「描きたいものを描く」絵本作家うならす障害者アート「パラリンアートカップ」審査員の宮西達也さんに魅力を聞く

宮西達也賞に選ばれた大塚エティエン君の「La mano de Dios―神の手―」
宮西達也賞に選ばれた大塚エティエン君の「La mano de Dios―神の手―」

障害者の支援活動に取り組む一般社団法人、障がい者自立推進機構は障害者が描いた絵画などのコンテスト「SOMPOパラリンアートカップ」の2017年の受賞作を発表した。758点の応募作品からカミジョウミカさんの「みんなでなかよくサッカーしよう」がグランプリに選ばれた。

審査委員の1人である絵本作家の宮西達也さんは日本経済新聞のインタビューで、「描きたいものをバシッと描いているところがすごい」と障害者アートの魅力を表現。父親として障害を持った子供を育てた経験にも触れ、「(障害の有無を健常者との)違いとして意識したことはない。コンテストを通じてでも健常者と障害者が関われるようになったらいい」と語った。

審査員を務めた絵本作家の宮西達也さん

――パラリンアートカップは何らかの障害を持った人を対象としたコンテストです。応募作品からどんなことを感じましたか。

「今回のコンテストを見る限り、障害を持っている人の絵は健常者よりも上だと思いましたね。人の目を意識せずに、自分の描きたいものだけを描くことを貫いています。なかでも子供が描く絵は本当にすごい。(健常者の)大人は観念で描いてしまいますが、彼らは目で見て描く。例えば、大人に線路を描かせると、手前は大きく、奥の方は小さく描きます。それは頭の中で(遠近感が)わかっているからです。子供はそんなことをしません。線路が平行に見えれば、そのまま描くのです」

「絵はテクニックではありません。彼らはテクニックなど使わずに、自分が見たもの、描きたいものをバシッと書いています。それが私たちの心にズドンとくるのです」

――宮西さんが選んだ宮西達也賞の『La mano de Dios―神の手―』は知的障害がある10歳の少年、大塚エティエン君の作品です。どんなところに着目しましたか。

「この子はテクニックなんて使っていませんね。ただ、手でパン、パン、パンと手形を押しています。赤いバスケットボールを真ん中に持ってきて、つまらないものにするのではなく、少し左側に描いていますから、ちゃんとデザイン的な要素も備わっています」

「赤いボールは日の丸に見えましたし、この手を見ていて、僕には世界中の人々の手が映りだしました。そして和の感覚ですね。墨を使っていて、実に日本的です。だからといって古めかしい感じもしない。とてもすてきな絵になっているので、東京五輪・パラリンピックのポスターにもなると思っています」

グランプリを受賞したカミジョウミカさんの「みんなでなかよくサッカーしよう」

――グランプリを受賞したカミジョウミカさんの作品はどうですか。彼女は先天性の骨の疾患で車いすを使った生活をしながら、創作活動を続けています。

「見た瞬間、楽しいですよね。絵は楽しくなくちゃ。2人の選手がボールを真ん中にして、シンメトリー(対称的)になっています。さらにポコ、ポコ、ポコと(背後に)描かれている顔がバランスを崩しながらも、統一されていますね。デザインはちょっとずらしたり、斜めにしたりして不安定にさせることで、私たちに飛び込んでくるのです」

「いろいろな人の顔が(背後に)描かれています。人間だけでなく、動物もいますよ。それらのひとつひとつを見ると、また楽しい。パッと見た瞬間、『あっ、新しい絵だ』と思わせ、次にひとつひとつをじっくり見たくなる絵です。これだけ人物が書かれているのに、色彩感覚がちゃんと統一されている。バランスを崩しながらもバランスをとっている。構図も色もすばらしい作品だと思います」

――入賞したアーティストたちがさらに飛躍していくために、どんな助言ができますか。

「アドバイスなんてとんでもない。僕が盗作したいくらいですよ。『そうか、こんな色づかいがあるのか』『こんな構図があるのだな』というように、たくさんヒントをもらいました。僕らは絵描きとして、子供のように自由に描きたいと思っています。今回の(入賞)作品のアーティストたちには、すでにそれが備わっています。今まで通りに、自分たちが描きたいものをドンと描いてほしいな」

「僕の友人である(絵本作家の)エムナマエさんは全盲です。でも文章を書き、絵も描き、プロとして活動しています。このコンテストの参加者からプロが誕生しても不思議はないと思います」

――2020年の東京五輪・パラリンピックも、障害を持つ人が活躍する場になりそうです。障害の有無に関係なく、誰もが活躍できる共生社会の実現には何が必要でしょうか。

「僕の4番目の子供に障害はありますが、どの子も同じです。(違いを)意識したことはありません。自分の子を持って初めて思ったのですが、(違いを)意識すること自体がなくなっていくことが一番よいと思います。そのためには、できるだけ健常者と障害者が関わってほしいですね。こういうコンテストを通じてでも、関わり合いを持つことが大事なのではないでしょうか」

「たとえば、こんなアイデアはどうでしょう。障害者が描いた絵をユニホームの背中にプリントして、それをサッカーのスター選手に着てプレーしてもらうのです。そうすれば『走る絵画展』ができます」

(聞き手は山根昭)

宮西達也
1956年、静岡県生まれ。絵本作家。日大芸術卒、人形美術家、グラフィックデザイナーを経て27歳で絵本作家デビュー。ティラノサウルスなどが登場する恐竜の絵本がヒット。『おまえうまそうだな』などが劇場アニメ化された。『きょうはなんてうんがいいんだろう』で講談社出版文化賞絵本賞、『ふしぎなキャンディーやさん』で日本絵本賞読者賞。2018年はティラノサウルスシリーズの15周年で、3作目の映画も公開予定

日本経済新聞社が2018年1月11日から東京本社(東京・大手町)2階スペースニオアートギャラリーで開催を予定していました「SOMPOパラリンアートカップ2017」受賞作品の展示会は、会場の都合により中止します。今後、展示会を開催することが決まった場合には、改めてお知らせします。日経はSOMPOパラリンアートカップのメディアパートナーを務めています。

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