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ウーマン・オブ・ザ・イヤー2018 諦めず、信念貫く

2017/12/19 日本経済新聞 朝刊

■矢田明子さん(まちを健康にする看護師) 声掛けからコツコツと

超高齢化社会の希望賞を受賞したコミュニティ ナース カンパニー(島根県出雲市)代表の矢田明子さん(37)の仕事は、地域住民の健康に気を配り予防医療に携わるコミュニティナース。看護師の新たな働き方を地元の島根から全国に広げようと奔走する。「人が健康になること、暮らしが良くなることならなんでもする」。島根県雲南市では新たな雇用が生まれ、移住してくる人が続出する効果を生んだ。

就職後、21歳で結婚、3児を出産した。26歳のとき父親をがんで亡くしたのをきっかけに、大学で看護学を学ぼうと決意した。「周囲の誰かが検診に行くよう父に声をかけていれば」と思ったから。しかし地域には介護・看護といった縦割りで解決できない問題があると考えるようになった。それに対応するのがコミュニティナースだ。

コミュニティナースカンパニー社長の矢田さん(左)は積極的に地域住民と交流し、健康に気を配る(島根県雲南市)

医療機関で待つナースではなく、商店街や地域イベントなどに顔を出して高齢者や子どもたち、障害者らに「元気?」と声をかける。健康の知識があるナースが人々と関わり合い、町おこしの活動などをすることで活力が生まれ、健康管理などを地域の人々が自発的に始めるようになった。

ただ周囲の理解を得るまでには長い道のりだった。「健康の相談役って意味はあるの?」と聞かれることも多い。それでも「誰もやっていないから、やるんだ」と信念を崩さなかった。

仕事の基本は地域の人たちとの関係作り。「焦らず、そこにいることが当たり前になることが大事」と話す。生活の中に入り込むと人は「私を気にかけてくれるなら検診に行こうかな」となる。島根から他の地域への展開、コミュニティナースの育成にも取り組む。

島根での経験が通じないことは多い。その時は「謝って教えてもらう」。一番楽しいことは、地域の高齢者の誤解を解いたり、ちょっとしたいざこざに対応したりといった地味な仕事にある。余計なお世話と追い返されても、じっくり対応していけば伝わる。「地味は美しい」が信念だ。

大胆な行動力に目がいくが、緻密な論理派だ。健康に暮らせる人を増やすため逆算し、1.5歩先までの計画を練る。着実に進めていけば、効果が出る。常に考え続けることは前向きになることにもつながる。

「考えなくなると言い訳をしだす。考えていれば否定ではなく提案ができる」と話す。健康寿命を延ばすことは過疎や地域の様々な問題が絡みあう。人々の暮らしの隣りにいるナースたちが超高齢社会に挑む。

◇   ◇   ◇

■緻密な計画、心の支えに ~取材を終えて~

ポーラ化成工業の末延則子さん、コミュニティ ナース カンパニーの矢田明子さんは2人とも前例のない事柄に挑む間、周囲から「目的をかなえるのは無理なのではないか」と言われ、理解されない時間を長く過ごしてきた。それでも実現する支えとなったのは、緻密に立てた事業計画だったとどちらも口にする。

足元のやるべきことを細かく書き出す。周りからは止まっているように見えても、着実に進んでいる実感を常に持ち続けた。その上で周囲を巻き込んで、前向きに進み続けた結果が実った形だ。彼女たちが時間をかけて新しいモノを生み出した過程には多くのヒントがある。

(小河愛実)

[日本経済新聞朝刊2017年12月18日付]

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