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若手リーダーに贈る教科書

一生のキャリア、設計図は「好き嫌い」でつくる 渡辺秀和著 「未来をつくるキャリアの授業 最短距離で希望の人生を手に入れる!」

2017/12/16

 国内で1日に刊行される新刊書籍は約300冊にのぼる。書籍の洪水の中で、「読む価値がある本」は何か。書籍づくりの第一線に立つ日本経済新聞出版社の若手編集者が、同世代の20代リーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介するコラム「若手リーダーに贈る教科書」。今回の書籍は「未来をつくるキャリアの授業 最短距離で希望の人生を手に入れる!」。転職やキャリア形成などについて1000人以上の相談を受け、支援してきた著者が、自分らしいキャリアのつくり方を伝授する。

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渡辺秀和氏

 著者の渡辺秀和さんは、一橋大学商学部を卒業して三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)戦略コンサルティング部門に入社。その後、キャリアコンサルタントへ転身します。2008年、株式会社コンコードエグゼクティブグループを設立し、社長兼最高経営責任者(CEO)を務めています。

■自分のキャリアの「目的地」を決める

 17年9月、安倍晋三首相を議長とする「人生100年時代構想会議」が発足し、これからの超長寿社会での生き方や経済・社会システムについての議論が始まりました。同じころ、東京大学では「キャリア・マーケットデザイン――Design Your Future, Design Our Future――」という授業が開講しました。様々な業界のエグゼクティブや起業家、学者など多様なバックグラウンドを持つ人を招いて話を聞き、未来のリーダー候補のキャリア設計を支援するのが狙いです。著者はこの授業の企画に参画し、本書を「教科書」に特任講師を務めています。

 本書で著者は「自分の好きなことで、社会にインパクトを与えながら、恵まれた収入も得るという働き方は可能だ」と主張します。そのためには自分の人生でのキャリアの「目的地」を定め、そこに行き着くための設計図や地図となる「キャリアビジョン」が欠かせないといいます。

 キャリア設計は、シンプルに言えば、次の3つのステップで考えていくことになります。
(1)目指すゴールとしてのキャリアビジョンを設定する
(2)現状からキャリアビジョンに至るルートを考える
(3)ルートを歩むために転職や就職活動を成功させる
 まずはゴールであるキャリアビジョンをしっかりと設定しないと、どのようなキャリアを積むべきかを決めることはできません。一見すると当たり前のようですが、実際には、キャリアビジョンを設定しないまま資格取得に奔走したり、オイシイ求人情報を求めたりして転職や就職活動をしている方も少なくないのではないでしょうか。
(第1章 人生を飛躍させるキャリアを設計する 33ページ)

■「好き」を仕事にするには

 著者は、キャリアビジョンをつくる基準として自分の「好き」「嫌い」を重視するよう勧めます。「そもそも好きなことをやったほうが人生は楽しいし、自分が好きなことでないと長く続けることやライバルより高い成果をあげることが難しくなります」というのです。そして「好き」を考えるのに2つの視点を紹介します。1つは業界や職種、あるいは「企業再生」「環境問題」といった事業分野を想定する「領域」。もう1つは、どんな立場で働くかという「立ち位置」です。

 代表的な立ち位置として、「企業経営者」「ベンチャー企業経営者」「プロフェッショナル」「社内エキスパート」という4つの切り口を紹介しました。少し珍しい視点ですが、ご自身がどのような立ち位置で活躍するのが好きなのかを考えてみることは、非常に有益であると思います。
(第6章 戦略的なキャリア設計法をマスターする 236ページ)

 一生の仕事にしたいほどの「好き」を見つけるのは、簡単ではないかもしれません。就職活動でインターンシップをしたり、昔の記憶をたどったり……。見つけたと思っても、実際に仕事としてやってみたら違った、という人もいるでしょう。著者は、自分の「好き」を発掘するのに日記をつけるよう勧めます。日々の生活で、自分が何に怒り、喜びを感じたかをという記録は、自分を知る大事な手掛かりになるのです。

■努力の方向、正しいビジョンに沿って

 自分の「好き」を突き詰めずにキャリアビジョンをつくってしまうと、「転職に有利だから」と難しい資格に挑戦するなど迷走状態に陥る恐れもあります。これでは自分のキャリアにとって、さして重要ではない経験を積んでいる間に、大事な経験をするチャンスを逃してしまいます。時間が限られているからこそ、早めにキャリアを設計し、動き出すことが大切だと著者は強調します。

 では、どうすれば努力が報われる人生にすることができるのか? やみくもに「努力の量を増やす」ことではありません。自分の人生に何が大切なのかを把握して、いま自分がなすべきことを選択し、それに「努力を集中させる」ことだと思います。
(おわりに みんなの「努力」が報われる社会に 262ページ)

 17年ももうすぐ終わります。全体的に活発だった今年の求人市場を見ながら、来年の転職を視野に入れている方もいるでしょう。新しいキャリアに向け、一歩踏み出すのかどうか。決断のときに、ぜひ参考にしてほしい一冊です。

◆編集者からひとこと 雨宮百子

 本書はダイヤモンド社が14年に出版した「ビジネスエリートへのキャリア戦略」を文庫にしたものです。就職して数年がたち、多くの友人から「転職した」という話を聞くようになって、この本を文庫として世に出したいと考えました。

 就職活動のときには必死で「自己分析」をしたものの、実際に働き始めると、想像と違ったということがあると思います。そのまま我慢するのもいいですが、環境を変えるというのも選択肢でしょう。かつての日本では終身雇用が中心でしたが、現在は自分の成長に合わせて転職していける時代になっています。人生を通じて何か成し遂げたいことがある人にぜひ読んでほしいと思います。

「若手リーダーに贈る教科書」は原則隔週土曜日に掲載します。

未来をつくるキャリアの授業 最短距離で希望の人生を手に入れる! (日経ビジネス人文庫)

著者 : 渡辺 秀和
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 842円 (税込み)

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