはメイン1:野菜2の割合で1皿に盛る
ダイエットをするには、そもそも自分が食べている量をきちんと把握する必要がある。でないと、気付かないうちに食べ過ぎてしまうことも……。特に、大皿に盛った料理を各自で取り分けて食べる場合は、お替わりなどをするうちについ食べ過ぎてしまうので要注意だ。
こうしたことを防ぐには、「自分の食べる量を最初に決めて1つの皿に盛り、それだけを丁寧に食べるようにするのがいい」と岸村さん。その際、メインのおかずと野菜のおかずを1:2の割合で盛ると、食事全体のカロリーを抑えやすく、1食分の栄養バランスも自然と整いやすくなるという。
【4】早食い脱出! 目をつぶって食事を味わう
いつも時間に追われる生活で、早食いの習慣が染みついている人は、それこそが太る元凶だと自覚すべし。早食いは、血糖値の急上昇を招いたり(脂肪を蓄積しやすくする)、満足感が得られず食べ過ぎの原因にもなる。ダイエット中は、ゆっくり食べることを習慣にしよう。
「一口食べるごとに目をつぶって味わうと、自然と口の中に意識が向き、ゆっくり食べることや満足感を得ることにつながります。会食などでそれが難しい場合には、一口食べるごとに箸を置き、深い呼吸をすると同様の効果が期待できます」(岸村さん)
テレビやスマートフォン画面を見ながらの食事、そばや丼ものだけの食事なども早食いにつながりやすい。味わって食べることを意識しよう。
[注1]真鍋久.日本調理科学会誌 2005;38(2):204-208
最後に紹介するのは、朝や夜など、時間帯別に取り入れたい小ワザだ。
【5】朝食メニューに温かい汁物を加える
朝は一日の始まり。やせたいからと食事を抜くのは厳禁。体をきちんと目覚めさせ体温を上げるためにも、朝食をしっかりとろう。
「ダイエット中は、朝食に温かい汁物を取り入れて炭水化物をその分減らすと、カロリーコントロールがしやすいうえ、体温が上昇しやすく、エネルギー代謝を高める効果も期待できます。さらに具だくさんの汁物にすると、1杯で満足感も得られやすくなります。大豆たんぱくがとれる味噌汁もお勧め。ざっくりとした計算になりますが、おにぎり2個を食べていた人が、1個にしてもう1個分を汁物に置き換えるだけで、摂取カロリーを減らせます」(岸村さん)
【6】小腹がすいたら豆乳やトマトジュースを
食事と食事の間に小腹がすいたら、お菓子ではなく、豆乳やトマトジュースをチョイス。コーラなどの炭酸飲料が好きな人は、炭酸水などに置き換えよう。
【7】夕食は鍋のローテーションにする
夜は体が休息モードにシフトチェンジする時間帯。「夕食でしっかりカロリーコントロールをすると、ダイエット効果が一番出やすい」と岸村さん。最強メニューは「鍋」だ。
「夜に糖質過多の食事をとると太りやすくなるので、鍋で満足感をアップして糖質オフを目指しましょう。油を使わないため低カロリーなことと、野菜をたっぷり食べられるのもポイントです。また、温かい食べ物やたんぱく質は体温を上げ、エネルギー消費にも役立ちます。具材には豆腐や肉、魚などたんぱく質を多く含む食材を加え、野菜はそれらの2倍くらいの量をとることを意識しましょう」(岸村さん)
鍋の種類でお勧めなのは、摂取エネルギーを低く抑えられる水炊きや大豆たんぱく質がとれる豆乳鍋など。ダイエット中は、高カロリーにつながるシメのご飯に注意。くれぐれも最後のおじやは我慢しよう。
(ライター 及川夕子)
一般社団法人大人のダイエット研究所 代表理事。管理栄養士。病院やメタボリックシンドローム指導の現場でダイエットのサポートをしてきた経験や野菜ソムリエ上級プロなどの資格を生かし、商品開発、事業開発、講師、メディア出演など、多方面で活躍。大人のダイエット研究所では、忙しい大人が無理なく健康になるためのおいしくて体にいい食の推進を行っている。近著に『10日間でやせ体質に生まれ変わる野菜レシピ』(アスコム)。
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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