相次いだ企業不祥事 多様性の実現を急げダイバーシティ進化論(出口治明)

2017/12/23
PIXTA
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2017年も残すところ1週間余り。今年はつくづく、組織におけるダイバーシティ(多様性)の重要性を実感した年だった。日本の経済成長を支えてきたものづくりの現場で相次いだデータ改ざん問題は、同質性が高く、閉鎖的な組織文化が色濃い日本企業のもろさを浮き彫りにした。

コンプライアンス(法令順守)よりも、組織の論理を重視する。不条理な命令であっても、上司には逆らわない。空気を読み、上の意向を忖度(そんたく)できる人が優秀と評価され、出世する――。同質組織のもたれあいが行きすぎると、自浄作用が働かなくなる。異論を唱える存在を排除しようとする組織の在り方が、一連の不祥事の根底にある気がしてならない。

こうした風土を根底から変えるには、ダイバーシティが決定的に重要だ。多様な価値観や経験を持つ社員が多様な意見を出し合い、組織にとってよりよい判断をする。そのプロセスなしには、グローバル競争に挑むことなどは不可能だ。

しかし、同質性を重んじてきた日本の大企業には、無意味な慣習を打ち破ろうと自ら立ち上がる社員が極めて少ない。マイナス点がつかないよう縮こまり、既存のルールに黙って従う人が多数派だ。「仕事が人生のすべて」と信じ込み我慢を重ね、心を病んでしまうケースも珍しくない。

職場ストレスを抱えている人に、届けたいファクト(事実)がある。1年は8760時間。うち日本人が働いている時間は2000時間ほどで、2割強にすぎない。この数字は「人生において、仕事なんてたいしたことではない」という事実を示している。

「たいしたことはない」というと、仕事をおろそかにしていいと誤解されそうだが、そうではない。仕事がすべてではないと認識してこそ人は、職場において信念に基づく言動を貫く勇気を持てる。過剰に上司の顔色をうかがう必要も、組織の慣習を部下に押しつける必要もなくなる。結果、自分なりのやり方で効率的に成果を上げることに集中できるようになる。

メンバーがあうんの呼吸で動く同質性の高い組織が効率的だった時代は過ぎ去った。テクノロジーが急速に進化する中、個人も組織も変化適応力がなければ生き残れない。同質組織から脱して、ダイバーシティを進めること。日本企業の成長と働く人の幸せの双方を実現する鍵はそこにある。

出口治明
 
ライフネット生命保険創業者。1948年生まれ。72年日本生命に入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを務める。退社後、2008年にライフネット生命を開業し社長に就任。13年から会長。17年6月に退任。『「働き方」の教科書』、『生命保険入門 新版』など著書多数。

[日本経済新聞朝刊2017年12月18日付]