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「冬うつ」予防は年末年始から 医師が勧める4つの策 こちら「メンタル産業医」相談室(18)

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2017/12/25

2年以上続けて秋~冬にうつ症状が出現し、季節以外の明らかな原因が見当たらない場合は「冬うつ」の可能性がある(c)Antonio Guillem-123rf
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こんにちは、精神科医で産業医の奥田弘美です。冬将軍が支配する寒さ厳しい季節です。あなたの心と体はお元気でしょうか? 今回は、極寒の季節に心がけていただきたいセルフケアについてお話ししたいと思います。

■冬はうつになりやすい?

最近、雑誌やウェブサイトなどで「冬うつ」という言葉を目にすることが増えました。「冬うつなんて病名、本当にあるの?」と怪しく思う方もいるでしょうが、これは医学的には季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder; SAD)と呼ばれている、うつ病のサブタイプの一つです。冬季うつ病 (Winter Depression)、季節性気分障害(Seasonal Depression)、季節性感情障害などとも呼ばれます。

秋から冬にかけて抑うつが始まり、春や夏になると治まるという特有のサイクルを繰り返します。このため「反復性冬季うつ病」と呼ばれることもあります。

症状としては、ほぼうつ病と同じで、「気分が落ち込む(特に午前中)」「気力や集中力が落ちる」「イライラや不安感がひどくなる」「物事を楽しめなくなる」「人と会いたくない」「性欲が落ちる」といった症状が出ます。食欲と睡眠に関しては、典型的なうつ病とは異なり、「炭水化物や甘い物が異様に欲しくなる」「いくら寝ても眠く、過眠傾向になる」といった症状が出やすいとされています。

これらの抑うつ症状が、2年以上続けて秋~冬に出現しており、春になると軽快する。かつ、季節以外の明らかな原因が見当たらない場合に、季節性情動障害(冬季うつ病)と診断されることになります(正確な診断は精神科・心療内科の専門医から受けてください)。

■日照時間の減少が関係?

季節性情動障害の発症には、冬場の日照時間の減少が大きく関連していると考えられています。日照時間が減り、脳内のセロトニンの分泌が減ることで、気分の低下が起こったり、睡眠をつかさどるメラトニンの分泌がアンバランスになったりすることが原因と考えられていますが、まだ解明されていない部分も多い病気です。

治療としては、基本的な抗うつ剤などを用いた薬物療法とともに、日光浴をしっかり行うことが推奨され、場合によっては光照射療法(5000~1万ルクス程度の光を30分~1時間程度照射)が行われることもあります。典型的な季節性情動障害は、男性より女性に圧倒的に多いといわれています。

■男女関係なく、ビジネスパーソンは注意を!

しかし、「男性だから」「冬だけ落ち込むという経験はないから」と安心してはいけません。私の産業医としての経験から、冬の極寒期は男女ともに働く人は体調を崩しやすく、それを契機にうつなどの心の病気も発症しやすい傾向があると感じています。

なぜかというと日本人の働く人の多くは、正月休みが入るために年末に仕事の日程が過密になりやすいうえ、忘年会シーズンも重なるために夜の付き合いも増えます。そのため正月前に睡眠不足や疲労をためる人が多いのです。

そうした疲労状態のまま、わずか1週間弱の冬休みに人混みを縫って帰省したり、久しぶりに会う家族や旧友と夜遅くまで飲酒したり、寒空の下で初詣に出かけたりすることで「睡眠不足」や「疲れ」をさらに重ねてしまいます。

年末年始の休みがもう少し長ければ、正月行事で乱れた生活リズムを戻し、疲労を回復する猶予が見込めるのですが、ごく一部を除き1月4日や5日が仕事初めという人がほとんどです。その結果、旧年の疲れを引きずったまま年始の仕事がスタートし、3月の決算期に向けて仕事がどんどん過密になっていく……というふうに、さらなる疲労を加速する流れに引き込まれてしまうのです。

疲労が蓄積しきった状態のところに、インフルエンザやノロウイルスの感染が重なって体調を大きく崩したり(肉体的ストレス)、取引先や仕事上でのトラブルで大きな精神的ストレスがかかったりしたときが非常に危険です。本来ならばストレスをはね返すことができる人でも、体力が落ちて過労状態になっているとストレス耐性が落ちてしまっています。

潜在的な過労状態にあるところに、肉体的または精神的ストレスがガツンとかかることを契機に、本格的に自律神経系バランスが崩れてしまい、不眠、胃腸障害(胃もたれ、腹痛、下痢、便秘)、めまい、食欲不振、ひどい倦怠(けんたい)感などが出現して、うつ状態に移行していくことが少なくありません(過労の怖さについては、第5回「「過労」はサイレントキラー 体力がある人ほど注意」もご覧ください)。

■冬は健康な人でも疲れやすいワケ

そもそも12~2月の極寒期は、全ての人間にとって「寒さ」という環境ストレスがマックスにかかっている時期です。ただでさえ自律神経系は、外界の寒さに対して体温や血圧を一定に保つためにフル活動となり負担がかかっています。

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