夢の体験、VRでかなえる 数千円で「豪華空の旅」超満員ステージで熱唱も

超満員のアリーナの舞台で熱唱できる(ファンタジーVRステージプラス)
超満員のアリーナの舞台で熱唱できる(ファンタジーVRステージプラス)

ファーストクラスで海外旅行、超満員のステージで熱唱――。夢のまた夢のような体験を仮想現実(VR)でかなえてくれるサービスが増えている。記者(42)が体験してみた。

「当機はまもなく離陸いたします」。紺色の制服のキャビンアテンダント(CA)がアナウンスすると、ほどなくゴーッというエンジン音が響き、座席に振動が伝わってきた。ふと窓に目をやると風景が高速で過ぎ去っていく。

機上の人となった記者は、人生初のファーストクラス座席をほぼ水平までリクライニングして夢見心地。VIP気分に浸っていたら「それではニューヨーク(NY)観光をお楽しみください」とCAにゴーグルを渡された。

成田―NY便のファーストクラスは本物なら一般に片道100万円超。もっとも、このフライトは東京・池袋の雑居ビルに2016年12月にオープンした一風変わったアミューズメント施設「ファーストエアラインズ」のVRサービスなので5980円だ。

離着陸の振動や窓の風景などはすべてVRだ。ゴーグルを装着すると、ネオンがきらめくタイムズスクエアに立っていた。動画のVRなので通行人とすれ違ったり、英会話のざわめきが聞こえてきたりする。上下左右に360度、自由に視線を動かして見ることができる。

機内食のコース料理はファーストクラスを思わせる本格的なものだ。この日は記者のほか、中年夫婦や会社の同僚らしき3人組などで8席が満席で、「すごくリアル。これで十分に旅行した気分になれる」との感想も聞かれた。NY、パリ、ローマ、ハワイの計4便を運航しており、リピーター客もいるという。

東京・お台場に7月オープンしたプラネタリウム「コニカミノルタバーチャリンク」は、VRで宇宙旅行の体験ができる。ゴーグルを装着すると全方位が星空で、足元に天の川が見えた。視線の動きを使って地球にバリアーを張り、隕石(いんせき)の衝突から守る2人ペアのゲームも面白く、カップル客などに向いている。

「カラオケファンタジー」が今夏から首都圏の一部店舗に導入した「ファンタジーVRステージプラス」は、ゴーグルを装着すると2万人のファンで超満員のステージに立てる。ファンの盛り上がりは曲調に合わせて「はげしい」「ノリノリ」「しっとり」の3つのコースから選べる。

記者は1980年代の大ヒット曲「Get Wild」を「はげしい」コースで熱唱。イントロ部分やサビを歌い上げたところでマイクを頭上に突き上げると、センサーが感知して総立ちのファンが激しくペンライトを振り、ウォ~と歓声が上がる。

VIPになった気分で「機内食」を楽しむ(ファーストエアラインズ)

VRの世界に浸ると、あまり恥ずかしさもなく「みんながオレの歌に酔いしれている」という大物アーティストの気分を満喫できる。もっと歌いたかったが、広報担当者が同席する取材なので2曲で切り上げた。ちなみにVRに夢中になってゴーグルを長時間かけていると「VR酔い」でふらつくことがあるので気をつけたい。

気分を盛り上げる効果が大きいVR。記者は前方の大型スクリーンに映し出される近未来的な異空間を自転車で疾走するVRエクササイズ「ザ・トリップ」も体験してみた。らせん状にねじれた道路をスピードを上げて走り抜けるVR映像を見ていると、ペダルを踏んでいるだけなのに重力から解放されたような不思議な感覚にとらわれた。

こうしたVRサービスはさらに広がりそうだ。ANAセールスはVR開発のナーブ(東京・千代田)の技術を使い、旅行者が見ている風景をVR画像にして留守宅の家族にリアルタイムで転送するサービスを18年中に始める。「旅行に同行できなかった家族や友人らも旅行体験を共有できるようになる」というから楽しみだ。

(南毅)

[NIKKEIプラス1 2017年12月16日付]

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