[親父の悩み]息子が「非課税投資って何がメリットなの?」と聞いてきた。「投資のもうけに税金を掛けないということなら、投資をしない自分には関係ないのでは?」と言っている。本当にそうなのだろうか。
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非課税投資とはどういう意味でしょうか。「税金のかからない投資」であるのは確かですが、「何に税金がかからないのか分かりますか」と聞かれてどう答えますか。「ああ、あれだな」と言える方は非課税投資のメリットをよく理解されている方です。「えっ?」と内心思われた方は、こっそり今回のコラムを読んで、息子さんや娘さんに資産形成の意味を税金面からお伝えいただければと思います。
もうけと元手で分けて考える
何に税金がかからないものを非課税投資と呼ぶかは、投資に必要な2つのお金、つまりもうけと元手を考えると分かりやすくなります。
もうけが非課税になるのはうれしい限りです。投資のもうけに対して、現在は20%(復興特別所得税相当額を除く)の税金がかかっています。例えば年間50万円の金融商品が値上がりして75万円になった場合、そのもうけの25万円に対しては20%の税金が差し引かれ、売買手数料を除いた手取りは20万円となるわけです。
非課税投資制度の一つとして注目されるNISA(少額投資非課税制度)で投資をしている場合、この金額に対する税率は0%です。つまり25万円全てが手取りになるわけです。手取りで見た実質的な投資収益率は、課税の場合40%ですが、非課税の場合には50%ですから、やはり非課税のメリットは見逃せないものです。
投資なしでもメリットはある

でもこの場合、お子さんが言われる通り「投資をしない自分には関係ない」ということになってしまいます。投資をして、さらにもうけが出ていて初めて受け取れる「メリット」というわけです。
そこでもう一つの資金、元手にかかる税金を考えてみましょう。元手にかかる税金は所得税です。ここで給料の一部を投資に回すと、それにかかる所得税が戻ってくる制度を考えてみましょう。
20代の平均的な所得から、所得税率10%、住民税率10%の合計20%として計算してみます。給料の中から年間50万円を所得税のかからない非課税投資口座に積み立てると、この50万円が所得税のかからない所得として扱われます。つまり、50万円の20%に当たる所得税の10万円分が戻ってくることになります。
こうした制度の代表例がDC(確定拠出年金)です。企業が提供する企業型DCでは、基本的な資金拠出は企業が行っているので、個人の所得に換算されておらず還付対象にはなりません。ただ最近は企業の拠出に加えて個人も拠出できる制度を導入する企業が増えており、この金額は所得税の控除対象になります。

また、iDeCoというニックネームで呼ばれる個人型DCが注目を浴びています。ここに拠出する場合にもその金額が所得控除の対象になり、所得税が還付されます。
DCで運用する対象には、定期預貯金など元本確保型の保険商品も入っています。どうしても投資は嫌だという人でも、この口座で退職後の資金を貯めれば、少なくとも所得税の還付によるメリットは享受できます。投資をしなくても受けられる非課税「投資」の恩恵とも言えます。
もちろん元本確保型の金融商品ではほとんど収益はありませんから、積み増すことはできても資金が自分の力で増えることはありません。本来ならその資金で投資を行い運用収益に対する非課税メリットも享受した方がよいことは強調しておきます。
2つの制度を活用しよう
NISAとDCの2つの制度の非課税メリットを簡単にまとめたのが下の「非課税メリットの比較表」です。資金拠出額、いわゆる元手に対する所得控除はNISAにはなくDCにはあり、運用収益、つまりもうけに対する非課税措置はNISA・DC共にあります。一方で、NISA口座から引き出したお金は課税されませんが、DCでは原則、引き出し金額をその年の所得に換算して所得税をかける仕組みになっています。

もっとも、DCを一括して引き出す場合は退職所得控除の活用でほとんど税金がかからないように優遇されています。また、公的年金等控除による税制優遇もありますから、実際にはかなりの部分が非課税で引き出せます。
そうなると税制面では総じてDCの方がNISAよりもメリットが大きいことになります。もちろんDCは60歳まで引き出せないという制約がありますし、拠出上限額も公務員では年間14.4万円と大きくありません。このため、両者をうまく使い分けるのが得策といえます。
【こんなふうに伝えよう】
非課税投資というと少し縁遠い感じがするかもしれませんが、元手ともうけで分けてそれぞれの非課税メリットを考えてみましょう。NISAやDC、iDeCoといった非課税投資制度が意外に身近に感じられるかもしれません。


[日経マネー2018年2月号の記事を再構成]