――柳井さんは、「目標に達しなかった」とか、自らの失敗を認めて自分から公に話しますよね。あえてそうしていますか。

「僕は全員に『バッドニュースファーストだ』といっているんです。最悪なのは悪い知らせを自分だけで抱えこむこと。役割に関係なく、悪い内容は全部伝えてくれ、それも僕に話してくれ、といっています。そして、世の中にオープンにしないと悪いところは完全に直りません」

今後のファーストリテイリング「心配ない」

――小売業も今、世界中で大きな変革を迎えています。先を見通すことが難しい時代だと思いますが。

小売業の様変わりを見てきたのが、柳井氏の原体験だ

「僕が最初に商売をやりはじめたとき、10年前でも20年前でもいいんだけど、誰も今の世の中を想像できていなかった。しかし、テクノロジーが進み、ダイエーやそごうなどが経営危機や破綻に追い込まれて小売業は様変わりしました。でも、僕には(産業の変遷を間近で見た)原体験があるんです」

「僕の地元、山口県宇部市は炭鉱の町で、中学生ぐらいのころ、次々に炭鉱が閉山になりました。そうするとね、同級生が減っていって、学校も廃校になるんです。僕の住んでいた商店街も今はシャッター商店街になりました。町を歩いたらほとんど人がいない。歩いているのは老人ばっかり。僕は、この風景を見ていたし、知っていました」

――テクノロジーが進んだ、という話がありました。アマゾンを脅威に感じていますか。

「心配していないですね。アマゾンもそうですが今のハイテクはいずれインフラになるんです。それは、いずれ限りなくタダになることを意味している。だから恐れることないよ」

「米国の小売業は恐れすぎだよ。彼らは自業自得だと思う。百貨店なんて最悪。11月からバーゲンして、粗利はこれだけ保証しろ、なんていう。しかもそこにほとんど人がこないんです。アマゾンのせいもあるけど、自分たちのせいでもある」

お日様が出ているときに風呂に入れる幸せ

――60代後半になり、体力的につらいときはありませんか。健康法はありますか。

「今のところはなんとかやってるから大丈夫だと思うけど(笑)。『体力=考えること』に通じるし、経営者の仕事は考えることだけど、体力がないと考えられないもん」

「午後3時か4時に家に帰ったら、まず風呂場でダンベルを上げています。といっても、小さいのですよ。1キロ、2キロ、3キロとね。そうして体を回さないと、年を取ると体がさびついてくる。四股も踏んでいますね。そうして体を回してから風呂に入るとさっぱりするんですよね。全部あわせて、風呂場で過ごすのが1時間くらいかな」

「お日様が出てるときに風呂に入る。これは本当に幸せですね。今日も日光を見て、風呂に入れるなと思うだけで幸せになる。何より健康だからですよ」

柳井正
 1971年早稲田大学政経学部卒、ジャスコ(現イオン)入社。72年に小郡商事(現ファーストリテイリング)入社。84年社長、2002年会長。05年9月、社長に復帰

(松本千恵)

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