「花粉症のスギ」を善玉に 木材博士が挑む家具作り天童木工(上)

東日本大震災の直後から開発に着手

開発に着手したのは2011年に東日本大震災が起きた後だ。成形合板で使用する薄くスライスした板を、専門用語で単板(たんぱん)と呼ぶ。それまでは広葉樹を1ミリメートル程度の厚さにスライスした単板と接着剤を重ねて型にのせ、加圧・加熱して成形していた。

スギ材でつくった自転車

広葉樹よりも密度が低く柔らかいスギの場合、十分な強度を得るには、3~5ミリメートルの厚さがある単板が必要だが、それだと厚すぎて成形合板にできないジレンマがあった。厚さを抑えながら強度を増すには、スギを圧縮し、密度を高めるのがいいだろうと西塚氏は考えた。福島県郡山市にある林業の研究施設(福島県林業研究センター)に、それに適したロールプレス機があることがわかった。

厚さ25ミリメートルのスギ板を持ち込んでロールプレスすると、「木の悲鳴がしてつぶれるだけのさんたんたる結果に終わった」。うなだれて天童市に戻り、「今度こそは」と20、10、5ミリメートルと厚さの違うスギを試験場に持って行く。すると、意外にも薄いほうが破壊が少ないことに気がついた。思い切って2ミリメートルまで薄くした板をロールプレスすると、これがうまくいった。

こうしてできた単板を成形合板にするのだが、ここにも技術的な難しさがあったという。

「成形合板にすると、広葉樹の場合、時間の経過とともに曲げた方向に沿っていきますが、針葉樹は逆で、曲げた方向に反発して曲がっていきます。職人たちは当初、慣れない針葉樹の扱いに戸惑い、不具合が出るたびにスギの悪口を言っていました」

針葉樹のなかでもスギは心材(中心に近くて硬い)と辺材(周辺に近くやわらかい)の差がはっきりしているから、独特の木目が出る。成形合板では加圧・加熱調節が出来上がりを左右する。部分的に密度の違う板を焦げないよう接着させるのに、職人たちは苦労した。

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