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チーズタッカルビ 新大久保発「韓流」の新たなブーム

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NIKKEI STYLE

2017年に女子高生の間でもっとも流行った食べ物をご存じだろうか。スイーツか何かと思いきや、答えは韓国料理の「チーズタッカルビ」。これは鶏肉と野菜を甘辛い味つけでいためた韓国・春川の郷土料理「タッカルビ」にチーズをトッピングしたもの。

女子中・高生の間で流行した言葉を決める「JCJK流行語大賞」(JCは女子中学生、 JKは女子高生の意)なるものがあり、その「モノ部門」で選ばれたのがこの料理だった。チーズタッカルビを求めて東京のコリアンタウン・新大久保に女子高生が大挙して訪れているという。ちなみに、2017年「今年の一皿」の急上昇ワード賞にも「チーズタッカルビ」が選ばれている。

実際にJR新大久保駅を降り立ってみると、平日の昼間だというのに街は人であふれていた。韓国ドラマ「冬のソナタ」がブームになった2004年ごろからこの街には韓流好きの女性が訪れるようになった。当時は年配の女性が多かったように思うが、いまは10~20歳代の女性が圧倒的に多い。通りにずらりと並ぶ韓国料理店がどの店も「チーズタッカルビ」の看板を大きく掲げていることにも驚く。

ブームの火付け役といわれる「市場(シジャン)タッカルビ」を訪れた。ランチタイムが終わるころだったが、店の前にはまだ10人ほどが行列していた。

「ランチでだいたい2時間、夜だと3時間待ちです。土日ですと4時間待ちのこともあります」というのは同店の姜光植さん。

今でこそ通りは人がいっぱいでどの店もにぎわっているが、実は2012年ごろから2016年前半にかけて新大久保の街は閑散としていたという。

「竹島問題をきっかけに嫌韓感情が高まり、客足が遠のいてしまったんです。新大久保駅の乗降客数も韓流ブームで盛り上がったころに比べると半分に。飲食店も半分くらいが撤退しましたね。ここもランチタイムには誰もお客さんが入らないような、赤字続きのお店でした」(姜さん)

姜さんはこれまで韓国の外食産業で長く働いており、この状態をテコ入れするため2015年の秋にこの店に入った。

「なぜお店に人が入らないのかを分析してみると、このあたりの韓国料理店はメニューも値段もほぼ一緒。味もそこそこ。これでは生き残れないと思いました。これをなんとかするには若い女性にもっと来ていただくこと。それには視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚の五感を開いてもらって、おいしい、楽しいお店にすることだと考えたんです」

具体的なメニューを考えるに当たり注目したのは店の倉庫に眠っていた大量の鉄板。韓国料理には網で焼くものや鍋料理などいろいろあるが、鉄板で焼けるものは限られている。そんなことから自然に決まったのが「タッカルビ」だった。

「タッ」とは韓国語で「鶏」、「カルビ」は「あばら骨」「骨付きあばら肉」のこと。実際にはあばら肉ではなく「もも肉」を使うことが多く、要するに「骨のまわりのおいしい鶏肉を食べる料理」ということになろうか。

一般的なタッカルビは、鶏もも肉とタマネギ、キャベツ、サツマイモなどの野菜、トックと呼ばれる棒状の餅を炒め、韓国料理独特の唐辛子みそ「コチュジャン」をベースにしたタレで味つけする。こちらの店では、あらかじめ鶏肉を特製のタレに漬けて2日以上熟成させてから焼くのが特徴だ。

店には入口脇に料理を実演販売できる屋台のようなスペースがあった。姜さんはそのスペースでタッカルビを焼き、道行く人に試食してもらった。

「おいしかったらお店でどうぞ召し上がっていってください、ということで。その結果、人をお店に呼び込むことができ、次第にお店は満席になっていきました。ただ、行列するところまではいかない。2016年1月から3カ月ほど約2500人にサンプリングしたのですが、『おいしいけど、辛い』という声も多かった。そこで味をまろやかにするためにチーズを入れてみることにしたのです」

鉄板の両端にタッカルビを、真ん中にチーズを盛り付け、チーズが溶けたところで肉や野菜をチーズにからめて食べるようにした。ちょうど、パンや野菜をチーズにからめて食べるスイス料理の「チーズフォンデュ」のイメージである。

真っ赤なコチュジャンのタレがからまったタッカルビに黄色いチーズは見た目にも華やか。目の前の鉄板で焼いて食べるので、タッカルビやチーズが焼ける音や匂いで聴覚や嗅覚も刺激する。日本人の好みの辛さになり、味覚でも満足してもらえるようになった。しかし、「五感」のうちの「触覚」という点ではまだ課題が残されていた。

「最初は普通のナチュラルチーズを入れていました。するとチーズの伸びが足りないんですね。そこで、ちょっと原価は高くなるけれど、伸びがいいチェダーチーズとモッツァレラチーズに変えたんです。そして、屋台スペースのところで具にチーズをからめるところを実演したら、チーズが長く伸びるのをお客さんが見て『わーっ』と言って拍手してくれた。ちょうどインスタグラムが流行り始めたころでもあり、お客さんがチーズタッカルビの画像や映像をアップしてくれるようになりました。それを見た若い女性たちが次第にお店に来てくれるようになったんです」

チーズをつけて食べるという行為は「インスタ映え」するだけでなく、「触って楽しい」。姜さんが最初に思い描いていた「五感を刺激する、おいしくて楽しい料理」が完成したというわけだ。

私もさっそくチーズタッカルビをいただいてみることに。席で待っていると店員さんが鉄板を運んできてくれる。鉄板にタッカルビの土手、その中央にチーズの川が流れているかのような盛り付けがなされていて美しい。

卓上コンロに火をつけるとジューっという音とともにチーズと唐辛子ソースのいい香りが漂ってくる。こちらのお店ではタッカルビはすでに火が通った状態で運ばれてくるので、チーズが溶けたらすぐに食べられる。

姜さんに食べ方を指導いただき、鶏肉をチーズの海に転がすようにしてからめて食べてみた。鶏肉のうまみと、コチュジャンベースのタレの甘さと辛さ、これにチーズのクリーミーさが加わり、いろいろな味が口の中に広がる。「あとを引く」といった表現がピッタリで箸が止まらない。がっつりした味付けはビールに合う。

鶏肉と一緒にいためてあるさつまいもは辛いなかにもホッとする味で、「いも・栗・なんきん(かぼちゃ)」が好きといわれる女性に喜ばれそう。

試しにチーズをつけずに食べてみたが、これはこれでさわやかなスパイシーさが引き立っておいしかった。

姜さんに「チーズのおこげがまたおいしいんですよ」と勧められて、鉄板にくっついたチーズをいただく。ちょっとカリカリになったおせんべいのようなチーズが香ばしくておいしい。

しかし、おいしいからといって全部を平らげてはいけない。ここはグッとこらえてタッカルビを少し残しておくのが流儀。店員さんにご飯を頼むとシメのポックンパプ(チャーハン)をつくってくれる。鶏肉のおいしいエキスとコチュジャンベースのタレを吸ったご飯がまたおいしいこと! トッピングの韓国のりとの相性がバツグンであった。

このようにチーズタッカルビは、そのまま食べる、チーズにつけて食べる、おこげを食べる、チャーハンでシメるという4つの楽しみ方がある(シメは焼きうどんにする人もいる)。まさに「おいしい、楽しい」で、ボリュームもある。これは女子高生に人気になるのも納得である。というか、女子高生だけのブームにしておくのはもったいない。

さて、姜さんの話に戻ろう。

「2016年の秋になると店に行列ができるようになり、それからまわりの韓国料理店も1日ごとにチーズタッカルビの看板を掲げる店が増えてきました。私は地域が盛り上がればいいという思いで、そういうお店にもエールを送ってきました。お客さまもよそのお店でチーズタッカルビを食べたら、元祖の味も食べたくなって私たちの店も訪れてくれるだろう。それに私たちはここにたどりつくまでに1年間研究している、という自信もありましたから」

2017年には新大久保の街も活気を取り戻してきた。半分にまで落ち込んだ新大久保駅の乗降客数も韓流ブームのころと同じか、それ以上にまで回復した。

実は本場・韓国でも近年、チーズタッカルビがブームである。韓国では、トゥンカルビという豚の骨付カルビをチーズにつけて食べたり、辛いラーメンにチーズをトッピングしたり、もともと辛い料理にチーズを合わせる傾向があった。

日本のチーズタッカルビブームは韓国のブームが日本に飛び火したと考える人もいるが、前述のような流れから生まれたもの。新大久保のチーズタッカルビブームはあくまでも新大久保で生まれたものだと姜さんは言う。

「私のことをよく『チーズタッカルビの産みの親』と言ってくださるんですが、たくさんの人に試食してもらってコミュニケーションをとりながらつくり上げたもの。お客さんや地域の人々みんなでつくった味ですね」

新大久保の街が元気になってきたのは「TWICE」など、新しいK-POPアイドルの台頭もあるかもしれないが、チーズタッカルビの影響もかなり大きい。食のブームは外交の事情を超え、地域の経済を盛り上げる。食のパワーって偉大だ。

(ライター 柏木珠希)

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