「花粉症のスギ」を善玉に 木材博士が挑む家具作り天童木工(上)

納品までの時間も大幅に圧縮

開発の間、西塚氏はほぼ毎日、現場に足を運んだ。試行錯誤を繰り返し、14年にようやく、これまでの広葉樹を使った成形合板家具をスギに置き換えたシリーズを発表することができた。これが大きな反響を呼び、西塚氏を含む5人の社員は、第6回ものづくり日本大賞を受賞した。

2014年に発表したスギの家具シリーズ(天童木工本社ショールーム)

当時、スギで家具を作る取り組みは「社内でもあまり理解されてはいなかった」という。「私はそのころ、すでに部長という立場でしたから、面と向かって文句を言う人間はいませんでしたが、一緒に研究していたメンバーはつらい思いをしていたかもしれません」

これまでにないスギを使った家具は各地の公共施設を中心に人気を集め、17年10月現在の納入実績は114件(個人客を除く)。受注はこの2年間で、およそ倍のペースで増えている。企画から納品までの期間を大幅に圧縮できたことも、納入が増えている要因だという。

「ブナやナラを家具材に使う場合、ふつうは1、2年間天然乾燥させてから使いますが、我々は薄くスライスしたスギを煮沸して、木が持っている『曲がる』『ねじれる』という性質を一度殺してから加工するので、伐採直後に製品化することができます」

ある公共図書館のケースでは、地元のスギを使うことが16年4月に議会を通り、それを受けてから製品化に取りかかり、6月には納品することができた。納品が間に合わないことを理由に見送られていた公共施設への木製家具使用が可能になったのは、ちょっとしたイノベーションともいえる。

天童木工には現在、北海道や高知、福岡など全国各地から地元のスギが丸太の状態で送られてくる。西塚氏らはそれを家具に加工し、地元に再び送り出す考えだ。

現在力を入れて取り組んでいるのは屋外に置いても腐らない家具や、火事が起きてもすぐには燃えない家具の開発だ。「家具の防火基準に関して先頭を走っているのは、米国カリフォルニア州です。この動きはいずれ世界に広がるでしょう。日本では建材の不燃・準不燃・難燃などの規格はありますが、家具に関してはなく、技術開発もこれから。私たちはそこにチャンスがあると思っています」(西塚氏)

(ライター 曲沼美恵)

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら