岩瀬昌美

岩瀬昌美
2018/2/21

できる人は見た目が10割

ただし、広告業界ですから、あまり地味すぎても、「本当にこの人からおしゃれなアイデアが出てくるの?」と不安をもたれてしまう。なので、スーツはオーソドックスなものを選びつつ、アクセサリーやシャツでアクセントをつけるようにしています。

シャツやアクセサリーは、センスの見せどころです。女性の場合、黒系のスーツからえんじ色のシャツをのぞかせると、顔色も華やかになります。男性の場合は、ネクタイやソックスにお茶目なものを合わせれば、地味なダークスーツでも「センスがいい人だな」と思ってもらえます。

くれぐれも品のいいものを選ぶという前提の話ですが、こうした部分は多少の冒険があってもいいと思います。業界によっては、ある種のおしゃれ感が必要なケースもありますからね。

■ジョブズは戦略的ビジネスカジュアル

そうはいっても、IT業界のビジネスエリートは、トップですらスーツを着てないじゃないか――。そう思った人がいるかもしれません。

たしかにアップルのスティーブ・ジョブズはいつもTシャツにジーンズ姿でした。高級スーツをパリッと着こなすビジネスの世界とは一線を画しています。

シリコンバレーがカリフォルニア州サンノゼにあるように、アメリカのIT企業は西海岸に集中しています。東海岸のエスタブリッシュメント文化とは、根っこの部分から違うのです。ベトナム反戦運動やヒッピー文化の影響を受けた人々が作り上げた業界だけに、「スーツなんか着てちゃ、既成概念にとらわれて、新しいものを生み出せない」という意識が強くあって、ラフな格好をするのだと思います。

つまり、Tシャツとジーンズというラフな格好だって、「相手からどう見られたいか」の表現だということです。

たしかにジョブズはいつも同じ格好をしていました。黒いタートルネックのTシャツは三宅一生のカスタムメイドで、ジーンズも決まってリーバイス501です。しかし、クローゼットには一生ぶんのTシャツがかけてあったといいます。一張羅のよれよれのTシャツを着ていたわけではないのです。同じ格好ではあるけれど、つねに新品に近いものを着ていた。