(1)目指すゴールとしてのキャリアビジョンを設定する
(2)現状からキャリアビジョンに至るルートを考える
(3)ルートを歩むために転職や就職活動を成功させる
まずはゴールであるキャリアビジョンをしっかりと設定しないと、どのようなキャリアを積むべきかを決めることはできません。一見すると当たり前のようですが、実際には、キャリアビジョンを設定しないまま資格取得に奔走したり、オイシイ求人情報を求めたりして転職や就職活動をしている方も少なくないのではないでしょうか。
(第1章 人生を飛躍させるキャリアを設計する 33ページ)
「好き」を仕事にするには
著者は、キャリアビジョンをつくる基準として自分の「好き」「嫌い」を重視するよう勧めます。「そもそも好きなことをやったほうが人生は楽しいし、自分が好きなことでないと長く続けることやライバルより高い成果をあげることが難しくなります」というのです。そして「好き」を考えるのに2つの視点を紹介します。1つは業界や職種、あるいは「企業再生」「環境問題」といった事業分野を想定する「領域」。もう1つは、どんな立場で働くかという「立ち位置」です。
(第6章 戦略的なキャリア設計法をマスターする 236ページ)
一生の仕事にしたいほどの「好き」を見つけるのは、簡単ではないかもしれません。就職活動でインターンシップをしたり、昔の記憶をたどったり……。見つけたと思っても、実際に仕事としてやってみたら違った、という人もいるでしょう。著者は、自分の「好き」を発掘するのに日記をつけるよう勧めます。日々の生活で、自分が何に怒り、喜びを感じたかをという記録は、自分を知る大事な手掛かりになるのです。
努力の方向、正しいビジョンに沿って
自分の「好き」を突き詰めずにキャリアビジョンをつくってしまうと、「転職に有利だから」と難しい資格に挑戦するなど迷走状態に陥る恐れもあります。これでは自分のキャリアにとって、さして重要ではない経験を積んでいる間に、大事な経験をするチャンスを逃してしまいます。時間が限られているからこそ、早めにキャリアを設計し、動き出すことが大切だと著者は強調します。
(おわりに みんなの「努力」が報われる社会に 262ページ)
17年ももうすぐ終わります。全体的に活発だった今年の求人市場を見ながら、来年の転職を視野に入れている方もいるでしょう。新しいキャリアに向け、一歩踏み出すのかどうか。決断のときに、ぜひ参考にしてほしい一冊です。
◆編集者からひとこと 雨宮百子
本書はダイヤモンド社が14年に出版した『ビジネスエリートへのキャリア戦略』を文庫にしたものです。就職して数年がたち、多くの友人から「転職した」という話を聞くようになって、この本を文庫として世に出したいと考えました。
就職活動のときには必死で「自己分析」をしたものの、実際に働き始めると、想像と違ったということがあると思います。そのまま我慢するのもいいですが、環境を変えるというのも選択肢でしょう。かつての日本では終身雇用が中心でしたが、現在は自分の成長に合わせて転職していける時代になっています。人生を通じて何か成し遂げたいことがある人にぜひ読んでほしいと思います。
「若手リーダーに贈る教科書」は原則隔週土曜日に掲載します。