ライフコラム

マーケ戦略研「Think!」

子どもの近視に予防の可能性 外遊び2時間で発症減

日経BP総研マーケティング戦略研究所

2018/1/15

パソコンなどから発せられるブルーライトをカットするメガネレンズをヒットさせたJINS(ジンズ)は、2017年7月にバイオレット・ライトを通過させる「JINS こどもレンズ」を発売した。通常の同社の子どもレンズでは、バイオレット・ライトを96%カットしてしまうが、バイオレット・ライト対応のレンズは、バイオレット・ライトを65%通過させ、かつ、紫外線は92%、ブルーライトは15%カットする。

JINS(ジンズ)は、バイオレット・ライトについてわかりやすく説明するパンフレットやサイトを作成。バイオレット・ライトを65%通す「JINS こどもレンズ」を使ったメガネの販売を開始した

通常のレンズのメガネなら5000円程度から買えるのに対し、バイオレット・ライト対応レンズは1万5000円と高めで、フレームも合わせるとメガネの価格は2万円からとなるため、価格面で強い同社の特徴が出にくくなる。しかし、「テレビやネットで情報を知ったお母さんたちが、探して買いに来る。客層は都市型、高所得者と想定していたが、蓋を開けてみると地方を含める全国で売れており、特別、高所得者層に限られていないことがわかった」とジンズ広報部の渡辺里実さん。

同社は17年4月から子どものメガネフレームも拡充させるなど、子ども市場を育てる展開を始めており、同年11月の子どものメガネ販売本数は前年比152%だった。

一度近視になると治せず、進行を遅らせるしかない。「親御さんたちは多少価格が高めでも、子どものために少しでも良いと思えることはしようとする傾向が強い」と渡辺さんは話す。

■食べる近視対策は「クロセチン」に期待

バイオレット・ライトの有効性の検証と並行して、バイオレット・ライトを浴びたのと同様の効果を発揮する食品成分の研究も始まっている。期待の成分の名前は「クロセチン」だ。

クロセチンはクチナシの実に含まれる黄色の色素で、抗酸化作用を持つカロテノイドの一種。目の疲れや、ピント調節機能を整える機能性表示食品の成分として受理されているほか、肌のシミやくすみの軽減にも有用と考えられている。

このクロセチンは、数多くの抗酸化成分の中でも、近視抑制に関与すると考えられているEGR1という遺伝子の発現量を高める作用が強いことが分かったため、近視の抑制に役立つのではないかと期待されているのだ。

慶応大学医学部眼科教室の近視研究チームは、近視のマウスを使った試験で、クロセチンを含むエサを3週間食べ続けたマウスが、食べなかったマウスに比べ、眼軸長の伸びが抑えられていたとの研究成果を17年9月に英国バーミンガムで開催された国際近視学会で発表。また、国内では10月に開催された日本臨床眼科学会でも紹介した。同チームはさらに研究を進めてゆく予定だという。

子どもの目を意識したサプリメントも登場した。17年7月に発売されたのは、ロート製薬の「ロート クリアビジョン ジュニア」。子どもが食べやすいチュアブルタイプのサプリメントで、期待の成分クロセチンのほか、抗酸化作用のあるルテインやビルベリーという種類のブルーベリーに多く含まれるアントシアニンなど目の健康にいいとされる成分を配合している。

「通販や一部調剤薬局、眼科など限定した取り扱いで特別な宣伝はしていないが、『お菓子のようにおいしく、子どもが喜んで食べてくれる』と通販で定期購買する顧客が順調に増えてきている」とロート製薬の藤井朋子さん。

近視の抑制にどんな対策が有効なのかの研究はまだ途上だが、子どもの眼軸長の成長は待ったなし。いったん長くなった眼軸を短くすることはできないから、手軽にできるよさそうなことなら、少しでも早く取り組ませたいと考えるのが親心。視力(32.3%)は、虫歯、歯並び(42.8%)に次いで「子どもの健康管理」で親が気にする分野という調査もある[注4]

[注4]近視研究会2017年調査

そうした意味では、バイオレット・ライトを通すメガネレンズの活用やクロセチンなどの目の健康に役立つ抗酸化成分の摂取は、負担なく取り組める方法として消費者には受け入れやすい対策だろう。医療も従来の治療重視から、先手で予防することを重視する動きが高まってきている。重症になると失明も心配されると分かってきた「近視」市場は今後、活性化する分野になるはずだ。

黒住紗織
日経BP総研マーケティング戦略研究所主任研究員。90年、日経BP社入社。2000年より『日経ヘルス』編集部。その後『日経ヘルスプルミエ』編集部 編集委員など。女性の健康、予防分野の中で、主に女性医療分野を中心に取材活動を行う。共著に『女性ホルモンの教科書』(日経BP社)がある。女性の健康とワーク・ライフ・バランス推進員。
マーケティング戦略研究所

日経BP総研マーケティング戦略研究所(http://bpmsi.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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