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ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は、同僚の誘いやおすすめを断る場面です。

◇  ◇  ◇

自分が気に入ったり、ためになると思ったら、つい人に勧めたくなるものです。でもどんなによい点を強調されても「いいかもしれない、でもどうしても興味が持てない」そんなこともあるはずです。都合よく用事でもあれば別ですが、なかなか嘘はつけません。相手の好意がプレッシャーになる場合、いったいどう断ればいいのでしょうか。

Come on, let's go to the seminar. It'll be fun. Please. I promise, you'll enjoy it. 「ほら、セミナーに行こうよ。面白いよ。お願いだからさ。約束するよ、楽しめるはずだ」

▲Don't push me.
正しい訳:追い詰めないでよ。
影の意味:プレッシャー、かけるなよ。

Don't … 「~するな/しないでください」という否定の命令形は時として相手に強いニュアンスで伝わることがあります。この場合であれば、「プレッシャー、かけるなよ。(止めてくれよ)」という子供っぽい言い方になります。子供のけんかに出てきそうです。Don't pressure me. も同じ意味合いです。

▲I said no.
正しい訳:もう「行かない」と言ったよ。
影の意味:もうダメだって言っているでしょう?

あまりにそっけないひと言です。これではあなたが怒っているように伝わってしまいます。

▲You can't force me.
正しい訳:無理強いはできないよ。
影の意味:君の思う通りにはならないよ。

これではまるでけんか腰。「僕にプレッシャーをかけてるの? そうはいかないよ」。相手をストレートに批判していることになります。「もうこれ以上我慢できない」。事態がそこまでいってしまったら、このひと言も仕方ないでしょう。でも最初の段階では避けた方が無難です。

これなら「影の意味」はない!

◎I'm quite sure I don't want to go.
 どう考えても、行きたくないと思っているんだ。

「行きたくない」とストレートに告げるよりも、I'm quite sure… をつけることで相手の気持ちを和らげることができます。I'm quite sure… は落ち着いた大人の対応のひと言。「どんなに勧められても行きたくない」気持ちを伝えることができます。

◎I'm sure you'll have a great time, but I'm not going.
 (そうだね)きっと君は素晴らしい時間がすごせると思うよ。でも僕は止めておくよ。

避けなければならないのは、そのセミナー自体をけなすことです。この言い方であれば、セミナーの素晴らしさを認めていることが伝わり、そのうえで「自分は行かない」という気持ちを伝えることができます。それなら相手はいやな気持ちにはならないでしょう。

◎As I said, I'm not interested in going.
 さっきも言った通り、行くことに興味がないんだよ。

「だから、もう何度誘ってもらっても無駄だよ」と告げることになります。

あなたが知らない本当の使い方―― quite

I'm quite sure…は「~であることを確信している」の意味ですが、quiteは「完全に、すっかり、かなり」など後から来る語の「程度」を表す「副詞」です。「程度」を表す副詞にはvery, really…などがありますが、quiteはフォーマルな場面でもよく使われ、落ち着いたニュアンスがあります。

I talked to quite a few people about this problem. 私はこの問題についてかなり多くの人に話をしました。

*quite a few = many, a lot of で「かなり多数の」の意味になります。これはフレーズとして覚えておきましょう。

That project is finished. I did it quite a while ago. そのプロジェクトは終わっています。かなり前に私がやりました。

* quite a long while ago:かなり前に、ずっと以前に

This policy change will have quite an impact on us. この政策の変更は私たちに大変な影響を及ぼすでしょう。

*quite an impact:大変な影響、かなりの衝撃

It is quite possible that he'll take responsibility for this incident by resigning. 彼が辞任することでこの事件の責任を取る可能性は十分にあります。

* It's possible that…:that 以下の可能性は十分にある

* take responsibility by resigning:辞任することで責任を取る、引責辞任する

I don't quite know what to say. 何と言ったらいいのかよく分かりません。

*デリケートな問題など、困惑する状況で「何と言ったらよいのか……」の意味。

* I don't know. よりも控えめで落ち着いた言い回しになります。

A: How is your new lab? B: I'm not quite at home yet. A: 新しい研究室はどうですか? B: まだ慣れていません。

* be quite at home: なじむ、落ち着く、すっかりくつろぐ

I'm sorry that I don't quite understand your problem. 申し訳ないのですが、あなたの問題がいまひとつ理解できません。

*not quite: そこまで/あまり~でない

「かなり確信している」はI'm quite sureで表しますが、同じようにI'm quite certainでも「かなり確信している」を表します。それではsure とcertain はいったいどこが違うのでしょうか。ひと言でいえば、「主観的な気持ちによる確信」を表すのはsure、「客観的なデータや根拠に基づく確信」を表すのがcertain ということになります。大学入試の結果を待つ友人や後輩にI'm sure you'll pass the examination.「(大丈夫)必ず受かるよ」と言うとき「あれだけ努力したんだもの、きっと受かるよ。私は受かるって信じているわ」すなわち、そこには I hope… の気持ちが込められています。

I'm certain you'll pass the examination. であれば、例えばそれまでの成績、過去の入試のデータ、自己採点など客観的に判断できる根拠に基づく「確信」であると考えてよいでしょう。

「ねえ、それ本当なの?」と聞きたいときにAre you sure?と聞くのは「それ、確か?」と若干の疑いが見え隠れします。主語をit に変えてIs it for sure? と聞く方が無難です。

これは確認でも軽い確認。Is it for certain? と聞くときは、軽々しい答えを求めず、真剣に確認を求めるニュアンスになります。

Keep on going!

: D セイン

デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は12月28日の予定です。

デイビッド・セイン David Thayne
 米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。

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