「しかし、何をしてもいい、というのは逆に厳しい。みずから一定のルールを設けていくことになります。しかし、気がつくと過去の経験則もふくめ、自分たちをがんじがらめに縛る規律を作ってしまい、身動きがとれなくなるんです。案件がうまくいかないときの遠因もここにあることが多い」

垣内氏は「既存の価値観を修正していく作業を続けられるうちは大丈夫」と話す

「行き過ぎのルールをどこかで破壊する、これが大切です。当社はこれまでも時代の変化にあわせて規則を作っては壊したり、修正したりしてきました。今後も、既存の価値観を修正していく作業を続けられるうちは大丈夫だと思う」

――具体的に、どうなるんでしょうか。

「三菱商事には今、約150の事業ユニットがあります。かなり多いです。なかには、収益が10億円あるかないかの小さな事業もある。当社は、よくいえば全産業を見渡せる目を持ち続けられているし、悪くいえばあきらめられず、捨てられない会社なんですよ」

「小さな事業を温存しているのは、500億円や1000億円の収益を上げ、今脚光をあびている大きなビジネスも、もともとは小さかった芽が大きく成長した、という経験があるからです。たとえば、原料炭は私がオーストラリアにいたとき、小規模なビジネスでした。未来も、このメカニズムは変わらない」

――将来のビジネスの「芽」を探し、育てる仕組みはどこの会社も知りたいところだと思います。

「その芽は、当社でいえば150ある事業ユニットのなかに存在しているんです。予想もしない、突拍子もない大発明のようなものではない。そこから、将来を担うコアビジネスをつくっていく。しかし、何が核になるかはわかりません」

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商社の枠組みを超えていく