2018/1/4

マネートレンド

分かりづらいルールですが、これを簡単に理解する方法があります。それが先ほどの「お正月を5回過ぎたかどうか」。お住まいの家でお正月の写真が5年分あれば、間違いなく長期譲渡の対象となります。マンション売却の前には、このルールを思い出してください。

【事例】 横浜のマンションを売却したMさん

 うっかり100万円も税金を多く支払うところだったのが、横浜のマンションを売却したMさんです。2人目の子供が大きくなり手狭になってきたことから、それまで住んでいた2LDKのマンションを売却。3LDKのマンションに住み替えることにしました。

 Mさんのマンションは築浅であったこともあり、販売開始から1カ月ほどで買い手が見つかりました。Mさんは割安な時期にマンションを購入していたこともあり、500万円強の売却益が見込まれました。

 買い手は年内の引き渡しを希望し、Mさんも「そのスケジュールで問題ありません」とのことで話が進んでいきました。大半のお客様は「新しいマンションで新年を迎えたい」と思われるので、年内引き渡しを希望するケースが非常に多いのです。

 ところが、ここでMさんに確認してみると、「お正月を5回過ごしていない」ことが判明。これだと短期譲渡所得の扱いになり、売却益に39%の税金がかかってしまいます。年内引き渡しと年明けの引き渡しで、税金の差は実に100万円。そこで買い手と当社が交渉したところうまく話がまとまり、年明けの引き渡しとなりました。これによりMさんが支払う税金は半分の100万円で済みました。

特別控除をとるか住宅ローン控除をとるか

不動産売買に詳しい方は、「短期売却でも『特別控除』を使えば、よほど高額な不動産でもない限り税金はかからないだろう」と思われたかもしれません。

実は、不動産の売却には、「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」という制度があります。これは、実際に自分が住んでいる不動産であれば、居住年数にかかわらず、売却益が3000万円までであれば無税という強力な制度です。この制度を使って、多くの方が不動産の売却益にかかる税金をゼロにしています。

非常に強力な3000万円控除ですが、こちらを使うと結果的に「損」することもあるのです。具体的には、自宅の買い替えを検討しているケースです。

実は、この3000万円控除を利用すると、「家を売却した年とその後2年間、新しく購入した家に対して住宅ローン減税を利用できない」という制限があるのです。住宅ローンの減税額は、新たに購入する住宅が新築なら最大で400万円(長期優良住宅は最大500万円)、中古住宅だと200万円にもなります(法人売主の中古住宅は最大400万円)。つまり、家の買い替えを検討している場合は、まず自宅が短期譲渡なのか長期譲渡なのかを把握した上で、3000万円控除が得か、新しい家の住宅ローン減税が得か、想定される売却益を前に頭を悩ませなければなりません。

一般論としては、自宅の売却で大きな利益が出た場合は3000万円の特別控除を利用した方がお得になります。自宅を売却した年を含めた3年間は、新たな不動産を購入せずに賃貸に住むのがよいでしょう。その後に新居を購入すれば、住宅ローン減税の恩恵を余すところなく享受できます。

他方、売却利益が少額だった場合は、税金を支払った上で住み替え、住宅ローン控除を受けた方がお得になります。もちろん、「5回のお正月」を待てるのであれば税金が安くなりますので、売買を急がないのであれば時間をおいた方がよいでしょう。

では、住み替えで新しい物件を購入する際に、税金と3000万円特別控除の「損益分岐点」はいくらなのでしょうか。具体的には下の金額を超えた場合は、3000万円控除を使った方が「お得」になります(いずれも住宅ローン控除を最大限使えるものとします)。

(1)短期譲渡かつ新規購入物件が中古住宅 …… 504万6682円
(2)長期譲渡かつ新規購入物件が中古住宅 …… 984万4945円
(3)短期譲渡かつ新規購入物件が新築住宅 …… 1009万3364円 ※
(4)長期譲渡かつ新規購入物件が新築住宅 …… 1968万9884円 ※
※法人売主の中古住宅も同額

売却益が上記金額を上回る場合は、住宅ローン控除による減税分を捨ててでも、3000万円控除のメリットを受けた方がよいのです。また前述したように、短期譲渡と長期譲渡では税金が2倍変わってきますから、待てるのであれば「お正月を5回」過ごして、長期譲渡のメリットを享受した方がよいでしょう。

針山昌幸
 ハウスマート代表取締役CEO。2009年に大手不動産会社に入社。不動産業界の非効率さに疑問を感じ、楽天に転職。2014年にハウスマートを創業し代表取締役CEOに就任。ITを活用して不動産営業の効率を5倍に高め、仲介手数料を半額に据えた中古マンション仲介サービス「カウル」(https://kawlu.com/)の運営などを手掛ける。著書に『中古マンション本当にかしこい買い方・選び方』(日本実業出版社)がある。
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