競技用の義足で風を切れ 本を借りるように走り楽しむカーボン製で「くの字」型に湾曲、力入れて地面蹴りやすく

ランニング体験教室では、競技用の義足をつけた走り方を学べる(11月、東京都江東区)
ランニング体験教室では、競技用の義足をつけた走り方を学べる(11月、東京都江東区)

義足使用者に競技用の義足を貸し出し、ランニングを体験できる教室が人気を集めている。競技用は高額なうえ義肢装具士に装着してもらう必要があり、利用できる機会は少ない。教室を運営するのは装具士やパラリンピック出場の選手ら。「義足で走る楽しみを知ってもらいたい」と力を込める。

「左右同じリズムで足を上げて」。11月下旬の日曜の昼下がり。全天候型スポーツ施設「新豊洲ブリリアランニングスタジアム」(東京・江東)の60メートルトラック上に置かれた高さ約30センチのミニハードルを、くの字型に湾曲したカーボン製の競技用義足をつけた人たちが次々と跳び越えた。

義肢装具士や選手らが月1回開いている競技用義足の体験教室の一コマだ。この日は小学生から大人まで約15人が2時間にわたって汗を流した。

3回目の参加という甲府市の小学3年、関口颯人くん(9)は両足に競技用義足を身につけて5分間のランニングに挑戦。「普段使っている義足と違って、力を入れて地面を蹴りやすい。速く走ることができて楽しい」と笑顔を見せる。父親の洋さん(43)は「競技用義足で走れる機会はこれまでなかった。少しでも速く走れるようになってくれたら」と話す。

体験教室は装具士の沖野敦郎さん(38)が2016年12月に始めた。08年の北京パラリンピックから競技用義足を使うアスリートを支えてきた経験を持ち「義足の人が走れる場と道具を提供したい」として企画した。

通常の義足には柔軟性がなく、走るには不向き。ただ競技用義足は1本当たり20万~60万円と高価で、保険適用外のため気軽には入手できない。さらに装着する際も装具士の手助けが欠かせない。

体験教室は競技用義足や取り付けに必要な部品を無償で借りられ、装着もしてもらえる。

17年10月には義足開発ベンチャー「サイボーグ」(東京・渋谷)の遠藤謙さん(39)らがクラウドファンディングで集めた約1700万円で作った、競技用義足の試着ができる施設もオープンした。

「本を借りるように気軽に試してほしい」との思いから「ギソクの図書館」と名付けられ、壁一面に大人用から子供用までの競技用義足24本と取り付けに必要な部品が並ぶ。装具士に装着してもらい、トラックを試走したり体験教室で使ったりすることもできる。

20年東京パラリンピックの開幕まで11月末で1000日を切った。大会は障害者がスポーツに親しむきっかけにもなり得るため、沖野さんは「障害者が気軽に競技用義足を付け、当たり前に走れるようになれば」と期待を寄せている。

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企業も障害者スポーツに体育館開放

障害者がスポーツに取り組みやすい環境づくりは民間企業でも広がっている。

不動産大手のヒューリックは2017年、障害者バドミントンを支援するため、自社所有の体育館を改装。車いすでも移動しやすいよう廊下を広げ、フロアに車いすバドミントン用のラインを引くなどして、競技団体に無償で提供している。

三菱電機も16年4月から、日本車いすバスケットボール連盟に自社が保有している体育館を月2回ほど貸し出している。スロープや自動ドアを設置したほか、車いす同士の接触が多い同競技で選手を保護するため、体育館の壁にクッションをつけた。担当者は「競技力を強化し、東京大会で活躍してほしい」としている。

[日本経済新聞夕刊2017年12月14日付]