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天童木工の加藤昌宏社長

天童木工の加藤昌宏社長

山形県天童市の家具メーカー、天童木工。映画『シン・ゴジラ』で重要な意思決定を見守った執務机もここで生まれた。国内外で高く評価を受けている技術力の源泉は「挑戦心」。木製家具業界全体が逆風にさらされているなか、突破口はあるのだろうか。スギを使った家具の製造に乗り出した戦略的狙いを、加藤昌宏社長に聞いた。

ビジネスとしてはまったくの未知数だった

――常識破りともいえる、スギを使った成形合板の家具が各地から引っ張りだこのようですね。開発した西塚直臣常務から、実用化にあたってはスギをロールプレスする機械やスライサーなどを導入する必要があったと聞きました。初期投資額はいくらかかったのでしょうか。

「初年度に導入した機械は3台で、合わせて億単位の費用がかかりました。機械がなければスギを家具材として使うことはできませんから、しかたがない。投資しなければ、スギはスギのままで終わり、それ以上の付加価値は出ません。伐採が進まず荒れ放題の山をなんとかするためには入れざるを得ないと判断しました」

――ビジネスとして成立する目算はあったのでしょうか。

「全くの未知数でした。なにしろ、ほかがやっていないことをやるわけですから。針葉樹を使って家具を作ることは、たとえ思いついたとしても、やり方がわからない。弊社の西塚がそこに挑戦した。その気持ちを大事にしたいと思いましたし、挑戦するところに天童木工らしさが生まれるだろう、と」

「創業の頃からある社是には『全従業員の福利増進を期する』『我が国家具工業の先達となることを期する』『資本労働の融合一体を経営の基本とする』と書かれています。なかでも私が一番好きなのは、2番目の『我が国家具工業の先達となることを期する』です。ものづくり企業としての基本はここ。それが、スギの圧密加工に挑戦することへとつながっている」

「いつの時代も、どんな場面でも、天童木工らしさというのは大事にしなければならないと思っています。図面通りに作ったからよしではないんです。正確なだけではいい製品とはいえない。椅子であればいかにかけ心地がよく、お客さんに喜んでいただけるかを考える」

「公共施設に関しては建築家からの依頼も多いですが、その場合も言われるがまま作るのではなく、『こんなこともできます』『あんなこともできます』と、こちらから提案させていただく。先生方から刺激を受けることもあれば、こちらからの技術提案がヒントになり、いいデザインが生まれることもあります。技術とデザインはどちらが勝ってもだめで、互いにせめぎ合うから美しいものができるんです」

「どんなに難しい案件を振られても、『できません』と言わないのが弊社のポリシー。だからこそ、一流の建築家やデザイナーさんが依頼してくださる。『できない』と言ったら、ものづくりは終わりです」

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