マネー研究所

使わなきゃ損! 個人型DC iDeCo

iDeCoの給付 年金で一番大事なのは「受け取るとき」 iDeCoで投資デビュー(14) オフィス・リベルタス 大江加代

2017/12/13

 この連載では個人型の確定拠出年金であるiDeCoという制度の細部や、加入する際に知っておいたほうがいいけれども語られていないことなどを中心に書いてきました。いうまでもなくiDeCoは、自分の老後のために自分自身が積み立てる「じぶん年金」というべき存在です。そして年金で一番大事なのは、間違いなく「受け取るとき」です。そこで今回は今まで全く触れてこなかった「受け取り」について書きたいと思います。

 受け取りには方法として「年金」か「一時金」、そしてその組み合わせである「併給」の3つがあります。受け取り開始の時期は、原則は60歳以降で70歳になる前の間であればいつでもOKです。ここまではご存じの方も多いでしょう。加入する時点では、ここまで知っていれば十分です。

■一時金受け取りでは「リスク軽減」が鍵

 iDeCoは自分専用の口座で残高を管理します。受取時はその残高を現金化して(投資信託などを売却して)、指定口座に振り込んでもらうことになります。すべて一時金として一気に受け取る場合は、残高を残らず現金化するわけです。投信を保有している場合には、60歳まで積み上げた残高をある日の価格ですべて売却することになります。その日のマーケットが好調で基準価格が高ければ受け取る給付額は増えますが、たまたまその日にリーマン・ショックのようなクラッシュがあったとしたら、受取額が一気に減ることになります。残高が多いだけに、売却時の相場状況が自分の受取額に非常に大きく影響するということです。

 これまで見てきたように、投信の積み立てでは価格が高いか安いかを気にする必要はありません(基準価格が下がっていれば同じお金で多くの口数が買えるため)。しかし売却するときこそ、価格を気にしなければなりません。何せそれまで何十年も積み上げてきた資産が、たった一日の価格で大きく左右されることになってしまうからです。

 では、この問題にどう対処すればいいのでしょう。一つの手は50代半ばに入って受取時期が近づいてきたら、売却時点の価格変動を避けるため、リスクの高い資産を減らす配分変更をすることです。まず現在の残高の配分を変更してリスクを減らします。具体的にはリスクが高めの株式投信を「売り」、その代金をノーリスクの預金に入れるという指図を行えばいいのです。

 売るとなると「少しでも高いときに売りたい」と、つい欲が出てきます。でも、いつが一番高いか安いかは誰にもわかりませんから、それほど下がっている時期でなければ思い切って指示を出しましょう。あるいは何度かに分けて少しずつ売ってもかまいません。もちろんその後、値上がりすることもよくあります。しかしそこは一切気にしないこと。気にしたところでストレスが増えるだけです。それよりも「これでリーマン・ショックのようなことが起きても大丈夫な安全圏に避難できた」という安心感の方が大切です。

 投信の売買については「iDeCoの『知られざる細部』 新規加入者の声から」でも書いたように、実際に行ってみないとわからないものです。ほんの少しでもいいからどこかの時点で残高のごく一部をまず売って体験してみましょう。その後で大きな金額の売買を行い、本格的な配分調整を行うのがいいでしょう。

■年金受け取りは各種費用がネック

 さて、ここからはもう一つの方法である「年金」での受け取りについて触れたいと思います。年金というのは残高の一部を都度売却して支払う、つまり資産の分割受け取りだと理解してください。例えば10年間で年4回受け取りを選択したとしたら、資産を40回に分けて、受け取る都度時価で売却するということです。投信の場合、分割した量(口数)は同じでも売却する際の基準価格は異なりますので、年金額もそれによってブレることになります。金融機関によっては毎回同じ金額になるよう口数の方を調整して売却し、最後の回の受取額で調整するといった方法が選べるところもあります。このあたりの細かい点は、契約先の運営管理機関のコールセンターで確認してください。

 年金受け取りの場合の留意点は、費用です。まず60歳以降も受け取り終えるまで「口座管理料」がかかります。もっとも、ここでは積み立ては行われずに運用だけとなりますので、ほとんどの金融機関が口座管理料の金額を加入者よりも年間1000円ぐらい安く設定しています。もうひとつ注意しておくべきは、年金を受け取るたびに1回432円かかる「給付事務手数料」です。先ほどの「10年間、年4回受け取り」の例でいえば40回×432円=1万7280円もの金額を負担することになります。公的年金が偶数月の振り込みなので、その合間を埋めるように「奇数月に年6回受け取り」などとしてしまったら、手数料の負担はもっと大きくなりますので要注意です。

 私は、受け取りに関しては50代になったら、60歳以降の働き方などと合わせて一度青写真を描いてみることをお勧めします。もし一時金で受け取る可能性が高いのであれば、受取時期の5年ぐらい前からリスクを減らすことを検討してみてください。しかし万が一、リスクの高い投信を多く持ったまま受け取り直前に大きな暴落に見舞われてしまったら、その時はマーケットの回復を信じ、受取時期を数年延ばすことをお勧めします。永遠に上がる相場もありませんが、永遠に下がり続ける相場もないからです。

 もう一度繰り返しますが、iDeCoは年金ですから受け取るときが一番大切です。受け取りについての実際の仕組みをきちんと理解し、長い間積み立てた資産を大きく減らすことのないよう、注意して早めに準備しましょう。

大江加代
 大手証券会社で22年間勤務し、一貫して勤労者の資産形成に携わる。確定拠出年金については法の成立前から10年以上企業型の現場で関わり、のべ25万人に対する投資教育の企画・運営にも携わった。現在はオフィス・リベルタス取締役で、NPO確定拠出年金教育協会理事として情報サイト「iDeCoナビ」も創設。http://www.dcnenkin.jp/

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL