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カリスマの直言

維新150年 節目を「つみたて元年」に(渋沢健) コモンズ投信会長

2018/1/1

維新の立役者、西郷隆盛の像=PIXTA
「2018年も創造的破壊から新しい常識が生まれてくる予感がする」

明治維新から150年の節目に当たる2018年が明けた。17年は政治や地政学リスクを払いのけ、世界の多くの株式市場や個別企業の株価は史上最高値を更新した。その原動力の一つは人工知能(AI)などテクノロジーの発展だった。

維新とは「維(こ)れ新(あらた)なり」の意味だ。つまり、全てが改まって新しくなることである。18年もディスラプション(創造的破壊)から新しい常識が生まれてくる予感がする。

AIなどの発達が様々な領域で変化をもたらすことは間違いない。その一つが銀行業界だ。マイナス金利政策による利ざや縮小やIT(情報技術)による効率化を背景に、メガバンクは経営統合以来のリストラに乗り出している。

■全国規模での「銀行維新」が始まる

18年は全国規模での「銀行維新」の始まりを告げる年になるだろう。最大の課題はオーバーバンキング(銀行過剰)の解消だ。メガバンクは20年前の金融危機を経て、現在では3行に集約された。一方、地域金融機関はいまだに地銀、第二地銀、信金、信組、JAバンクなど各地で重複した構造になっている。

地域金融機関では経営統合などの動きが既に始まっている。ただし、金融機関を束ねるだけでは図体が大きくなるだけで、真の変化は期待できない。「銀行維新」にとって重要なのはマインドをリセットし、新しい経営を目指すことである。

2017年12月初旬にインドのムンバイで、約700名の有識者が参加する「Sankalp Global Summit」で社会的インパクト投資について基調講演した。聴衆に渋沢栄一の「論語と算盤」を披露した

再編の大波が押し寄せてきた際に、今までの前例にとらわれている金融機関と、これからの時代変革の潮流をきちんと読み取って行動を起こせる金融機関の違いは大きなものになるであろう。

大都市一極集中や高齢少子化の進展により、地元で集めた預金を同じ圏内で貸し出すビジネスモデルが機能しにくくなっている。預金が貸し出しだけで消化できず、その分が国債への投資に回っているのが基本的な構造だ。

ただ、期待できる点もある。日本の家計が保有する現預金は943兆円(17年9月末)に上る。日本全国の家計の多くの部分を預かっているのが地域金融機関だ。お金は資源である。つまり、地方の金融機関には新たな成長の可能性があるのだ。

■注目されるつみたてNISAのスタート

そこで注目されるのが18年からスタートした積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)だ。積み立て投資する場合に年間40万円を上限として最長20年間、運用益や分配金に対する約20%の税金が非課税となるという画期的な内容である。つまり、地域金融機関にとってはコツコツと地域の顧客の資産形成を手助けするビジネスだ。これこそが新たなビジネスチャンスといえよう。

「微々たる収入しかないが、国策だから」と仕方なくつみたてNISAに取り組む金融機関と、積極的に取り組む金融機関の差は20年後には歴然としているに違いない。

ここで、銀行の原点を少し振り返ってみよう。日本初の銀行が設立されたのは明治維新から6年を経た1873年だ。当時、スタートアップのベンチャー企業にすぎなかった銀行の存在感を示すために、渋沢栄一は「第一国立銀行株主募集布告」で訴えた。

「銀行は大きな河のようなものだ。銀行に集まってこない金は、溝にたまっている水やポタポタ垂れている滴と変わりない。(そんな状況では)折角人を利し国を富ませる能力があっても、その効果はあらわれない」。滴のような少額資金を毎月積み重ねて大河をつくることは、銀行の原点回帰を促すことにもつながるであろう。

実は先日、弊社コモンズ投信は兵庫県の男性からつみたてNISAの口座の申し込みをいただいた。お年は92歳。息子に勧めたら、自分もやりたくなったのだという。

■人生100年時代の投資を実践

弊社において最高齢の利用者は富山県の95歳の男性だ。91歳のときから積み立て投資を開始されている。投資目的は「長期的資産形成」だという。人生100年時代の投資を実践されている素晴らしい方々だと思っている。

コモンズ投信の直接販売の顧客年齢分布を地域金融機関に見せると必ず関心を示してくれる。彼らの顧客年齢分布と全く異なるからだ

弊社で口座開設していただく方の年齢分布は40歳代が一番多い。次に50歳代と未成年がほぼ同じ、そして30歳代となる。我々が提案する「今日よりもよい明日」を目指す長期投資は、現役世代と彼らの子どもたちへの積み立て投資だけではなく、未来志向のシニア層にも浸透している。これは高齢層に偏る地域金融機関の顧客構造とは全く異なる。

大河をつくるのは未来志向という使命感、そして、ワクワク感がある。弊社も地域金融機関とともに未来志向のビジネスを目指したい。維新150年を、日本に積み立て投資が本格的に普及する「つみたて元年」にしたいと思う。

渋沢健
コモンズ投信会長。1961年生まれ。83年米テキサス大工学部卒。87年カリフォルニア大学ロサンゼルス校MBA経営大学院卒。JPモルガンなどを経て、2001年に独立し、07年コモンズ株式会社(現コモンズ投信)を創業、08年会長就任。著書に『渋沢栄一 100の金言』(日経ビジネス人文庫、2016年)など。

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