積立王子がつみたてNISAを解く 20年、120本の真意積立王子のヤング投資入門(9)

ところが相場は思い通りに動くものではありません。安くなったと思ってまとめて買ったら翌日からさらに下がり続け、もう相場が気になって夜も眠れない。とうとう仕事も手につかなくなり、怖くなって売却してしまって損失が確定。かと思ったら翌日から上がり始めて心底悔しい思いをする、なんてことはざらにあります。あるいはまとめ買いして少し上がったら、もう我慢できずに売却して、ほんのちょっとだけの利益確定で満足してしまう。そんなことをどれだけ続けていても、大きな財産づくりは決してできません。

その点、金融庁がつみたてNISAをあえて積み立て投資に限定したのは、こうした投資家心理をよく分かっているからです。個人の投資行動が欲望や恐怖という感情の変化に翻弄されてしまうことに対し、毎月コツコツと資金を積み上げていけば、相場の上がり下がりに関係なく買い付けを続けられるようになり、値動きによる心の動揺と投資をやめたくなる感情を抑制してくれる、と認識しているからなのです。

つみたてNISAでは、20年という長期にわたってお金を複利効果で大きく育てるために、「投資を続けること」が何より大切です。とにかく参加者の多くに長期投資を継続してもらうため、上がっても下がっても心安らかでいられるよう積み立て投資に限定し、相場の値動きでそれが途切れることのないような仕掛けにしたわけですね。

しっかりと分散した投資対象に、20年間ずっと積み立て投資を続ければ、参加者みんなが相応の資産形成を実現できる。これがつみたてNISAに込められたメッセージなのですから、ヤング諸兄にも素直にありがたい制度として受け入れてほしいと私は思います。

6000本から120本を厳選した意味は

さてこのつみたてNISAにおいては、現行NISAと大きく違う点がもう一つあります。それは「投資信託しか買えない」ことです。理由は前回の「投信はヤングの便利グッズ リバランスの苦労も無用」でも説明した通り、投信とは運用のプロが分散したポートフォリオを提供し、管理してくれる便利なツールであり、大多数の生活者にとって長期資産形成に最適で合理的な存在だと行政側も判断しているからでありましょう。

金融庁はつみたてNISAにおける投信販売を登録制にして、いくつもの厳しい登録要件を課し、日本に現存する6000本以上の公募投信の大半を登録対象「外」としてしまいました。とりわけ既存商品で従来のまま登録要件を満たしたものは、6000本のうちたったの40本だけでした(2017年12月6日時点)。条件を満たした新設の投信を加えても、現在皆さんがつみたてNISAで投資できる商品は120本余りであり、相当絞り込まれたのです。その背景には金融業界に対し、「もっと投資家思いであってほしい」とする深い政策意図が見て取れます。

次回はその真意と、120本余りの投信からヤングの皆さんがどのような観点で商品選びをすべきかを考えていきましょう。

中野晴啓
セゾン投信株式会社代表取締役社長。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。『預金バカ』など著書多数。
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