ポルカドットスティングレイ 仕掛け満載ダンスロック
4人組バンドのポルカドットスティングレイがアルバム「全知全能」でメジャーデビューを果たした。紅一点の雫(ギター&ボーカル)の艶のある歌声に、突き刺すようなギターとメロディアスなベース、タイトなドラムが生み出す、中毒性のあるダンスロックが特徴だ。音楽性とともに、リスナーを引きつける仕掛けを随所に取り入れるセルフプロデュース力の強さに注目が集まっている。
ポルカドットスティングレイは雫がツイッターで募集したメンバーと2015年に結成した。インディーズ時代から楽曲、ミュージックビデオ、SNS展開まで自ら手掛けることにこだわる。雫は「さわって! ぐでたま」などのスマートフォンゲームを世に送り出してきたゲームディレクターでもあり、マーケティング視点からリスナーの満足度を上げることを常に意識しているという。
デビューアルバムに収録する、軽快なギターリフのループが高揚感を生み出す「テレキャスター・ストライプ」について雫は「4つ打ちの楽曲は単調になりがちなのでラストに2度目のギターソロを入れることで転調しました」と解説する。
同曲ではミュージックビデオの監督も雫が自ら務め「最後まで飽きずに見てもらえるようにシャツ姿から浴衣になるなど自分の衣装を複数パターン変えています」(雫、以下同)。その結果、YouTubeでの再生回数は800万回を超えている(17年12月中旬時点)。
SNSの活用法も戦略的だ。収録曲の「エレクトリック・パブリック」のミュージックビデオでは、スマホの画面がアップになるシーンで「#正義と踊れ」と「#(ハッシュタグ)」付きの文字を入れた。「事前に同じ言葉をツイッターでつぶやいておき、ビデオが公開された時点で話題になる仕掛けにしました」
自己紹介の意味合いのあるメジャーデビューアルバムでは幅広い層へのアピールを意識した。「極楽灯」はこれまで取り組まなかった恋愛バラードだ。「音楽性の幅を見せるためにヒットソングの定番の恋愛バラードは絶対に必要だと思ったんです」と熱を込める。
ただテーマ設定には苦労したそうで、ツイッターで「どんなシチュエーションの恋愛ソングが好き?」と募り、リクエストの多かった夢見がちな女子を主人公にした曲を作り上げたそうだ。
また入り口を増やすために高野勲にはキーボード、クリープハイプの長谷川カオナシにはバイオリン、ヤバイTシャツ屋さんにはガヤ(にぎやかし)で参加を積極的に依頼し、複数曲でのコラボレーションを実現した。今作でもセルフプロデュース力を発揮しているだけに、今後の新たな仕掛けが楽しみだ。
(「日経エンタテインメント」12月号の記事を再構成。文/中桐基善)
[日経MJ2017年12月22日付]
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