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おせち、作りますか買いますか そもそも食べない3割

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NIKKEI STYLE

「12月に入ると、どこのデパートでもおせちの注文受け付けを始める」

片付け中、ふと手に取った30年前の雑誌の一文を読み、私は「ひょえっ!」と変な声をあげた。おせちを買わない人には、これの何がおかしいのかわからないかもしれない。だがおせちを買ったことがある人は、違和感に気づくのではないだろうか。

問題は「12月に入ると」という箇所だ。実は現代のおせち商戦は、そんなのんびりしたものではない。早いところでは9月、遅くとも10月に入れば立派なカタログを店頭に置き、予約を受け付け始める。「12月に入る」なんてころには人気商品から売り切れ続出、月半ばにはもう予約を締め切ってしまう店もある。

ウェブでも受け付けているが、ほとんどのデパートはおせちを予約するためだけの特設会場を設け、多くの人員を配置する。特設会場が開く初日には、整理券を出すデパートもあるほどだ。人気のシェフや、名の知れた名店のおせちともなると、ほとんどが「限定50セット」などの狭き門。手に入る気がこれっぽっちもしないが、それでもなんとかならないかと奔走する。それが現代のおせち狂想曲だ。30年の間に、おせちの世界は出足がずっと早くなってしまった。

「おせち」とは「御節供(おせちく)」の略である。もともと五節句である1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日に作る料理のことはみんな、御節供と呼ばれていた。今でもひな祭りや端午の節句、七夕などにごちそうを作ることがあるが、やはり正月のスペシャル感はダントツだ。それで正月の料理にだけ「おせち」ということばが残ったのだろう。

神事と関わりの深い料理であったせいか、おせちはゲン担ぎのダジャレだらけで構成されている。昆布巻きはよろコンブ、マメに生きるための黒豆、クワイはメが出ますように、数の子は子孫繁栄、レンコンの穴は将来を見通せるように、腰の曲がったエビは長寿を祈念して……と、食べ物にこれでもかと縁起をテンコ盛る。

ところがうちの実家のおせちには、ゲン担ぎの料理はあまりみられなかった。むしろ「まだクリスマス気分ですか?」とそしられそうな、洋風で、肉たっぷりの単なるパーティー料理だったのだ。祖父母も親族も遠くにいる核家族ゆえ、記憶の中の伝統を再現しようとしてもできなかったのだろう。

それに加え父母も若かった。若い夫婦には古臭い煮しめより、洋風の肉料理の方がうれしいものだ。うるさいことをいう上の世代はいない。母は料理が下手。となれば「やりたいようにやっちゃえ」とはじけてしまうのも無理はない。私の幼いころ、おせちといえばミートボールだった。実家のおせちに典型的なアイテムが取り入れられるようになったのは、父母が中年になってからのことだ。

ところで、世間の人たちはどんなおせちを食べているのだろうか。まずは「おせちを作るか、買うか。そもそも食べないか」について、ツイッターで尋ねてみた。さらに「何をどんなふうに食べるのか」を個別に返信していただいた。

面白かったのは「おせちは食べない」とした人の割合が、投票を始めた当初も、12時間後も、3日後も、最後までずっと3割をキープしていたことだ。

ツイッターでの調査はリツイートされることによって拡散するが、そのリツイートした人がどういう人かで、投票してくれる人のクラスターはガラッと変わる。つまり、私をフォローしているような料理好きクラスターだけでなく、そこから離れ、模型が趣味の人たちを回っているときも、ジャニーズファンも、数学マニアも、文学の人も、どこのクラスターかいわいを回ろうとも結果は同じだった。常に3割は「食べない派」だったのだ。これはもう趣味や仕事、出自にかかわらず「今や日本人の3割はおせちを食べない」ということなのだろう。

おせちを食べない理由は、ほぼ同じ。「味が嫌い」だからだ。

「作るのは手間だし、買えば高い。それなのに誰も食べない。ムダの極み」「毎年嫌いなものから少しずつ減らしていったらついに去年、ゼロになった。スッキリした」「おせちは子供のころから嫌いだった。大人だからもう食べなくていいのがうれしい」と、断捨離の喜びに満ちた声が多く寄せられた。

一方「でもおせちやめるなんて自分だけかと思っていたから、仲間がいっぱいいてうれしい」という安堵の声もあった。伝統っぽいことを中止するには勇気がいる。たとえそれが家の中だけのことでも。「食べない派」の皆さん、2018年からは堂々と胸を張って生きてほしい。

「典型的なおせちの味は確かに苦手だが、それでも並べたい」という人たちもいる。

「家族も、自分ですらも食べないのに、つい田作りを作ってしまう」「どうせ3日後に捨てるのはわかってるが、それでもひととおり用意する」「家族全員嫌いなのに、だて巻きがないと正月らしさが出ないから買う。そして今年も誰も食べない」と、捨てる辛さより正月らしさを優先する一派だ。それほどのものなのだ、正月とは。

子供がいて、両親がいて、祖父母がまだ若い。このパターンが一番おせちを手作りしている。「孫のために作る。年末の匂いとか記憶を残したいのかも」「おばあちゃんのおせちは世界一、と孫がいうとうれしそう」「子供におせちってこういうものだよと教えてあげたい」と、次世代に何かを伝えたい気持ちが伝わってくる。また「売ってるものより家族の好みの味にできる」という、現実的なメリットもある。

一人暮らしや、夫婦や親子二人だけだと、ぐっと「買う派」が増えてくる。「小さなおせちを買ってくる」「単品でいくつか買って、家でお雑煮だけ作る」など、おせちは少人数分作るのには向いてないという意見が多い。

「この一品!」に執着する向きもある。

「だて巻き、だて巻き、だて巻き!」「他はどうでもいいけど栗きんとんだけは大量に食べないと、年が明けない」「酢ダコさえあれば年末年始OK」「チョロギはこの時期だけの美味」など、どうやらおせち以外ではあまり出合わないレアアイテムほど、執着されるようだ。また料理ではないが「とにかくお重が好き。買ったものでもお重に詰める」という人もいる。

今回のアンケートでは「正月肉」の存在も大きかった。多くの家に「我が家の正月に欠かせない肉料理」があり、「他はすべて買うけど肉料理だけは作る」というような家も珍しくなかったのだ。それも焼き豚、ローストビーフ、焼き肉、豚の角煮、酢豚、唐揚げ、とんかつ……と種類も豊富。日本の正月は、本当は肉に支えられているのかもしれない。

そして相変わらず、個人的に特化した「お正月マイルール」が面白い。「ごちそうはいらない。あえて普通にご飯を炊き、納豆とか食べている」という平常心の人。「三が日は全部回転寿司にいく」という寿司好き。「隣の島までブリの切り身を買いに行くため、人数は正確に把握せねばならん」という離島の人。もっとも憎たらしかったのは「おせち食べなくても北海道には他に食べるものがある。カニとか刺し身とかカニとか筋子とかあとカニとか」という、北から目線だった。くやしい。

膨大なアンケートの中、私には「正月にがっかりしたくない」という言葉がたいそう響いた。本当にその通りだ。新しい年の初めから、わざわざがっかりすることはないのだ。おせちが嫌いならやめればいい。好きなら食べればいい。作ってもいい。買ってもいい。正月くらい、好きなものを好きに食べればいい。正月の自分をがっかりさせないもの、それが本当のおせちだ。さあ、2018年は何を食べようか。

(食ライター じろまるいずみ)

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