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Xperia最上位機に専用帯域 ソニーMVNO挑戦の成否

佐野正弘のモバイル最前線

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NIKKEI STYLE

フリーテルの破綻や、大手キャリアのサブブランド人気で、今後が不透明になっているMVNO。生き残り策の一つとして「ハイエンド」を狙うのがソニーネットワークコミュニケーションズの「nuroモバイル」だ。ソニーモバイルコミュニケーションズのハイエンドスマートフォン(スマホ)「Xperia XZ Premium」と、同機種の利用者専用の帯域を設け快適に通信ができるオプションのセットによる、品質重視のプレミアムなサービスを提供する。ただ、そこにはMVNOの限界も見えてしまう。

限定のプレミアムサービスを提供

今回のXperia XZ Premiumの販売数は1万3000台と限定している。同機種専用のオプションサービス「Xperia限定プレミアム帯域オプション」を提供しているのが理由だ。

このオプションの加入者は、Xperia XZ Premiumで通信する際、通常のnuroモバイルとは別の、専用のプレミアム帯域を利用できる。混雑が激しく速度低下が顕著になりがちな朝夕の通勤時や昼休みであっても、通信速度が大幅に落ちることなく、快適な通信が維持できる。

通信速度のメリットだけではない。このオプションを使うとXperia XZ Premiumから写真や動画などをどれだけアップロードしても、通信量がかからない。特定のサービスを利用した時に通信量をカウントしない仕組みはいくつかのMVNOが採用しているが、アップロード時に通信量をカウントしないという仕組みはこれまでになかったものだ。写真や動画を、SNSに大量に投稿するようなユーザーが第1のターゲットになるだろう。

そして専用帯域で快適な通信速度を維持するためにも、その帯域を利用するユーザーが増え過ぎてしまっては意味がない。そこでnuroモバイルでは、魅力的なハイエンドスマホとセットで提供することにより、利用できるユーザー数を限定してサービスを提供するに至ったわけだ。

同様のサービスとして、ケイ・オプティコムの「mineo」も、月額800円の追加料金を払うことで専用の帯域を利用し、快適な通信が維持できる「プレミアムコース」を提供している。ただ、募集は不定期に100人程度で、抽選で当たらなければいけないという狭き門だ。

MVNOが「プレミアム」をうたうことの難しさ

ソニーネットワークに確認したところ、販売後の動向は「計画通り推移しており、好調だ」とのことで、一括購入価格で9万9800円と、高額なモデルとのセットながらも販売が順調な様子がうかがえる。しかしながら今回のサービスの料金体系を見ると、MVNOがプレミアムな端末とサービスを提供することの難しさも見えてくる。

nuroモバイルがユーザーに「おすすめ」としているのは、音声通話付きのSIM(月額700円)と2GBのデータ通信容量(月額700円)、そして月額2000円の「Xperia限定プレミアム帯域オプション」と、10分間の通話が定額でできる月額800円の「nuroモバイルでんわ 10分かけ放題」のセットだ。このセットの月額料金に、Xperia XZ Premiumを36カ月の割賦で購入した場合の支払額(月額2685円)を加えると、毎月支払う料金は6885円にまで膨れ上がってしまう。

実際には、音声通話プラン割引(1年目には月額1105円、2~3年目は105円を割り引く)と、オプションセット割引(1年目は月額1800円、2年目は月額800円を割り引く)が適用されることから、1年目は月額3980円、2年目は月額5980円、3年目は月額6780円、そして割賦が終了する4年目以降は4200円となり、いきなり7000円近くになるわけではない。だが3年目になると毎月7000円近い金額を支払わなければならないことに変わりはない。

こうなると、もはやXperia XZ Premiumを扱っているNTTドコモの料金(端末代と合わせて月額7147円)とさほど変わらない額となってしまう。しかもNTTドコモの場合、「月々サポート」による端末の値引きが受けられ、2年間で割賦が終わるので3年目には支払額が逆転する。NTTドコモでは、昼や朝夕の混雑している時間帯であっても快適に通信ができる。サービスやサポート面の充実度もnuroモバイルと比べ圧倒的に高く、両者を比べると、Xperia XZ Premiumをあえてnuroモバイルで購入する理由に乏しいと感じてしまうのだ。

携帯会社からネットワークを借りているMVNOは、携帯会社の通信速度や容量を超えることができないという宿命を背負っているだけに、プレミアムなサービスを提供するといっても、その内容には限度がある。それゆえ大手携帯会社も扱っているような高額のハイエンドモデルとのセットが、今回のサービスに適しているかというと疑問があるというのが正直な所だ。

MVNOという立場ながらもXperiaのブランドをを活用してプレミアムなサービスを提供するならば、かつてのXperia J1 Compactのような型落ちモデルや、海外で販売されているミドルクラスの「Xperia XA1」など、より安価なモデルをセットにして、低価格を強調したほうがいいのではないかと感じたのは事実だ。

この点について、ソニーネットワークの執行役員SVPである渡辺潤氏は、「今回のサービスは回線品質とアップロードフリーにこだわっている。動画をいくらでもアップロードできることを考えた結果、解像度が高くて高品質の動画が撮影でき、視聴できるもの(Xperia XZ Premium)を出した」と答えている。サービス全体の特徴を生かすためにはハイエンドモデルが必要との判断のようだが、あえて最上位モデルを扱ったことが、ユーザーに強いインパクトを与え注目を集めたのも確かだろう。

今回のサービスはnuroモバイルとしても初となる、意欲的なチャレンジといえるものだけに、あえてハイエンドモデルを扱うことに一定のメリットがあったことは確かだろう。だが体力的にも、NTTドコモなど大手携帯会社と正面を切って戦うのは難しいだろう。今回のサービスの成果を受けて、Xperiaスマートフォンとnuroモバイルのサービスの、より最適な組み合わせを作り出してくれることを期待したい。

佐野正弘
 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

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