「10年後はロボットの会社かも」 HISの沢田氏
エイチ・アイ・エスの沢田秀雄会長兼社長(CEO)
エイチ・アイ・エスの沢田秀雄氏
インターネットやスマートフォン(スマホ)の普及、訪日外国人(インバウンド)の増加や民泊ブームなどで、旅行業界の環境は大きく変化しています。旅行大手、エイチ・アイ・エス(HIS)の沢田秀雄氏が2016年11月に社長に復帰し、会長と兼務することになったのも、こうした変化に対応するためでした。今回は、旅行業界の未来をどうみているか語ってもらいました。
旅行プラン決定、店頭よりスマホに
旅行業界は今、非常に激しく変化しつつあります。昔はJTBや近畿日本ツーリストに代表される総合旅行会社が業界を仕切っていました。インターネット、スマホの発達に伴い、今はOTA(オンライン旅行会社)というプラットフォーム(情報基盤)会社が台頭しています。スマホで旅行先や旅行商品を検索し、オンラインで注文して決済まで完結させるのがOTAで、この業態がどんどん大きくなっています。HISもそちらの方向へのシフトを急ぎ、2ケタのスピードで伸びています。
民泊仲介最大手の米エアビーアンドビーの成長も、新しい動きです。民泊などのシェアリングエコノミー(共有型経済)は、これまでの私的所有に基づいた経済システムとは異なり、個人が保有する遊休資産(モノ、サービスのほかスキルのような無形のものも含む)を他者に貸し与え、皆で効率的に使い回しをする経済です。
日本を訪れる外国人観光客が増え、民泊の追い風になっている(岐阜県高山市)
過去の旅行業界とは非連続の新しいビジネスですが、危機感はありません。お客様はいろいろな層に分かれています。どんな層をつかむのかで企業の対策も変わってきます。時代がどんどん変化していますから、それに合ったサービスを提供していかなければなりませんが、昔ながらのホテルを好まれる方も根強くいらっしゃる。
今は空前のインバウンドブームで、東京も大阪も福岡もホテルが足りません。だから民泊がはやるんです。スマホの普及がその動きを後押ししています。インバウンドはこれからも伸びるでしょう。17年は2千数百万人になり、過去最高を更新しそうです。所得の増加を背景にアジアからのインバウンドは伸び続け、訪日客が3千万人を超えるのも時間の問題でしょう。インバウンドが伸びるということは、国内のホテル不足が4~5年は解消しないということです。ホテルの供給が足りない分を民泊で補うという構図です。