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奇跡の乗り物スーパーカブ 実用の美、磨き続けて60年

ロングライフデザインの秘密(中)

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NIKKEI STYLE

日経デザイン

「ロングセラーはデザインの良さだけでなく、作り手側の商品に対する愛、ストーリーこそが大切」と語るのはロングライフデザイン活動家のナガオカケンメイ氏。第1回のカルピスに続き1958年の発売以来60年の歴史を持つホンダのスーパーカブを取り上げる。

ナガオカケンメイの目

創業者の想いを受け継ぐ。簡単なことではありませんが、ホンダには創業者の本田宗一郎さんと藤沢武夫さんの傑作が今も改良を重ね、唯一の商品として存在しています。それが「スーパーカブ」です。この商品を作り、売るということは、2人の想いに触れることと一緒。その想いがホンダの社内から販売店、そして海外へ広がり、多くのファンの心を1つにしていると言えます。ロングライフデザイン商品の共通点は開発者の熱い想い。ホンダというブランド全体を見ても、やはりスーパーカブから伝わってくる創業者の想いで形作られていると感じます。

老舗の多い京都の商売の原則は「あつらえ」。つまり、架空のターゲット設定で商品開発するのではない「あの人のため」に作る。スーパーカブにも「おそばやさん」という具体的なターゲットがあり、当時のカタログにも出てきます。業務用としての性能を意識していった結果、郵便局員の販売車として採用。その過酷な使用にしっかり付き合っていくことでますます性能を高め、最初は市販品と郵便局仕様を分けていたそうですが、今はほとんど市販品と差はないとのこと。業務用の強さと用の美とも言えるデザインは、民芸の思想に似た美さえ感じられます。すごいことです。

大ヒットの裏にはユニークな販売網作りもありました。材木商や乾物屋などバイク販売の経験のない店の軒先を借りたのです。要するに、専門的なメンテナンスや設備にあまり頼らなくてもいいように作られた完成度のずば抜けて高いバイクと言えます。通常のバイクの発想をとことん超えて発想していったのでしょう。その頃ではおおよそ考えられないくらいの斬新な発想だったでしょう。

スーパーカブは商品が常に少しでも良くなるよう、改良を繰り返しています。コクヨのキャンパスノートの開発と同じで、モデルチェンジの時期が決まっていない。新型を売りに「何代目」的に打ち出すことはせず、とにかく時代が求めればすぐに改良をしていく。そして荷物の積み下ろしがしやすい高さを守る。そうして作られていました。

ロングライフデザインを持つ企業には共通して「会社の創業の想い」を、関わるすべての人たちと共有する工夫があります。カップヌードルの日清にある発明記念館のようにです。創業者の発案した未来を見据えた素晴らしい製品に改良を続ける様子は、ホンダという企業作りそのものだと思いました。

ナガオカケンメイ
 デザイン活動家。時代を越えて長く続くロングライフデザインの研究所「D&DESIGN」(http://danddesign.co)を主宰。D&DEPARTMENTデザインディレクター。

以下では「つくる」「売る」「流行」「つづく」の4つの観点からスーパーカブのロングセラーの秘密を解き明かす。

つくる:庶民のための新しい乗り物

スーパーカブは、顧客の使い勝手を最優先に考えて作られた製品だ。当時の小型バイクは壊れやすく、燃費も悪かった。そこで、それまで50ccバイクで採用していたエンジンや部品を見直し、スーパーカブのためにゼロから開発した。ターゲットも男性だけでなく「女性を含めた庶民」と設定。スクーターでもバイクでもない「新しい乗り物」を作るという意気込みで取り組んだという。

スーパーカブの造形的な特徴の一つ、フロントカバー「レッグシールド」に、バイクの部品としては初めてポリエチレン樹脂を採用した。積水化学工業と共同で技術開発から取り組んだ。レッグシールドは、エンジンを隠す役割もある。「エンジンがむき出しだと怖い」という女性の意見を反映し、またぎやすく、風よけにもなる独特な形状が生まれた。

手を使わずに足だけでギアチェンジができる自動遠心クラッチも、「クラッチ操作は難しそう」というイメージを払拭するために考案した。イメージは「そば屋の出前がおかもちを持って片手で楽に運転できる」というもの。セミオートマなので、バイクに初めて乗る人でも短時間で運転に慣れる。開発期間は約1年8カ月。藤沢氏は、モックアップができた時点でヒットを確信。工場の土地を購入し、増産できる体制を整えていたという。

売る:ホンダ直結、自前の販売網を整備

初代スーパーカブの価格は、5万5000円。小学校の教員の初任給が9000円という時代で、決して安価ではなかった。だが、世の中の景気が上向いていたこともあり、大ヒットした。当時、日本中のオートバイメーカーの合計販売数が月4万台程度だったが、スーパーカブは発売されると月3万台売れたという。驚異的な売れ行きだったことが分かる。翌1959年は、年間16万台以上を販売した。1960年は56万台生産している。

スーパーカブの人気に伴い、競合他社から類似したバイクが売り出された。それらは「○○(メーカー名)のカブ」と呼ばれたが、今でも販売を続けているのはスーパーカブのみだ。スーパーカブが生き残ることができた理由の一つは、自前の販売網があったからだという。ホンダは、アフターサービスをできるように、各地域ですでに事業基盤を持っている人たちにスーパーカブを販売してもらおうと考えた。藤沢氏は、これまでモーターサイクルにも自転車にも関係のない、材木商や乾物店といった異業種の人たちにも参加を呼びかけたという。

国内で発売した翌年には、米国に進出。国内のモデルをベースにして米国仕様のスーパーカブを発売した。大々的な広告キャンペーンを展開し、話題になったという。カラフルなイラストによる広告を米国の一般誌に掲載し、大排気量のバイクが主流だった時代に、実用性に優れた小型バイクの価値と魅力を提示。その結果、全米でホンダブランドを印象づけることができたという。現在、スーパーカブは世界15カ国で生産されており、これまで延べ160カ国・地域で販売している。

流行:ビジネスバイクのカスタマイズを一緒に楽しむ

実用性に優れたスーパーカブは、ビジネスバイクとして定着した。その一方で、1990年代になると、スーパーカブをカスタマイズして「普段使い」する若者が登場。ホンダはこうした流行の兆しをキャッチし、すぐにオリジナルシートやレッグシールド、ミニキャリアなど純正カスタマイズパーツを開発。子会社のホンダアクセスで「カブラ」と名付けて発売したところ、売れ行きを伸ばした。すると、パーツメーカー各社も追随。独自にスーパーカブ用のパーツを開発して販売するようになり、カスタマイズが定番化した。

ファンと交流する場づくりも行った。東京・青山の本社では、1997年から「カフェカブミーティング」というイベントを毎年開催。今も継続しているファンの集いだ。その派生イベントが京都や熊本でも開催されている。ユーザーが自分でカスタマイズしたバイクを見せ合う場にもなっているという。

スーパーカブのサイズは、交通法規の改定に伴い、発売当初と比べると若干サイズアップしている。そのため、長年乗り続けている人が新車を購入すると「大きくなった」と感じることがあるという。そこで開発したのが「リトルカブ」だ。足着きが良くなるように、タイヤのサイズを17インチから14インチに変更し、シートも低めに設計。当初、想定していたターゲットは、長年乗り続けている年配のユーザーと若い世代。カラフルなボディーカラーも若者に好評だという。

つづく:次世代のスーパーカブの在り方を模索し続ける

スーパーカブは、現在50ccと110ccの2種類がある。発売以来、マイナーチェンジを繰り返しているが、デザインや構造などの基本パッケージはほとんど変えていない。2014年には、スーパーカブの形状が「立体商標」として特許庁に登録された。乗り物自体の形状が立体商標登録されるのは日本初。極めて珍しい事例だという。

一方で、将来を見据えたモデル開発にも挑戦している。1993年の東京モーターショーにコンセプトモデルとして出品した「シティカブ」は、スーパーカブの原点に立ち返りつつ、ホンダの先進テクノロジーを搭載したパーソナルコミューターを目指したという。デザインを手掛けたのは、本田技術研究所二輪R&Dセンター、デザイン開発室の川和聡・室長だ。ビジネス色が濃かったスーパーカブの世界観を大きく変えるきっかけとなったという。スタイリッシュに仕上げられているが、スーパーカブだと分かる。商品化に至らなかったのは「コストの壁を越えられなかったから」と川和室長。高級ラインとして発売せず、開発時に掲げた「庶民のためのバイク」というスーパーカブのコンセプトを守った。

2009年の東京モーターショーでは、電動のスーパーカブ「EV-Cub」を出品。その後も改良を重ね、継続的に東京モーターショーで発表している。

ロングライフデザインの秘密
上 水玉模様で95年 カルピスの思い、時代超えて継承
中 奇跡の乗り物スーパーカブ 実用の美、磨き続けて60年
下 一澤信三郎帆布 「時代遅れ」貫き、ファンが急増

(日経デザイン 西山薫)

[日経トレンディ2017年12月号の記事を再構成]

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