小沢の配点を振り返ってみても最高の10点を与えたのはカムリでXC60は1点のみ。というのも自分の中で500万円以上のクルマは基本的にイヤー・カーにふさわしくないと決めていて、どんなにいいクルマでも毎年せいぜい4~5点ぐらいしか付けない。

ボルボXC60にしろ日本で年間2000台前後しか売れないクルマなのだ。月に直すと200台には届かず、正直イヤー・カーにふさわしいとは思えない。

小沢氏が今回10点を入れたのはカムリだったという

よって小沢が輸入車に10点入れるとしたら日本車並みに安いか、あるいは空飛ぶクルマぐらいインパクトがある時のみ。だが、今回に限ってはそう思わなかった選考委員が多かったようだ。クルマが良ければ価格はさほど気にしない。あるいは今の時代、600万円以上でも普通に買えるクルマだと考えたのか。そういう意味では感覚が変わってきたと言ってもいい。

同時に今回のXC60受賞にはCOTY独特の配点法も関係している。選考委員ひとりの持ち点が25点で1台に10点入れたら残り4台に好きに配分していい。1台だけお気に入りを選ぶのではなく、次点に9点を入れることが可能で、要するに10点を取った人数以上に、「次点」を数多く取ったほうが勝つケースが多いのだ。今回もXC60に10点を入れた人は9人しかおらず、カムリに10点入れた人は13人いたが、残念ながら次点を多く取れなかった。投票方式が10点のみだったら結果は変わる。

だが、根本にあるのは、選考委員のマインドセットと今の日本自動車マーケットの問題だろう。

日本は「高くていいもの」を作れているか

そもそも小沢を始め、選考委員はほとんど全員がクルマ好き。本音としては実用車よりスポーツカーや高級車の方が好きな場合が多く、今やその手を日本ブランドが多く作ってない。

今日本で売れるのは経済的なコンパクトハイブリッド、軽自動車、ミニバンがメイン。その市場変化が今や日本のものづくりにも影響してきているのだ。

具体的に400万円以上の嗜好品とも言える趣味グルマは、ほとんどがドイツ車やフランス車やイタリア車やイギリス車で、逆に日本車は300万円以下のコンパクトカー中心になりつつある。今のマーケットの二極化は、高い輸入車に安い日本車という分かりやすい構図を生み出し始めている。

加えて今の日本は一部の物価が異様に安い。欧米に行くと平気で昼食に1000円以上かかるが、日本では500円ちょっとで済んだりする。クルマの価格も一部軽自動車は飛躍的に上がったが、逆に安いクルマも生まれており、日本は企業努力でなかなか実用品の価格を上げない。そういう意味でも、輸入車と日本車はカテゴリー的にイメージの異なる存在になりつつある。

ちなみに小沢氏はXC60に1点しか付けなかったという

これは良いことのようで、そうでもない。長らくデフレ不況が根付く日本は地に足の付いた安い商品ばかりを生みだす半面、お金持ちが喜ぶ高付加価値な嗜好品をあまり生み出せなくなっている。例外はマツダやレクサスでだからこそマツダがCOTYを3年前、2年前と連続受賞できた部分もあり、日本ブランドは日本で高級車を売ることにさほど必死ではない。それが今回のボルボXC60受賞につながった面もおそらくある。

安くていいものを作る。それは確かに一つの正義であり日本の強みだ。だが、高級品であり嗜好品を作る、これもまた重要なのである。ましてや安くていい自動車を中国や韓国が作り始めている現実もある。

今回は確かに流れが急すぎる面もあったが、日本に染み付いたデフレマインドこそが今回のボルボCOTY初受賞につながっているような気がするのである。

小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、『ベストカー』『時計Begin』『MonoMax』『夕刊フジ』『週刊プレイボーイ』、不定期で『carview!』『VividCar』などに寄稿。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)など。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。
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