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これでいいのか、我が家のおでん 欠かせない具は何?

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毎年冬になると私の頭を悩ませるひとつの問題がある。それは「おでんの定義っていったい何だろう?」という疑問だ。

ここで少々、我が家の特殊事情をお話しよう。私の家では子供に食物アレルギーがあるため、卵や乳製品、ナッツ類、そば、カニなどを使った料理が作れない。これだけアレルギーがあるとたいていの料理の材料にアレルゲンが含まれてしまうので、家で作ることができるのは、使える材料だけでそれらしく作った「もどき料理」になる。

シチューは、だし汁と豆乳とうらごしコーン缶でコーンクリームスープもどきに。チャーハンは米粒を卵でコーティングすることができないので、いためたベーコンと卵不使用マヨネーズ風調味料でごはんをいためてそれらしい味付けに。工夫次第でなんとかなるものの、毎回ちょっとした違和感が残る。

冬になると問題はおでんだ。おでんといって皆さんが思い浮かべる「おでんに欠かせない具」はなんだろう。私だったら、よく味がしみてあめ色になった大根と、卵は絶対にマストだ。白滝もないと寂しい。本当は故郷である鹿児島ならではのおでん種・とんこつも恋しいのだが、東京では見かけないので、家で作るおでんに入れたことはない。あとは練り物もいろいろ。がんもどきに、きんちゃくあたりがあったらうれしい。つみれも欲しい。

ところが、である。頭の中で思い描く「理想のおでん」とはうらはらに、我が家ではまず卵が絶対ダメ。それに練り物も卵白を使ったものがほとんどなのでほぼアウト。

結局、食べられる食材だけを選んで、大根やサトイモ、ロールキャベツ、鶏肉などを煮込んで「はーい、おでんだよー」と食卓に出すとき、私の心の声が叫ぶのである。「これは、おでんじゃなくて、煮物じゃないのか?」と。そうすると思い至るのが冒頭の問題だ。おでんの定義とはいったい何なのか。

おでんの基になった料理は田楽だという。豆腐を串に刺して軽く焼き、味噌だれをつけて食べる田楽は室町時代にはすでに文献に登場していた。江戸時代になって飯屋や居酒屋が出現するとともに田楽を食べさせる茶屋も登場、手軽に食べられることから庶民のおやつとして人気を博した。

「おでん」という名称は宮中に仕えた女官たちが女房ことばで「お田楽」を「おでん」と略したのが広まったらしい。大坂ではこんにゃく田楽も誕生したが、これも「おでん」と呼ばれた。

時期には諸説あるが、江戸後期または明治期になると、それまで焼いていた具材をしょうゆで煮込む「煮込みおでん」が誕生し、具材も徐々に増えていった。この「煮込みおでん」が、我々の思うおでんの基本形だろう。江戸時代の風俗書である『守貞謾稿』には既に、おでんと熱かんの黄金セットが登場する。

江戸時代にはまだ汁気が少ないものだったが、明治時代には汁気たっぷりのおでんも誕生。大正時代には関西にも伝わり、田楽と区別するために関東煮とも呼ばれた。こうしておでんは現在の形に近づいた。

煮込みおでんから発展したからには、煮ることははずせない条件だろう。では、調味されただし汁で具材を煮ればおでんなのか? 一瞬そうかなと思わなくはないが、ちょっと待った。鍋料理だってだし汁に味付けして、具材を煮るのは同じだ。じゃあ鍋料理とおでんの違いは何だろう。

広辞苑第6版には「鍋料理」とは「鍋のまま食卓の上にのせ、煮ながら食べる料理」とある。ならば、おでん屋で目の前で煮えているおでんはやはり鍋料理だ。鍋料理のひとつにおでんがあると考えてよいだろう。ただし、調理時間の違いはある。「煮る」と「煮込む」の違いと言ってもいいが、鍋料理は具材に火が通ったら出来上がりの「煮る」料理。一方、おでんは「煮込む」料理だ。

では、おでんと煮物の違いは何だろう。こちらも広辞苑で調べてみると「煮物」とは「食物を調味して煮ること。また、煮た食品」とある。つまり、煮物という大きな枠の中におでんがあると考えるのがよさそうだ。

しかし、筑前煮やぶり大根のようなポピュラーな煮物と比べると、おでんの煮込み時間はさらに長い。ものによっては1~2日かけてコトコトと煮込むこともある。それに、おでんはそれぞれの具を別々に下ごしらえし、素材によって入れるタイミングも変え、素材からのダシを複雑に出していく。おでんの大根があんなにもおいしいのは、いろいろな食材から出ただしをたっぷり吸っているからだろう。

具の種類も「煮物<おでん」である。おでんの具は大根、ジャガイモなどの根菜、フキ、ワラビ、タケノコなどの山菜、タコやカニなどの海鮮、牛スジやつくねといった肉類、練り物まで多岐にわたる。最近ではトマトだってアボカドだってカイワレだって、おでんの具になる。シュウマイだってソーセージだってありだ。あえておでんを特徴づける具を選ぶなら、練り物だろうか。じゃあ「調味されただし汁で、練り物を含む複数の具を、長時間煮込む」。これを満たしていれば、おでんと呼べるのか?

ところが、おでんの具材のなかでも練り物や海鮮は長時間煮込まないし、日本各地でおでんと呼ばれる食べ物を見てみると、今も煮込まない田楽をおでんと呼ぶ地域もあるし、だし汁を使わないものもあるという。

ああ、また定義崩壊だ。

いったいおでんの定義とは何なのだ。なかなかに悩ましいが、ひとつ言えることは、おでんとは非常にすそ野が広い料理であるということだ。鍋料理でもあるし、煮物でもある。だし汁に決まりもないし、味付けに決まりもない。カツオだしでも昆布だしでも洋風でもいい。しょうゆでも味噌でも塩でもいい。串に刺してもいいし、刺してなくてもいい。たれをかけたり、つけたりしてもいい。魚粉をかけてもいいし、辛子やショウガ味噌をつけてもいい。煮込んだり、煮込まなかったりする。ただ、たくさんの具材から出ただしで具材を味わえば、それはきっと「おでん」と言える。

ということは、我が家のおでんはやっぱりおでんだった、ということだろう。ただし、「味しみ大根と、褐色の卵、練り物がそろっていないおでんなんて、おでんじゃない!」というのが私なりの「おでん、かくあるべし」というこだわりだったわけだ。

このように、おでんの定義は広く果てしないが、一方でその味は限りなく身近で人懐っこい。皆さんが思うおでんとはどんな料理だろう。欠かせない具はあるだろうか。こうでなくてはおでんじゃないというこだわりはあるだろうか。それを確認するためにも、今夜は熱々のおでんにしよう。

(日本の旅ライター 吉野りり花)

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