「過失ゼロ」の自動車事故 弁護士費用特約が役立つ

日経マネー

PIXTA
PIXTA
日経マネー

自動車事故で、損害保険会社が相手方との示談交渉をするのは「当然」だと思う人が多いかもしれません。しかし、後続車に追突された場合のような自分に過失がない一方的な被害事故では、損保会社が示談交渉を代行できないことをご存じでしょうか。

そもそも、弁護士でない者が報酬を得る目的で示談交渉などを行うことは「非弁行為」に当たり、弁護士法で禁じられています。にもかかわらず損保会社が示談交渉を行えるのは、保険契約者の事故により損害賠償金を支払うという「事故の当事者性」が損保会社にあるからです。しかし契約者に過失がなければ、損保会社に保険金の支払いは発生しません。ここで示談交渉を行えば、弁護士法に抵触することになるのです。

一方で被害者からすれば、相手方の損保会社との示談交渉に自分一人で臨むのは心細い、と思う人も少なくないでしょう。

そこで弁護士に示談交渉を依頼するのが一つの方法なのですが、それには費用がかかります。まずは相談料、依頼段階で支払う着手金、そして解決後は成功報酬。交通費や印紙などの雑費についても、身銭を切らなくてはなりません。

こんな時のためにあるのが、自動車保険の「弁護士費用特約」です。自動車に関わる事故で、相手方に賠償請求を行う際の弁護士費用がカバーされます。法律相談は10万円まで、訴訟などに要した費用は被保険者1人当たり300万円までの補償が一般的。自分で弁護士を探しても、損保会社から紹介を受けてもOKです。特約保険料は年間数千円程度が多いです。

なお、自動車保険の弁護士費用特約は一般に自動車による被害のみが対象で、自転車による被害については別の特約を付帯する必要があります。この他、交通事故を含む様々なトラブルを対象とする少額短期保険も選択肢になります。

保険でカバーするほかにも手段はあります。「交通事故紛争処理センター」は、弁護士による法律相談・和解斡旋および審査手続きを無料で行っています。自転車事故については、裁判所での訴訟に代わる斡旋・調停・仲介などのADR(裁判外紛争解決手続き)を行う機関も設けられています。

こうした手段を押さえておけば、思わぬトラブルで慌てないための「転ばぬ先の杖」になります。

清水香
生活設計塾クルー。学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」委員。

[日経マネー2018年2月号の記事を再構成]

日経マネー 2018年2月号

著者 :日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 750円 (税込み)