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タッカルビは、鶏肉と野菜を甘辛い味つけで炒めた韓国・春川の郷土料理。これがもとに、チーズタッカルビが生まれた

一般的なタッカルビは、鶏もも肉とタマネギ、キャベツ、サツマイモなどの野菜、トックと呼ばれる棒状の餅を炒め、韓国料理独特の唐辛子みそ「コチュジャン」をベースにしたタレで味つけする。こちらの店では、あらかじめ鶏肉を特製のタレに漬けて2日以上熟成させてから焼くのが特徴だ。

店には入口脇に料理を実演販売できる屋台のようなスペースがあった。姜さんはそのスペースでタッカルビを焼き、道行く人に試食してもらった。

「おいしかったらお店でどうぞ召し上がっていってください、ということで。その結果、人をお店に呼び込むことができ、次第にお店は満席になっていきました。ただ、行列するところまではいかない。2016年1月から3カ月ほど約2500人にサンプリングしたのですが、『おいしいけど、辛い』という声も多かった。そこで味をまろやかにするためにチーズを入れてみることにしたのです」

「市場タッカルビ」の店頭には実演販売できる屋台のようなスペースがあり、当初はここから道行く人に試食を呼びかけた

鉄板の両端にタッカルビを、真ん中にチーズを盛り付け、チーズが溶けたところで肉や野菜をチーズにからめて食べるようにした。ちょうど、パンや野菜をチーズにからめて食べるスイス料理の「チーズフォンデュ」のイメージである。

真っ赤なコチュジャンのタレがからまったタッカルビに黄色いチーズは見た目にも華やか。目の前の鉄板で焼いて食べるので、タッカルビやチーズが焼ける音や匂いで聴覚や嗅覚も刺激する。日本人の好みの辛さになり、味覚でも満足してもらえるようになった。しかし、「五感」のうちの「触覚」という点ではまだ課題が残されていた。

「最初は普通のナチュラルチーズを入れていました。するとチーズの伸びが足りないんですね。そこで、ちょっと原価は高くなるけれど、伸びがいいチェダーチーズとモッツァレラチーズに変えたんです。そして、屋台スペースのところで具にチーズをからめるところを実演したら、チーズが長く伸びるのをお客さんが見て『わーっ』と言って拍手してくれた。ちょうどインスタグラムが流行り始めたころでもあり、お客さんがチーズタッカルビの画像や映像をアップしてくれるようになりました。それを見た若い女性たちが次第にお店に来てくれるようになったんです」

チーズをつけて食べるという行為は「インスタ映え」するだけでなく、「触って楽しい」。姜さんが最初に思い描いていた「五感を刺激する、おいしくて楽しい料理」が完成したというわけだ。

私もさっそくチーズタッカルビをいただいてみることに。席で待っていると店員さんが鉄板を運んできてくれる。鉄板にタッカルビの土手、その中央にチーズの川が流れているかのような盛り付けがなされていて美しい。

鉄板の上に、タッカルビの土手にチーズの川が流れているかのような盛り付け。チーズはチェダーチーズとモッツァレラチーズを使用

卓上コンロに火をつけるとジューっという音とともにチーズと唐辛子ソースのいい香りが漂ってくる。こちらのお店ではタッカルビはすでに火が通った状態で運ばれてくるので、チーズが溶けたらすぐに食べられる。

姜さんに食べ方を指導いただき、鶏肉をチーズの海に転がすようにしてからめて食べてみた。鶏肉のうまみと、コチュジャンベースのタレの甘さと辛さ、これにチーズのクリーミーさが加わり、いろいろな味が口の中に広がる。「あとを引く」といった表現がピッタリで箸が止まらない。がっつりした味付けはビールに合う。

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